Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
糸冬いずく
2024-05-04 01:43:02
56529文字
Public
二次創作:冠は余らない
Clear cache
Export ePub
冠は余らない
完結、花宮真、黒子のバスケ、Another
夜見山北中学出身の花宮真が誠凛高校バスケ部に入った話。「もうひとりなら殺してた」
ヒトないしヒトのようなものが死にます。
クロスオーバーです。複数の作品の世界観を融合しました。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
秋
夏休み明け、登校したら、クラスメイトがじっと見てきて、おめでとうと口々に言った。もてはやされた。ちやほやされた。先生たちも、居心地の悪そうな部分を見せながらも、誇らしげな様子でバスケ部に言葉をかけた。一方、当のバスケ部は、とっくに、いつもの練習三昧だ。新入部員数名は誰も定着しなかった。いつのまにか秋になった。いつか周囲の関心も薄れていた。
それでも誠凛高校バスケ部は、目まぐるしくもバスケットボールをついている。
バスケ部の一年は、夏では終わらない。秋も大会。冬も大会。高校バスケは、もうまもなくウィンターカップに突入する。
「インハイと国体に並ぶ最重要大会
——
だっけ」
そらんじるような言葉であったと、小金井は否定しない。今日も今日とてバスケットボールにもてあそばれた、未経験組のひとりである。いや練習は重ねてきた。ルールも基礎も体に刻んだ。もはや夏とは比べるべくもないだろう。絶対に、確実に。それでも時々いやしょっちゅう、未知の学生バスケ事情が小金井の前にやってくる。
ウィンターカップが高校バスケの最重要大会のひとつである、とかのことだ。名前くらいは知っていた。季節もわかった。冬の大会だ。秋の終わりの予選に勝ったら、冬の初めの本選に進める。最近の練習は、この大会を念頭に置いた内容だった。ウィンターカップまでに、と言われない日は皆無に等しい。ただ、このことを小金井は、単に次の大会だと認識していたのだけれども。
「知ってた? カントク、ウィンターカップに向けて調整してくれてたんだって」
次の大会に向けて、ではない。秋の前から、夏の前から、創部からこの方。敵は一年をかけて、このウィンターカップに向けてステータスを仕上げてくると、考えておく必要があると。今日の練習の合間に、話の流れで聞かされた。もちろん私たちもね、と。小金井は飛び上がって声まで上げた。
のに。部活帰り、隣を歩く花宮は反応が薄い。
「そりゃ、まあ高校バスケだし」
それどころか当然のごとし肯定である。
「上目指してりゃ、どこもそうなる」
小金井は目を見開いた。まったく同じ言葉を、これまた例の話の続きに聞かされたところであった。逆隣を見ると、水戸部が花宮と目を合わせて、困ったようにうなずいていた。どうせ花宮が俺をバカにしてるんだ。小金井は構わず水戸部に泣きつく。
「花宮との断絶を感じる!」
水戸部は今度、小金井を見下ろして困ってくれた。大変だなと、背中から聞こえた。小金井は振り返って指を差した。
「花宮、本当はバスケ部出身!」
「帰宅部だったが」
「うっそだあ」
「ンなわけねえだろ、指差すな」
花宮、にらむ。小金井、腕を下ろす。水戸部、困り続ける。花宮が、小金井よりうんと高いところに目線を上げる。そして、わかったと言って、小金井のところまで目線を下ろす。
「いいか、最後だ。コガは耳の穴かっぽじって、よーく聞いてろ」
「えっ待って」
小金井は手を突き出して制止した。花宮は待ってくれた。小金井は息を吸った。吸って、吐いた。吐いて、吸った。耳の穴もかっぽじった。創部から半年以上、つまり花宮との付き合いも半年以上。その半年で学んだことのひとつだが、花宮の「最後だ」は、それで本当の「最後」を意味する。花宮は待ってくれた。小金井は軽く伸びをして、やっと「いいよ」と手を下ろした。
「中学でバスケ部に入ってた先輩に、バスケを教わったり遊んだり、学生バスケ事情も散々聞かされました。終わり」
「終わり?」
「終わり。っつーか、初めてじゃねえだろうが。何度も言わすな。これで最後だ」
「だって!」
「
——
水戸部も大変だな」
花宮が、また小金井より高いところを見上げた。水戸部が頭を振る気配がした。なんだよと、あくまで花宮をにらむと、花宮が、また小金井を見下ろす。
「水戸部とコガは中学からの付き合いなんだろ」
「だから?」
「だから」
花宮が口元だけで笑ってみせた。水戸部を見ていた。水戸部は首を横に振った。
「俺にもわかるように話してよ、バカ宮!」
「いつも言ってるけど、それ頭悪そうだよ」
「ムキーッ!」
花宮なんか!
