夜明 奈央
2024-05-06 08:17:56
13063文字
Public 中太小説
 

Meant To Together

中太オメガバースパロ β×α
*α太宰の運命の番っぽいモブΩが出てきますが中太としてハピエン
*全年齢程度の性行為描写(中太のみ)があります。
2023年9月1日初出



 それから3日程、太宰と顔を合わせない日が続いた。中也は意図的に避けていたが、太宰もそれを察してか会いにくるどころか仕事の連絡さえなかった。
 太宰を手放したくなどない。けれど、他の人間と番になった太宰と変わらぬ関係を築けるとは到底思えなかった。
 自分の性別をここまで悔やんだことはなかった。もし自分がΩだったら、無理やりにでも太宰と番になってやるのに。もし番になれたとしても、Ωは捨てられたら終わりだから、実際は今と立場が大きく変わるわけではない。わかっていても、太宰にとっての唯一無二を、自分以外に盗られるという状況には耐えられそうになかった。
 半分死んだような気持ちで、それでも太宰の仕事のスケジュールだけは把握していた。顔を合わせたくなかったからだ。なのに、中也がエントランスを通りかかると、今日は1日中出張に出ているはずの太宰とばったり顔を合わせた。
「中也、話があるんだ。今から私の執務室に来て」
 即座に目を背けたが、太宰に目敏く捕まってしまった。話が何かなど、考えるのも怖い。どうにか逃げようと言い訳を考えていると、「幹部命令だよ」と付け加えられた。周囲には、まばらではあるが他の構成員たちがいる。絶対に逃がすつもりがないという太宰の意図が透けて見えた。太宰が中也相手に幹部命令などという言葉を使ったことは今までない。
 諦めて従う素振りを見せると、太宰は執務室へと先導し始めた。後ろをついて歩く間、会話のひとつもなかった。
 執務室に到着すると、人払いをして中也に向き直る。目を合わせたくなくて、俯いた。
「葵さんのお葬式に行ってきた。一昨日の夜遅くに亡くなってね。今日が葬儀だった」
「なんだよ。番がいなくなったから俺に戻ってこいってか」
「殺したのは私だよ。指示しただけだけど」
 思いも寄らない台詞にはっと顔を上げた。
「これでも苦労したんだ。重要取引先の令嬢を理由もなく殺すわけにいかないからね。突けばボロの10や20出てくるだろうと思ってたのに、見事に清廉潔白。って言っても、うちと取引してるぐらいだから法には背いてるんだけど。だから仕方なく、外部の暗殺者を個人的に雇って殺させたよ。時間もなかったしね」
「時間って……
「だって君が拗ねるから」
 太宰は惚けたように肩を竦めて見せた。
「最初に言っただろう。『あんな面倒な女好きになるわけない』って。『Ωに興味がない』とも言ったはずだ。なのに君はちっとも信じてくれないから、これでも結構傷ついてるんだけど」
 それこそ拗ねているのを隠しもせずに、組んだ足の上で頬杖をついた。
「さて、まだ状況がわかっていないらしい中也くんの質問に今なら答えてあげてもいいけど?」
 中也に逃げられるとは微塵も思っていないようだった。それが腹立たしい一方、それだけ信頼されているという証でもあった。
「なんで殺した」
「本当に私の運命の番みたいだったから。彼女を殺せば、もう2度と私の運命の番が現れることはない」
 いつものようにもったいぶることもなく、端的で明確な返答だった。運命の番を夢見る世の中の大多数とは正反対だ。二の句が継げずにいる中也に、太宰は重ねて続けた。
「もし彼女が運命の番ではなくて、また別の候補が現れたとしたって、私は何度だって、何人だって殺すよ。Ωなんかに人生弄ばれるのは真っ平だからね。自分の隣に置く人間は自分で決める。私は私の隣を中也以外の人間に明け渡す気はない」
 傲慢なそれは、支配することに慣れたαそのものの顔だ。ひくり、と口元が引き攣る。恐怖でも、呆れでもない。それは確かに、歓喜だった。
「俺に拒否権はなしかよ」
「拒否するつもりなんてないくせに」
 太宰が甘えるように手を差し伸べる。それに忠誠を誓う騎士のような気持ちでキスを落とした。


ご感想喜びます / 転載・AI学習禁止