柚鈴
2024-05-10 18:09:41
9640文字
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でぃあぷろ夏イベ

夏霞デイドリーム


第4話 ❀⚓️「コバルトメモリーズ」

◇レイラ・カーティス

 病的を通り越して人工的に白い肌は、陽の光を受けやすく、オレンジ色に染まっており、人間とは別の存在だということを際立たせる──それは、サイドテールに結えられた、完璧なキューティクルの銀髪も同じで。
 ミア達が砂浜で城をつくり、海の家でそれぞれ食べ物を注文して。
 再び外へ出たときには、もう、陽は沈み始めていた。
 真っ赤な夕焼けが、海を、肌を、髪を染めて、染めあげて、瞳の中へ光が差しこむ──生命感のない、周囲に渦巻く暗闇を吸ったかのように、とっぷりと暗い穴のような瞳を除いて。
 レイラ達の前に現れたのは、レーテの家族──ではなく。

 レイラ達のよく知る、精霊だった。

「その子はアイドル候補生なんだけど、遊びたくって逃げてきちゃったんだ! だから、精霊さんが預かるよ!」
 胸元の赤いリボンを揺らしながら、楽しそうにジェスチャーを交えて、そんなふうに言う──その姿が、レイラの心に引っかかり、思わず眉を顰める。
 アイドル候補生?
 こんな、小さい子どもが?
 それに、たしかに今は、ミア達に心を開いているようだけれど……最初の茫洋とした瞳は、あの小さな小さな声は、遊びたくて逃げ出してきた風には見えなかった。
 なにか──おかしい。
「ねぇ、ミア……
「そっかぁ、そうだったんですね! 精霊さんが迎えに来てくれたなら安心だね、レーテちゃん!」
 少しの、けれど紛れもない怪訝さに、一番レーテが懐いているミアに声をかける──前に、彼女はぱっとレーテの手を離した。離してしまった。
「──!」
 その瞬間だった。
 レーテの、どこも映していなかったがらんどうの瞳が、大きく見開かれ──その顔貌に、疑う余地のない絶望が浮かぶ。
 それは、見ているこっちの心臓がギュッと握られたかと錯覚するほどに悲壮で、悲痛で、思わずゾッとするぐらい、その恐怖が伝染してくるのがわかって。
 遊びたいだけの子どもが──こんな表情を、するだろうか?
……せい、れい……精霊さま、なんで……!」
 そして彼女は、ミアへ手を伸ばす。
 まるで、助けを求めるみたいに。
 やっぱり──おかしい。
 その異常さに流石のミアも気づいたようで、さっきまでの笑顔が消える。
 そして、真剣な目つきで、精霊のほうを向いた。
「あの……どうしても、行かなくちゃダメなのかな」
 伸ばされた小さな手を取り、その華奢な体躯を守るように、抱きしめるように、ひし、と、腕で包みこむミア。
「どういう意味?」
「レーテちゃん、怖がってるみたい。なにか、ひどいことしてるの?」
…………
 不自然なほどに上げられていた口角が、一瞬で、百八十度になった。
 空洞の瞳は睨むように細められ、不機嫌そのものというように、眉の形が顰められる。
「! ミアっ……
 ダメだ。
 どうしてそう思ったかは、わからない。
 けれど、ダメだ、と思って、反射的に、ミアに手を伸ばす──が、その手が届く前に。
 ぱちん!
 精霊のしなやかな指と指が擦れる音ともに、視界が暗転していった。