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夜明 奈央
2024-05-06 08:22:21
5825文字
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お知らせ
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DR2023新刊サンプル お砂糖をひとつ
※頒布終了済み
Web再録(一部加筆・修正、改題等あり)+書き下ろし10本のSSまとめ本
A6文庫/会場¥800/P.264(内書き下ろしP.55)
サンプルは書き下ろし部分から抜粋
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最期の我儘
*BEAST軸
太宰は時々何かを言いたそうにして、諦める。嘘も秘密も十八番の太宰だ。言う気がなければ隠し事の存在すら俺に気取らせはしない。だから、本当に迷っているのだと思う。
言うか、言わないか。最初は気になってあの手この手で喋らせようとしていたが、喋らせることは終ぞ叶わなかった。いつしかそういう素振りすら見せなくなった。きっと〝言わない〟と決めたのだろう。
それから、太宰はますます一人になった。俺への隠し事が増え、他の部下はより一層遠ざけた。だから俺は失敗したのだと悟った。きっと俺を巻き込むかどうか悩んで、何らかの理由で巻き込まないことを決めた。その中身に何ひとつ見当がつかないことも、最終的に巻き込まないという選択を取られたことも、ショックだった。最高幹部なんて役職を新たに作って、こんなにも長い時間こんなにも近くに置いておいて、俺と太宰との間の壁は、どんどん厚く、高くなっていった。
毎日四六時中顔を合わせている今より、一ヶ月顔を合わせないことだって珍しくなかったかつての方が、ずっとずっと近くにいた。
いつもの仮眠時間、寝台に入る太宰を横で見守っていると「あのさ、」と小さく呼びかけられた。それに布団を掛けてやりながら応じるが、呼びかけた本人は曖昧な笑みを浮かべて口を噤んだ。何年振りだろうか。すぐに昔の失敗が脳裏にフラッシュバックする。
最近の太宰は秘密主義に拍車がかかって、側近である自分にも何をしようとしているのかわからない。ここが分岐点だと思った。今度こそ失敗は許されない。けれどあの時の何がダメだったのかわかっていないから、結局どうするのが正解か俺にはわからない。結果、何も言えずにじっと続きを待つしかできなかった。
太宰は黙って俺の顔を見つめて、何事かを考えているようだった。それから布団の中に押し込めていた手を出して、俺の手を握る。意図はわからなかったが、その手を握り返してやった。
「寝てる間、こうしててもいい?」
「は?」
予想外の言葉に反射で声が出る。太宰の意味不明の命令には慣れたつもりだったが、何も身構えていなかったから素で驚いてしまった。
「やっぱり、」
「いえ、大丈夫です」
離れていこうとするので、慌ててそれを捕まえて握り直す。
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