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柚鈴
2024-05-10 18:09:41
9640文字
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でぃあぷろ夏イベ
夏霞デイドリーム
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第3話 ⚓️🍬📚🔥「Surges」
◇ミア・フィオリーレ
「私たちね〜、今、砂でお城つくってたんだよ〜! レーテちゃんも一緒にやろっ?」
ぐいぐい──というほどの勢いではないけれど、少しだけ強引に、レーテの手を引く。
抵抗は、ない。
けれど、おとなしくついてきている、とか、自らも歩みを進めている、とか、そういうのではなく──ただ、ただただ、されるがままに引っ張られているだけ、といった印象である。
と、数メートル歩いてさっきまでいた場所に戻れば、中途半端に成形途中の削られかけの砂の塔が、変わらず鎮座していた。
「形を整えるのは、姉さんがやるから
……
レーテちゃんとミアさんは、飾りつけに使う貝殻を拾ってきてもらえますか? あたしは次の砂をつくるので。それでいいかな、姉さん?」
「うん」
フウカの表情が、先ほどまでの心配そうなものから、一気に真剣そのものに変わり、再びスコップで砂のタワーを削りはじめる。
砂をつくる、とは、バケツに砂と海水を入れて、ぐるぐる混ぜる作業のことだ。簡単ではあるけれど、バケツがひとつしかないため、確かに、一緒にできる貝殻集めのほうが適解だろう。
「じゃあ行こっか、レーテちゃん!」
「
……
、
……
」
反応は、ない。
手を引いても、相変わらず無抵抗だ。
さながら、上の空、といったところか。
さもありなん。
だって──彼女は今、ひとりぼっちなのである。
両親とはぐれて、知らないお姉さんに声をかけられ。
不安、孤独。
その恐怖は──ミアにもわかるから。
だから、ミアは──その心を、ほんのちょっとでもほぐして、癒したい!
きっと、それがアイドルだから。
「あ、このへん、綺麗な貝殻いっぱいあるよ〜! ここで集めよっか!」
「
……
、
……
」
やっぱり、反応はない。
けれど、ぱっと手を離しても、どこかへ行ってしまいそうな感じはしなかった。一緒にしゃがみこむわけではなく、ただただ佇んでいるだけだけれど、一人でふらふらと放浪するわけでもなさそう。
まぁ、いきなり連れてこられても、何をすればいいかわからないよね。
なので、お手本を見せることにした。
彼女を視界の端から切らないようにしつつ、落ちている貝殻を選別して拾う。
それを、ただ呆然とした様子で見つめるレーテ。
しばらくそんな時間がつづいたけれど、ふと──レーテが、しゃがみこんだ。
「
……
レーテちゃん?」
思わずその動作を目で追えば──綺麗な水色の貝殻を、幼くて白い親指と人差し指で、そっとつまんでいて。
「
……
レーテちゃんの、髪の毛の色だね。その色、好き?」
「
……
、
……
」
やっぱり、会話のリアクションはない。
けれど──アクションを起こしてくれたことが、うれしくて。
茫然自失といった様子で水色の貝殻を見つめているだけでも、先ほどまでのこの時空から意識が乖離したような状態とは打って変わり、同じ時を重ね過ごすことはできている気がして、心の底から安堵した。
「完成〜! ね、写真撮ろ!」
「は、はい
……
! ほら、ハレリも
……
!」
「わっ、わかったから姉さん、待って待って
……
」
「レーテちゃんも! じゃあ、いくよー? はい、ちーず!」
数十分後。
砂浜には、ひとつの城が堂々と建設されていた。
ミアとレーテで集めた貝殻で彩られて、いい感じである。あとで城単体でも撮ろう。
と、カメラロールに保存されたばかりの集合写真を確認して──ミアは、思わず、隣のレーテを見やる。
データの中の、彼女の、人形みたいな表情が──少しだけ、和らいでいるような気がして。
「
……
、
……
?」
やっぱり、そうだ。
肉眼で見ても、変わらない。
レーテの頬の筋肉が、ほんの少しだけ、緊張から解放されているように見える。
「
……
ミアさん? どうしました?」
「
……
ううん! お城つくってちょっと疲れちゃったし、海の家で何か買おっか! レイラさんとシノさんにも声かけよ!」
喜びでいっぱいの胸裡は意味もなく内緒にして、レーテの手を引き、砂浜で待っているレイラとシノの元へ向かうことにした。
「
……
? わかりました? 行こ、姉さん」
「うん
……
!」
……
フウカちゃん、ずっとテンション高いな。よかった、楽しんでくれてて!
「メニュー、色々あるんですね
……
あたしは、フランクフルトにしようかな。姉さんは?」
「じゃ、じゃあ、私も
……
!」
「私はあまりお腹空いていないので、かき氷にします。ラムネ味にしようかな」
「じゃ、私もシノさんと同じで。ミアは?」
「私は焼きそばで! レーテちゃんは、何がいいかな?」
続々とみんなが注文を決めていくなか、そう問いつつ顔を覗きこめば、レーテは困ったように口を噤んでいた。
そう、困ったように。
困惑が見てとれるほど、その表情と感情は、豊かになっているのだ。
それがとってもうれしくて、思わず口角を上げながら、ミアは提案する。
「それじゃあ──私と一緒の、焼きそばにしない?」
「
……
!
……
、
……
!」
笑った。
少しだけ瞠目したあと、口元が愛らしく角度の鈍い弧を描いて、何度も頷いてくれた。
「──やーっと笑ってくれたぁ!」
その事実がうれしくて、ミアは思わずレーテに抱きつく。
ハレリのお小言が後ろで聞こえるけれど、気にしない。
迷子になって不安で不安でしょうがなかっただろう彼女の心を、溶かすことができたのだ。
それが、とってもうれしかった。
だって、ミアは──みんなを、笑顔にしたいから!
それが、アイドルだから!
「どこで食べましょうか
……
」
「んー
……
この人数で座れる席、ありますかね?」
それぞれ自分の注文した品を持って──ミアは、レーテの分の焼きそばも持って、うろうろと彷徨おうと、海の家を出る。
この人数だから、半分に分かれて座ることが前提になりそうだけれど──
「やーっと見つけたぁ!」
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