バカにされていることは知っていた。花宮は、よくバカにした。そういうときの花宮のことが、苦手だった。バカにされることは嫌なことだ。出場する大会に向けて練習を重ねることと同じように当然に、バカにされたくはないのである。花宮なんか嫌いだと、口に出して伝えもした。しかし、それで距離が遠ざかることにはならなかった。むしろ近づいた。小金井は、バカではない。けれども。
きっと張り合う気になれないだけだった。
「花宮は違うんだ」
花宮と小金井の間には明白な断絶がある。
「ううん、つっちーとも違う。水戸部とも、日向とも伊月とも違う。カントクとも違う。みんな言ってる。なあ花宮、おまえ才能あるよ。バスケットボールの、才能」
「そうかもな」
花宮は否定しなかった。小金井は驚いた顔をしたのだろうか、すぐに次の言葉が訪れた。
「先輩に、かなり言われたから」
初耳である。が、意外な事実というわけでもない。花宮の才能は、もはや六か月目の小金井の目にも明らかな事実だ。まがりなりにもバスケ部で、なおかつ直接に教えたという「先輩」なら、もっと早くに気づけたはずだ。そうと知れたとき、どんな気持ちがしたのだろうか。小金井は水戸部との会話を思い返した。夏の大会の最中だった。あのとき水戸部は珍しいことに、たかぶっていて、
「『才能はあるけど天才やない』」
逆に小金井が秋の大会の終わりに、花宮は天才だと気づいたとき、水戸部はどんな顔でこたえてくれたんだっけ。
「言われたの?」
「たしかに俺は、他人のプレーをひと目で完璧にモノにすることはない。スリーポイントは入らないことがある。姿勢が崩れたら得点はできない。ゴールポストを触りたければ、助走をつけて跳ばなきゃならない」
「それは
——
」
木吉にだってできなかった。
「
——
どういう先輩だったのさ」
「想像と違った?」
「違った! もっと、こう、アットホームな先輩だと思ってた!」
「それこそ、どんなだ」
「じめじめ気難しくて近寄りたくない友達ゼロ宮のことを、見兼ねて嫌がらないで構って遊んでくれるような、
——
優しくて憧れられる先輩! ザ・学年の垣根を越えた心温まる友情!」
「おお」
「実は闇宮は、憧れの先輩とバスケで戦いたくって、誠凛高校バスケ部に入ったのである!」
「不正解だ」
不正解なんだ。意気を落とした小金井に、花宮が呆れた目を向ける。
「正解は?」
「苛々してた上級生が、つい握れた新入生の弱みをネタに、鬱憤を晴らしたり、暇を潰したり」
「弱み」
小金井が復唱する。もう無効だと、あっけらかんと返ってくる。うーん本当に一から十まで想像と違う。
「その先輩は今もバスケ部?」
「あの人の進学先も知らねえよと言いたいとこだが、たぶんウィンターカップに出てくるな」
「えっ」
「俺の『憧れの先輩』に予選で会えるってことだ」
「しかも都内!」
「インハイでも予選にいた」
「強いの?」
「性格悪ィんだよ」
花宮より? そう聞く前に、自動販売機が目に入った。小金井は急に喉が渇いて、声をかけて買いに駆け寄る。いくつかの操作の末に購入を終え、振り返ると、背後に待たせた二人がそびえ立っていた。長い影が伸びていた。先に背の高いほうがボタンを押して、背の低いほうは後に手を伸ばす。そうは見えても、どちらもやすやすと小金井の頭上を過ぎる。水戸部はもちろん、花宮だって背が高い。
三人が三人、立ち止まって、思い思いに飲み干した。再び歩き始めるまで、誰も一言も口をきかなかった。
