夜明 奈央
2024-05-06 08:17:56
13063文字
Public 中太小説
 

Meant To Together

中太オメガバースパロ β×α
*α太宰の運命の番っぽいモブΩが出てきますが中太としてハピエン
*全年齢程度の性行為描写(中太のみ)があります。
2023年9月1日初出



 翌日目を覚ますと、太宰はもう出発してしまったようで、隣は蛻の殻だった。おそらく回復したのだろう。だが心配ではあるので執務室に様子を窺いに行くと、昨日のことが嘘のようにぴんぴんしていた。そして、中也たちが置き去りにした荷物を見せられた。昨日のうちに早々に届けてくれたらしい。
「流石仕事が早いよね~こんな世界だから丸っきり信用はしないけど」
 荷物と一緒に届いたという菓子折りと手紙まで見せられた。
「こんなお誘いを受けてね。せっかくだから了承しようと思ってるんだけど、中也も来てくれるよね?」
 促されるままに手紙の中を検める。謝罪から始まった手紙は詫び状だろうと思った。しかし、読み進めていくと趣が異なることに気づく。要約すると次のようなものだった。
『発情期の周期とは大きく異なっており、抑制剤もきちんと服用しておりました。こんなことは今まで1度もありません。娘とも話をしましたが、もしかしたら運命の番ではないかと思います。ご迷惑でなければ娘ともう一度会ってはいただけないでしょうか』
「おい、デートの誘いじゃねぇか」
「そうだよ。だから君にお伺いを立ててるんじゃないか」
「堂々と浮気すんじゃねぇよ」
「保護者付きで浮気とは言わないでしょ」
 確かに手紙にはβの使用人を付けさせるとあるし、太宰側にも護衛を付けるように書いてある。浮気というにはあまりに色気のない布陣である。
 行ってほしくはないが、この状況で止めることができる程の理由も持っていない。
「また昨日みたいなことになったらどうすんだよ」
「そしたらまた君が守ってくれるでしょ?」
 予想通りの返事が返ってきてため息をつく。
「せめてα用の抑制剤飲んでいけよ」
「了解。日程決まったら連絡するね」
 


 デート当日、また橋本家の屋敷に来ていた。今日は橋本家のシェフお手製のアフタヌーンティーを楽しむことになっている。その催しの楽し気な空気とは裏腹に、事前に逃走経路の確認を行い逃走車および麻酔銃の手配が行われている。とてもじゃないが年頃の男女がそういう目的で引き合わされる状況ではない。
 お相手の娘である葵は酷く緊張しているようであった。無理もない。また自分が発情期を起こすかもしれない恐怖もあるだろうし、それを大勢の人が監視している。橋本家側からすれば実質的に見合いでもあるはずだ。
 対して監視もデートも慣れっこな太宰はどこ吹く風である。こういう時、やはりこいつには心臓に毛が生えているのではないかと思う。
「先日は本当に申し訳ございませんでした」
 橋本父子は改めて頭を下げた。
「いえいえ、あんなのは事故のようなものですのでお気になさらずに。むしろ色々とご配慮いただきありがとうございました」
 太宰は大仰に笑ってみせる。対女性用の猫被りモードだった。
 傍で見ている中也にとっては面白くない。けれど付き添いである以上余計な口を挟むことはできないため、机の下で見えないように足を蹴飛ばすだけで我慢する。
 橋本は挨拶だけのつもりだったのか、太宰といくつか言葉を交わすと自身は早々に退散した。それを見送ってから、初めて葵が自発的に口を開いた。
「もう、お父様ってば、昔っからすごく過保護で」
「こんな可愛らしい娘さんがいらっしゃったら過保護になるのも当然でしょう」
 太宰は朗らかに笑ってみせた。
 それから2人は身のない世間話をしながらお茶を楽しんだ。特別盛り上がることもないが、沈黙が流れたり、気まずい思いをすることもない。太宰が絶えず話題を提供し、お世辞交じりに褒め、上手く会話を誘導しているからだった。この手の手腕にはいつも舌を巻く。太宰が女性にモテるのも、悔しいが道理といえた。
 結局、その日は何事もなくデートを終えた。誂えた装備が杞憂で済んだのは僥倖であった。結局、あの日何が起こったのかはわからないままだ。このまま何事もなく縁が切れればいい。
「あの、よろしければまたお会いしたいのですが」
 帰り際に葵が控えめに主張した。太宰は内ポケットからさっと自身の名刺を取り出すと、葵の手に握らせる。
「ここに連絡をいただけますか」
 葵はこくりと頷いて、頬を染めた。

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