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戌丸アット
2022-05-29 23:25:46
12178文字
Public
戦国basara
狸の親心
三家(戦国basara)
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雀がさえずり、太陽が心地良くまたは鋭く煌々と空を照らす朝
トントントンと小気味よく階段を上がる音を確認すると、息を殺して布団にしっかりと潜る
すると暫くして何処か気を使ったようにドアを2回ノックされて、聞き慣れた大事な弟の声を聞く
「朝ですよ、起きて下さい」
「んー
…
」
ドア越しに声をかけられ、寝起き独特のか細い声を出しながら待つ
そうすればきっとドア向こうでため息1つ零しつつも入って来てくれるのだ
「ほら、今日は朝から講義なのでしょ?」
ほら、思った通り
「おー
…
」
「起きないと困るのは貴方ですよ?家や
…
あ、も、"元康"様!」
「
………
ぷははは!おめぇ、相変わらず抜けてないなぁ?"家康"」
「い、良いから早く着替えて下さい!朝ご飯です!」
「分かってるって!今日はパンだっけかなぁ?」
弟の"家康"は何が起こったのか"家康の影武者"であった
そして自分は、その"本物の家康の記憶"があった
つまり本物の家康と家康の影武者は実の兄弟として転生したのだ
そしてどうして家康に対して茶化すのかと言うと
小さい頃はタメ口をきいてくれていた"家康"も、影武者の記憶を取り戻してしまった今では畏まった敬語でしか話してくれなくなったのだ
前世では影武者と言うのが表に出ない為に、当時はタメ口だったせいもあって不満に思う事があるので、こうした朝のちょっとしたヒトコマで茶化す
理由としては、頬を赤らめて感情を出す"家康"にホッとするのだ
豊臣傘下であった頃、本物の家康
…
元康は病に蝕まれていた
しかし元康と言う男は小さい頃からの経験上、殆どの人間を信用してなどいなかった
むしろ信用していた家臣は徳川四天王と言われた四人や影武者である"家康"など忠誠を長年誓っている身近な者たちのみであった
そして病を予感した時には、既に元康は考えていた
もし自分が死んでも三河の国主、徳川家康は死んではならない
家康が死ねば三河は、民は食い物にされる恐れがある
それだけは回避せねばならない、絶対に
では、どうすれば"家康"は死なずに済むか
それは"影武者"が"家康"になればいいと考えたのだ
それから影武者は、"もう1人の家康"となった
床に伏せた元康の代わりに家康が駆けずり回って全て報告して、全て2人で決めた
しかし離反した時は、元康が決めた
家康がそう望んだのだ
"自分だけでは足がすくんでしまいそうなんだ"
"どうかワシに言ってくれ"
"ワシに
…
友を裏切るように言ってくれ"
この時の場面は今でも鮮明に元康は覚えていた
何故なら唯一、元康が下した判断の中で後悔したからだ
別に間違っていたとは思わない
だがこの瞬間から死ぬまで家康は、もはや"もう1人の家康"でも"影武者"でもなく、東照権現の名が相応しい男へと変貌していた
気付いた時には元康の死も間近で、決戦だからと赴いた東軍が勝利した関ヶ原で深く後悔した
彼はかつての友であった男の死体の側で泣いていた
そして自分の犯した失敗に気付いた
影武者とはいえ人であり、個がある
しかし"もう1人の家康"となってしまった瞬間から、その個を本当の意味で元康が殺したのだ
元康はやっと気付いた、自分と話す度に彼を殺していた事に
何度も何度も殺していたのだ
殺して殺して、家康としての形を与えた
それにはきっと理想的部分もあったろう
しかしそれでも家康の中の情が残っていたから、関ヶ原で彼は声を押し殺して泣いたのだ
最後のひと欠片が残っていたから涙が溢れたのに、家康は家康である為に耐えていたのだ
しかし自分には時間が無い
家康に謝る手段すら消えていた
きっと家康は自覚しないだろう、そして自分が夢見た天下泰平を実現するだろう
ならば来世で償おう、彼が彼であれるように
そう決意した日から今世まで元康は家康の好きにさせていた、のだが中々どうして上手くいってはくれなかった
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