「花宮、才能あるからってバスケ始めた?」
「その影響は否定できない」
最初の疑問は、曖昧な肯定に迎えられた。じゃあ、と小金井は別の名前を出してみた。花宮の入部の経緯は、一応は部員全員が知るところである。木吉である。木吉が誘ったのだ。木吉に誘われたのだ。そして花宮は、これも否定はしなかった。じゃあ。小金井は再び理由を探そうとした。それを遮るように花宮が言った。
「特別な理由がなきゃ、俺はバスケやっちゃいけないのか」
「そんなこと!」
思わず大きな声が出る。そのことに小金井は自分で驚いて、花宮と水戸部の顔を見て、ほっとして言い直す。
「そんなことは、もちろん、ない。けど」
それでも言葉尻は、こうなった。
「ふはっ」
花宮が嘲笑した。
「コガのわりには上出来だったぜ」
「とんでもないやつを拾ってきたもんだ」
日没の歩道で、日向はこぼした。
返事はなかった。
「天才には天才がわかるってのか?」
以前にも聞いたことを、再び口にした。あのときの「天才」は、やるやつだと思って、などと答えやがってくれたのだが。
日向は、たぶん絶対確実に、よい気持ちがしなかった。だって木吉は、日向のときは、携帯の背景画像がきっかけだった。日向の携帯の背景の、バスケの選手の写真がだ。日向は経験者だったのに。花宮のことは未経験だったにもかかわらず、ひと目見てわかったという。花宮は花宮で、接点があった先輩が、などとほざきやがるし。
——
これだから俺は木吉が嫌いだ。
日向は、たびたび、そういった。そのたび木吉は笑ってこたえた。日向は、ますます嫌いだと思った。
だが、木吉には笑顔が似合った。今日はウィンターカップに向けて新しい連携を練習した。それが一度うまくいって、嬉しくて声を上げて、ハイタッチまでしようとして、目の前にあった顔を見た。そのときになって気づいたのだ。木吉の朗らかな表情が、チームに安心をもたらしていたのだ。木吉とやるバスケットボールは、とても楽しかった。
——
無理してリバウンドしくじって大怪我になって、インハイそこそこで俺らとのバスケを終わらせたいってんなら、話は別だが。俺は、おまえがいないバスケ部なんか、ごめんだぜ。とっとと診察と治療を受けて、新人戦かウィンターカップか、来年にでも戻ってこい。出場権くらい、おまえがいなくてももぎ取れる。
「やっぱり、とんでもないやつだったよ」
全部あいつの言うとおりになっちまった。
「おかえり、木吉」
日向は言った。普段の彼なら、決して口にできなかった言葉を。木吉は笑って受け止めた。
三年間バスケをやろう。一緒に日本一になろう。なあ木吉。
なあ花宮。
小金井は最後に尋ねた。
「いいの?」
「何が?」
質問は、質問で返された。
小金井は花宮の顔を見て、水戸部の顔を見て、そして言い直した。
「木吉、日向に取られちゃった」
「それを言うならカントクじゃねえの」
花宮は、ただ事実を述べるだけの顔で、小金井に答えた。
うーん。小金井は一度うなって、もう一度尋ねる。
「花宮はいいの?」
すると今度は、すぐには返事がやってこない。おっ、と思って目を見ると、花宮の目と目が合った。
「いいも何も、木吉はクラスの人気者だぜ」
「だぜ?」
「『いい』ってこと。なあ水戸部。おまえらだって同じだろ?」
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内