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糸冬いずく
2024-05-04 01:43:02
56529文字
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二次創作:冠は余らない
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冠は余らない
完結、花宮真、黒子のバスケ、Another
夜見山北中学出身の花宮真が誠凛高校バスケ部に入った話。「もうひとりなら殺してた」
ヒトないしヒトのようなものが死にます。
クロスオーバーです。複数の作品の世界観を融合しました。
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高校一年
春
校長が上級生に関してを言わなかった。新入生代表も先輩の存在に触れなかった。そして在校生代表の挨拶は式次に存在しなかった。千人を優に収容する体育館に、新入生三百名と教職員、来賓、そして新入生の親類縁者、他。在校生は元よりいない。存在しない。するはずもない。私立誠凛高校は、その日、初めて生徒を迎える。新設の学校の入学式だ。
皆が知った話題だった。志望動機の大半がこれだ。そうでないなら家が近いのだ。たいした特徴のない学校だった。担任が自己紹介をさせるまでに、とうに使い古された話題だった。
「出席番号三十三番、花宮真です。夜見山市というところから来ました。得意科目は化学で、部活は、高校ではやりたいと思っています。新設校なので、
——
心機一転、したいです。三年間よろしく」
それでも、話題を見つけられなかったやつは何番目になっても言った。彼らの何人かは、それから人間関係を広げたが、片手の指くらいの人数は早々に孤立した。よくある春、よくある四月、よくある高校一年の教室。ただ新しいだけの学校で、花宮真は後者だった。
レクリエーションにしろ班分けにしろ新設校の新学期の新入生の人間関係構築の機会を、花宮はことごとくふいにした。委員会にも入らなかった。かわりに、得意科目を覚えていてくれたクラスメイトのおかげで化学係に当たった。化学の授業のために担当教師とのやり取りをする、雑用係の一種である。また同じく得意科目を覚えていてくれたクラスメイトから化学部などに誘われたが、
「せっかくだけど、部活は運動部を考えてる」
花宮は二度と誘われなくなった。
教室には次第に友人グループが生まれ、花宮を取り込むことなく、形を決めていく。花宮は教室の片隅の席で独りで、弁当を食べて本を読んだ。クラスメイトとの会話は、とっくに大半が事務的だ。ゴールデンウィークを待たずして、せいぜい人間のよくできた数名に
声をかけてもらう
、そういう存在になっていた。
だから、そいつは久方ぶりの勧誘だった。
「なあ花宮、バスケやろうぜ」
せいぜい人間のよくできたクラスメイトが一人、隣の席の大男、木吉鉄平である。
新設の校舎の真新しい屋上で、バスケ部(仮)五名が指導を受けた。
ちょうど今朝のできごとだ。全校集会の時間に合わせて、宣誓、したのである。
「いや、それはね! このC組の日向順平くんが!
——
勝手に言っただけでねえ」
「まァだ、そんなこと言ってんのか」
木吉のクラスの席の周りに立って、小金井慎二は釈明する。その日の放課後のことだった。
「マネージャー、とは違うかもだけど、誘った子が、本気で一番目指すくらいじゃなきゃ引き受けないって」
「全校生徒の前での宣誓が条件だった?」
「いや、そこは俺らで。本気だって態度で示そうって。木吉が言ったでしょ。日本一目指して、今年必ず全国出場!」
「全裸で告る、なんでもやる! って、その後で日向くんも叫んだよな」
「だから、それが! あの後先生たちに𠮟られて、絶対やるなって
——
」
「
——
だからこそ、だろうが」
日向順平が、かぶせるように反論した。
「先生の言い分は、たぶん正しいよ。新設校で一年しかいないし、スポーツに力を入れてる学校でもない。けど相手は二年も三年もいて、勝ち進めばそれだけ強豪ってことだ。でもなあ、だから目指しちゃいけないなんてこたァねえだろ。
俺は本気だ。もし、もしもできなかったとしても、そのときは俺が、俺ひとりでも、本気だったってことを証明してやる」
言い終わると、他の部員まで口を閉じた。教室も、しんと静まり返ってしまった。
放課後とはいえ多くの生徒が残っている。新設だけが取り柄の新設校、運動部も文化部も、生徒が申請するまで存在しない。創部を望まれているものは、バスケ部だけではない。
他の生徒がささやき合っても、日向は撤回しなかった。小金井も口を結んで、花宮を見た。席の木吉は、ひとりだけで笑っている。伊月俊は、その隣の席の花宮を、じっと見下ろして口を開けた。こういうこと、と。
「俺らは本気でやるって決めた。マネがどうっていうんじゃなくて、やるからには本気でやって、日本一を目指す。
——
でも」
そして言葉を切った。
花宮が伊月を見上げた。
「俺も覚悟のうえだよ。本気なことはわかってた。木吉、自分で誘ったくせに、教えてくれたんだぜ。バスケ同好会をつくろうってやつらがいるんだと。
——
全裸で告るのはごめんだが、やる前から負けたときのことを考えるのもバカな話だろ」
「隣の席だもんな、花宮」
「そうだね、木吉」
「じゃあ」
「やるからには本気で、したい。と思うよ、俺も。これからよろしく。伊月くん、日向くん、小金井くん、水戸部くん」
木吉も。花宮は最後に、それを付け足した。
教室の友人グループは花宮を取り込むことなく、形を決めた。花宮は教室の片隅の席で独りで、弁当を食べて本を読む。クラスメイトとの会話の大半を事務的に済ませ、そして放課後にはバスケ部の練習のために体育館へ走るのだ。ゴールデンウィークを待たずして花宮は、それになる。
思い出して、伊月は形式的に質問する。
「確認までに、経験者?」
なぜか木吉が先に答えようとして、
「あっ、いた! あなたたち、放課後、暇よね?」
男子高校生六名が女子高校生の家で上半身を披露するのは、それから一時間ほど後の話。
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