戌丸アット
2022-05-29 23:25:46
12178文字
Public 戦国basara
 

狸の親心

三家(戦国basara)



「お、やっぱりパンか!」
「お腹に溜まる物が良いと思って駄目ですか?」
「いや、大丈夫だ、いただきます」
「いただきます」

家康の正面に座り、二人っきりで朝食をとる
父は他界、母は社長の仕事で帰らないのが常なので気にならない
パンと添えられたスクランブルエッグやウインナーを口に放り込みながら、家康を見る
元康に見られているのを気付いてないのか、テレビの天気予報を食べながら見る家康の姿は普通の青年だ
晩年の記憶となんら変わりない年齢に近付いてきたようにも思う
だからこそ元康は不安でもあった

だが元康が不安であろうが時間は経ち、元康は大学へ家康は高校へ行かねばならない
そしていつもの時間に呼び鈴が鳴ると、家康は鞄を抱えて出る
するとそこには、いつも通り独眼竜こと政宗が眠そうに待っていた

「よぉー家康ー
「おはよう、独眼竜!」
「今日もいつも通りだな、独眼竜」
「Ha!なんかアンタにまで挨拶されると変な気分になるぜ、元康」

元康に対しては、ちょっとした嫌味を返す政宗も前世の記憶を保持している一人なのだ
対等と言う約束で同盟を結んだ政宗としては、元康の存在を隠されていたのが未だに気に入らないらしく、元康への態度は少々拗ねたようなのは、もはや常である
しかし政宗の気持ちを察している元康は、一切気にない

「それ、よく言われるんだがワシはワシだ、どうにもなんねぇぞ?」
「安心しな、家康の方がまだ可愛げがあるから顔がくりそつでも問題ねぇぜ」
「うわっ!?やめてくれ!独眼竜!」
「あはははっ!なるほど!そりゃ納得できる!」
「ちょ!も、元康様!」

ニヤリと艶のある笑みを浮かべ、慌てる家康の肩を掴んで引き寄せると、またも政宗は嫌味なのか巫山戯ているのか分からない事を言う
しかし家康の方が可愛げがあると言う言葉に元康は怒る所か微笑んで、楽しそうに家康の頭を撫でた
流石の家康も高校生にもなって頭を撫でられるのは恥ずかしいのか、政宗の腕の中でもがいていると政宗はある事に気付いて顔をしかめた

「An?お前、まだ敬語かよ?兄弟なんだからタメで行け、タメで」
「そんな恐れ多い事、出来んさ」
「ん?ワシは構わねぇぞ?」
「元康様が良くてもワシが駄目なんです!」
「頑固だなぁ、そんな所まで似せんでも良いのに」
「"もう今は"似せていませんよ!」

兄弟でありながら敬語どころか様呼びに流石の政宗も朝から呆れ顔で、家康の背中を叩く
恐れ多いと話す家康に内心、元康は納得していた
元々、家康は記憶を取り戻した中学生の頃から元康へ敬語で話すようになってしまったのだ
幸いにも周りは元康が跡取りの立場であるからだろうなどと言い訳を怪しむ事もなかったが、元康だけは納得していなかった
しかも話題になる度に繰り返し、家康が無理だと言い切ってしまう
だが元康も引かないので長くなるのだ
それを知っている政宗は時計を確認すると、無理矢理に家康の腕を引いて急かす素振りを見せた

「Hey、家康!元康と遊ぶのも良いが流石にそろそろ行こうぜ!」
「え?あぁ、もうそんな時間か?分かった!元康様、行ってきます!」
「あぁ、気をつけてなー!」
「元康様もお気をつけて!」

大学生である為に朝に余裕がある場合は必ず元康は家康を送り出すようにしていた
それは社会人になれば家康を送り出すなど不可能になるのは、明白であったからだ
元康は、家康の成長を出来る限り見守りたいと何より願っていた
世の中からはブラコンなどと言われるであろうが、単なる弟ではなく前世からの大切な存在なのだから仕方ないなどと元康は思っている
そして今日も家康と政宗の後ろ姿を見送り終えて家に入ろうとしていた時、後ろから聞き馴染んだ声が聞こえてきた

「お!家康じゃねぇか!おーい!家康!」
「ん?あぁ、元親はは、ワシはー元康だぞー!元親ー!」

声の主は長曾我部元親、また政宗のように前世を覚えている人物であった
元康の事は今世で初めて知ったのだが元親の元々の性格のお陰なのか、政宗同様にすんなりと受け入れられた
無論、皆が皆、最初から元康を受け入れてはくれなかったが今、順調に交流出来ているのも元親のお陰であると言えた
そんな元親も時々、元康と家康を間違える事があった
逆に言うと、それだけ似ているとも言えた

「あ、あれ?こりゃ悪ぃ事したな!後ろ姿が似てたもんでよぉ」
「はは、大丈夫だ!それに背丈も似てるしな」
「いやぁ、しっかし!見れば見るほどそっくりだよなぁ」
「あぁ、髪を上げると見分けがつかんと独眼竜に言われた!あぁでも奴なら分かるかもな」

そっくりだと話す元親に対して元康は"奴"と言いながら一人の男を思い出していた
それは家康と同級生の石田三成である
今世でも元康の目の上のたんこぶとも言える男なのだが、その理由の一つとして家康がある
がそれを話せばまた長くなるのだ
しかし元康の考えに気付いていない元親は尋ねる

「ん?奴?誰の事だ?」
「ほら、家康と相思相愛の石田殿だよ」
「うわっ元康!お前、今すげぇ悪い顔になってんぜ
「ふふそれはそうと時間大丈夫か?元親」
「あ!!!悪かったな、元康!俺、急ぐわ!」
「あぁ!気をつけてなー!………ふむ、やはり見分けがつかない、か」

元康は悪い顔と言われた表情を緩ませながら元親を見送ると、自分の髪を撫でながら家に入って行った