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沁月
Public
ウ教×ハ♀ 両片想い 読み切り
大賢なる木の花は
MHRウ教×ハ♀。両片想い、から……
微妙に本編ネタバレあり。
花占いの花と、里の桜のお話。
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5
一陣の風となった娘は果敢に闘志を燃え上がらせ、愛用の得物を手に、大社跡を縦横無尽に駆け回った。
今日の依頼は、大社跡を通行する商人の行く手を阻む、複数等のモンスターの狩猟。
主に
天狗獣
てんぐじゅう
ビシュテンゴと、その亜種の
緋天狗獣
あけてんぐじゅう
の複数頭の狩猟だった。
どちらの種も大変好奇心が旺盛なため、遭遇したものであれば興味を示し、執拗に追撃し、時に
悪辣
あくらつ
なちょっかいを出す。
相手がハンターであったり、彼らよりも強大な相手ならば良いが、戦う力を持たない者にとって、それは出会いたくない脅威以外の何者でもないだろう。
里を苦しめた百竜夜行、その淵源を、大いなる災厄を、王国の悪魔と原初の騎士たる古龍を討ち祓った英雄『猛き炎』たる娘の敵ではないが、天狗獣と緋天狗獣の群れは、彼女の予想以上の数であった。
狩猟を終えたのは、大社跡の竹林の中。
気付けば周囲には夜闇が広がって、柔らかな
月白
げっぱく
の
寂光
じゃっこう
が、竹の間から細々と射し込んでいる。
「
……
最悪。結構、時間かかっちゃったな
……
」
顔に浴びた天狗獣の生温い返り血を片手で
拭
ぬぐ
い、娘が深く息を吐いた。
返り血は顔と、腕に少々。
立ち回りが洗練された者であればあるほど、仕留めた獲物の血を浴びることはない。
彼女は竹林から空を仰ぎ、月の高さを確認しながら、手に持っていた得物を一度軽く振るって血を払い、その背中に収める。
このままメインキャンプまで戻り、テントで一夜を明かすのが
定石
じょうせき
だろうと、歴戦の
強者
ツワモノ
となった娘の冷静な思考は告げていたのだが、狩猟を終えた今の彼女は、猛烈に里の桜が恋しくなっていた。
桜と共に、想いを寄せ続ける師、ウツシのことも。
(
…………
。遅くなるだろうけど、帰っちゃおうかな。着く頃には多分、里のみんなも教官も寝てるだろうし
……
)
不意に『狩りの基本は食事と睡眠』と、今も昔も自分に教え続けてくれているウツシの声が思い出されて、娘が愛おしそうに目を細めた。
遅くなればなるほど、人目はないだろう。その方が花占いをするのに都合が良いように思えた娘は、たちまち少々そわそわした様子で大地を蹴り、疲労を感じさせない様子で駆け出した。
帰還した頃にはウツシの顔はもう見られず、彼の元気で温かな「おかえり」を聞くことができないであろうことは残念だが、今は自分の中で大きく育ち続けるばかりの、彼への密かな想いが成就するかどうか。一刻も早く、それを桜に尋ねたくてたまらない。
大社跡を訪れた時よりも疾く、翔蟲を操って鮮緑の風となった娘は、迷わずメインキャンプを素通りして愛する郷里へと帰還した。
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@acadine
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