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柚鈴
2024-05-10 18:09:41
9640文字
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でぃあぷろ夏イベ
夏霞デイドリーム
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第1話 ❀「8.32」
◇レイラ・カーティス
カレンダーをめくる日が近づいても、葉は落ちることも色づくこともなく、じりじりと太陽に焦がされて、緑色に焼けている。
止まらない汗をぬぐいながらペットボトルに口をつければ、中の透明はずいぶんぬるくなっていた。
八月。
レイラ達の戦闘訓練に、季節は関係ない。
熱中症にだけは気をつかいつつ、サクリファイスの襲撃にそなえ、相も変わらず続いていた。
蓋をしたポリエステルをかばんにしまう音すら、静謐な廃墟には響く。
訓練を終え、各々が帰宅準備をしているときは、いつもこうだ。
雑談を一切しないわけではないけれど、基本的にはみんな疲れ果て、口を開くことはない。特に最近は非常に気温が高く、自然と口数が減っているのだ。
とはいえ、ここ数週間はサクリファイスの出現も少なく、平和な日々が続いているため、ぴりぴりしているというわけではないけれど。
「あ、あの
……
みなさん。少し、いいですか?」
などと考えていれば、静寂を切り裂くように、ミアがおずおずと手を挙げた。先ほどまでサイドテールにしていた髪をほどき、いつものワンサイドアップに結え直している。
視線が、一気に彼女へ集まる。
レイラやフウカとちがい、ミアはその圧に息を詰まらせるようなことはなく、むしろしっかりとその注目をものにしたうえで、とびきりの笑顔を浮かべた。
「私──みんなで、夏の思い出を作りたい! だから、一緒に海に行こうよ!」
──夏の、思い出。
「わ、素敵ですね。私は賛成です。みなさんは?」
「どうする、姉さん?」
「えっと
……
い、行きたいな」
「うん、あたしも! レイラさんは?」
「
……
私、は
……
」
夏の思い出。
そう言われてできる回想なんて──鬱陶しくてうざったい高い温度と湿度と共にあるこれまでの記憶なんて、クーラーの効いた部屋で机に向かっていたものだけ。
水泳は、体育の授業でおこなうだけのもの。
レイラにとって、夏といえば、夏期講習。
その程度に、夏の思い出なんて、つくったことがなかった。
そして──出会ったばかりのレイラであれば、こんなの、きっと、突っぱねていただろう。
だけど、今は──
「
……
私も、賛成。みんなで行こう」
その提案が、嫌じゃなかった。
ミアの表情がぱあっと明るくなって、目に爛々と星々が宿る。
嫌、どころか──むしろ、楽しみに思えている自分がいる。
だって──友達と遊びに行くなんて、初めてのことだから。
「
……
友達、か」
その響きがなんだかくすぐったくて、思わず一人でくすりと笑う。
──こうしてレイラ達は、八月某日、海へ遊びに行くことになった。
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