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夜明 奈央
2024-05-06 08:17:56
13063文字
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中太小説
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Meant To Together
中太オメガバースパロ β×α
*α太宰の運命の番っぽいモブΩが出てきますが中太としてハピエン
*全年齢程度の性行為描写(中太のみ)があります。
2023年9月1日初出
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それから1週間程は、何事もなく過ごした。それに伴い、徐々に緊張も記憶も薄れていった。
「また葵さんとデートすることになったんだけど、中也も来るよね?」
「は?」
仕事の話の後に食事に誘うような気易さで誘われて、一気に記憶が呼び起こされる。
「葵って、橋本さんのとこの」
「うん」
「デートって」
「こないだと同じ保護者付きだよ?」
「手前まだ会う気かよ。何が起こるかわかんねぇんだからやめとけよ」
「えぇ~でももう約束しちゃったし~」
女との約束を平気ですっぽかす男の発言とはとても思えなかった。
中也の胸の中に、黒い靄のようなものが立ち込める。
前回は何事もなく終わったが、まだあのΩが太宰の運命の番でないという証明にはならない。証明など一生できないかもしれないが、それでもできれば、会ってほしくなかった。
「なんかあんのか、あの女に」
「ある程度橋本さんの顔も立ててあげなきゃいけないからね」
「それだけか、本当に」
「なあに? もしかして私が本気で浮気するとでも思ってるの?」
本気で思っているわけではない。だが何も不安がないわけでもなかった。運命の番は自然に惹かれ合うものだと言う。会う回数が重なれば重なる程、中也にとってのリスクが増える。
「そうだって言ったら?」
「私があんな面倒な女好きになるわけないでしょ。Ωにも興味ないし」
太宰は億劫そうに吐き捨てたが、中也が納得できる程ではなかった。
「じゃあその目で見ればいいじゃない。中也抜きでは会わないから」
言い包められたような気がするが、他に代案も思いつかなかった。あそことは今は良好な関係を築いているが、太宰が娘を冷たくあしらえばそうはいかなくなる可能性だってある。ポートマフィアとしてそれは避けねばならないことぐらいは中也だって理解していた。
納得はできなかったが、中也の知らないところで太宰がまたああなってしまえば、今度こそどうなるかわからなかった。それに比べれば、近くで見ている方がずっとましだった。
それから、太宰と葵のデートに何度も立ち会った。
デートは2週間に1度程行われ、前回のアフタヌーンティーを含めた最初の3回は橋本家の屋敷内での逢瀬だった。何れも最初に会った時のような不自然な発情期が起こるようなことはなかったため、4回目からは人の多いところを避けて映画館や美術館へと繰り出した。
葵が太宰に惹かれているのは明白だった。手を繋ごうとして太宰がやんわりと拒絶している場面を何度も見た。その度に悔しそうにしながらも、諦めるつもりはないようだった。
太宰は最初と変わらぬ態度を貫いていて、葵に惹かれているようには見えない。それだけが、中也の溜飲を下げていた。
あれ以降、太宰と葵が運命の番かもしれないと思う場面は1度もない。けれど太宰はあれからα用の抑制剤を常用していて、薬の効果でないとは明言できない。
太宰との性行為は、随分と減っていた。抑制剤の副作用で、性欲そのものが減退するらしい。代わりに何もせずに中也の腕の中で眠ることが増えた。葵とのデートの時間を捻出するために日々の業務はますます過密になっていたから、太宰の身体を思えばそちらの方が安心できる。しかし、何度忠告しても葵とのデートを取り止めようとはしなかった。それが中也を不安にさせた。
3ヶ月程経った頃、いつもの頻度が崩れた。太宰に尋ねると、葵が発情期の予定だと言う。発情期の間は会わないという事実に、ただただほっとした。
「そういうわけで、今週は余裕があるんだよね」
わざとらしく上目遣いを向けられて、太宰の意図を理解した。
「じゃあ今晩どうだ?」
腰に手を回すと、嬉しそうな笑みを溢した。キスを強請られて、唇に触れるだけのキスを落とす。
その日は心ゆくまで太宰を堪能した。
次のデートは葵の発情期が明けた翌日だった。前日まで発情期だったという彼女は明らかに窶れていて、いつもの印象とは大きく異なっていた。体力的にも厳しいのか、久しぶりに橋本家の屋敷に呼ばれた。
いつも通り太宰と葵が歓談を繰り広げていると、ノックが響いて橋本が入ってきた。特に聞いていなかったため些か驚いたが、葵は待ち構えていたかのように切り出した。
「太宰さん、私と番になっていただけませんか?」
「急に何を仰るんですか」
「いえ、急ではありません」
葵は太宰の言葉を遮って、滔々と語り始めた。
太宰のことが好きだと。初めて会ったあの時から、太宰が自分の運命の番だと確信していたと。発情期の間、太宰のことを考えると少しだけ発情期が楽になったと。こんなこと今まで1度だってなかったから、やはり太宰が運命の番だと。
あまり冗談を言うような性格ではなかったが、それでも常にない真剣さだった。
「私からもお願いいたします。どうか娘と番になっていただけないでしょうか」
橋本まで隣で頭を下げた。
ここまで来てしまえば、はっきり断るしかないだろうと思った。了承するならまだしも、有耶無耶にして利用するのは難しいだろう。もっと早い段階で断っておけば良いものを、純朴な娘を弄ぶからこうなるのだ。
太宰の自業自得だったが、それでも太宰のことだからこれも上手く言い包めるのだろうと思った。
「2人とも顔をお上げください」
太宰は顔を上げさせると、居住まいを正した。
「お申し出は大変光栄です。ですが、αの私と違って葵さんは番になってしまえばもう後戻りできません。私たちはまだ出会ってたったの3ヶ月です。お互いよく考えてから決めるべきでしょう」
「もちろん、よく考えました。私の方がリスクが大きいことは承知の上です。覚悟しております」
橋本父子が引き下がる気はないようだった。葵は本気で太宰が運命だと信じているようだ。橋本はどこまで信じているのかわからないが、ポートマフィアとの結びつきをより強固にするチャンスである。後押しこそすれ、反対する理由はないはずだ。
「少しお時間いただけないでしょうか。急なお話ですし、もし番になるというのであれば私も葵さんの人生に責任を持つ必要があります」
「そうですよね。太宰さんのご都合も考えずに不躾なお願いを
……
」
「そんな、不躾だなんて。本当に光栄です。前向きに検討させていただきます」
きっと断るのだろうと確信していた話が、おかしな方向に進んでいるのだとは感じていた。けれど「前向きに」などという了承を匂わせる言葉が出てくるとは予想していなかった。腸が煮えくり返る思いだった。
相手はポートマフィアの重要取引先だ。それだけがその場で暴れだしたくなる気持ちの抑制剤になっていた。
帰りの車に乗り込み屋敷が見えなくなるや否や、中也は太宰の胸倉を掴んだ。
「なんで断らなかった」
「私にも立場ってものがあるのだよ。わかるでしょ、あの取引先の重要性が」
怒りと失望が同時に襲ってきて、頭の中が真っ白になった。拳から力が抜けて、引っ張られて浮いていた太宰がすとんと重力に従って座席へ戻る。
「別に、君との関係を終わらせるとは言ってないじゃない」
太宰は苛立ったように乱れた襟元を正している。
車内に気まずい空気が流れたまま、気づけば本部へと到着していた。
太宰は中也の方など見向きもせずにさっさと仕事へ戻っていく。それを追いかける気にもならず、中也は重い足取りで自分の仕事へと戻った。
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