柚鈴
2024-03-13 13:46:50
11446文字
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でぃあぷろ図書館イベント



第4話 ☂️🔥「「1」」

◇レイラ・カーティス

「そっち、どうですか?」
「それっぽいものはない、かな」
「そうですか」
「うん」
…………
…………
 また、沈黙が訪れた。
 さっきからずっと、こんな調子である。
 何を話せばいいか、わからない。
 普段のハレリは、戦闘も訓練も関係なくフウカのことばかり気にかけているから、よく考えなくても、ろくに話したことがないのである。
 ……かくいうレイラ自身も、ミアのことばかり気にしているから、お互い様といえばお互い様なのだけれど……。
「……姉さん、大丈夫かな……」
 独り言のように──否、実際に独り言なのだろう──ハレリが、そんなふうに呟く。
 その声色は、不安一色、といった様相で。
 ……先ほどのグループ分けのときを筆頭に、いつもそうなのだけれど──ハレリは、フウカに対して、非常に過保護だ。
 確かに、基本の身体能力や戦闘センスは、ハレリのほうが上である。
 でも、だからといって、歳上のフウカをそこまでして必死になって守ろうとする姿勢は、理解ができないとまでは言わないけれど、なんだか腑に落ちない部分ではある。
 このあたりをただ探索するだけなんて、さして危険があるようにも思えないのだけれど。
「ハレリは……どうしてそんなにフウカのことを守ろうとしてるの?」
 口に出すつもりはなかった。
 けれど、気づけば、そんな疑問を発してしまっていた。
 しまった、とまではいかないまでも、自身の行動に少し驚きつつハレリを見やれば、おそらく独り言に反応されるとは思っていなかったであろうハレリも、びっくりしたような表情をしていて。
 しかし、その顔はすぐに作り変えられる──呆れたような、じっとりとした半目に。
「……それ、レイラさんが言います……?」
「? なにが?」
「いや……レイラさんだって、ミアさんに対して過保護じゃないですか」
 あぁ、やっぱり。と、思う。
 やっぱり、そう見えているのか、と。
 そんなふうに納得しつつも、胸裡に不思議とふわりと感情が浮かびあがってくる感情がある。
 ……これが喜ばしいことなのかは、正直わからない。
 けれど──なんだか、うれしく思えた。
「……昔」
 と。
 ため息をつき、肩をすくめてから、それでもハレリは話してくれるようだった。……いや、そこまで目に見えてわかりやすく呆れ果てなくてもいいと思うのだけれど──そんなリアクションをとるほど、ハレリにはレイラが過保護に見えているのだろうか? やっぱり、なんだかうれしいな。
「昔、姉さんのことを守れなかったことがあるんですよ。姉さんには、二度と傷ついてほしくなんかない。だから、守るんです」
……そっか」
 それ以上聞くつもりはなかった。
 掘り下げるつもりはなかった。深掘りするつもりはなかった。深入りする気はなかった。
 レイラとハレリは──大事な人を、守る。
 それさえ遂行できれば、それでいいのだ。
 利害が一致するなら、グループでの活動だって協力する。
 それは一見、冷たい絆に聞こえるかもしれない。
 されどレイラは、少なくともレイラは、それも悪くない、と思えた。
……この建物……比較的、綺麗ですね。入ってみますか?」
「うん、そうだね。ミアが好きそう」
「あは……そうかもしれませんね」
 居心地の良さに身を委ねつつ歩いていれば、古びた建造物を発見した。
 古びた、と表現したからにはやはり廃れているのだが、それでも壁はまだ残っていて、その古さに趣と郷愁を感じられるような気がした。なんとなく、ミアが好きそう。
 ドアを開けばそこは、何もない空間──に、ぽつんと穴が空いている。
 その穴は決して空っぽなどではなくて、そこには。

「──階段?」

「みたい、ですね……地下に続いているっぽいですよ」
「うん。ミアたちに、連絡をとろうか。ここから先は、五人で探索したほうがいいかも」
「そうですね」
 ハレリの同意を受け、レイラは端末を手に取る。
 謎の地下へと続く階段。
 その響きに心を躍らせる幼い感性を、レイラは失ってしまったけれど──ミアがうれしそうに目を輝かせるところが思い浮かんで、思わず笑みをこぼした。