憂依
2024-02-17 22:44:46
20170文字
Public 供養シリーズ
 

供養③:これが俺らの愛の形/それが彼らの愛の形/これが僕らの愛の形(火緑)

書きかけのネタ供養シリーズ。うちの火緑の話。
書きかけの話の前書きで「どうでもいいですが、私の中ではうちの火緑はア○ヒスーパードライならぬ火緑スーパードライって呼んでます。全然うまくも面白くもないですね、ハイ。」とか書いてることからお察しの通り、あんまり馴れ合ってないけど一応付き合っているらしい二人というのが私の中の火緑像です。
かきかけすぎてやばいな、これ。高尾との話とか落ちをどうするつもりだったのか全く思い出せない。



これが僕らの愛の形

緑間が大学を卒業し、某一流企業に就職してから早数か月がたとうとしていた。
社会人としての生活にもだいぶ慣れ始めてきたとはいえ、やはりまだまだ戸惑うことは多い。
特に、緑間の人付き合いの悪さや他人への無関心ぶりは一時より改善されたとはいえ、まだまだ一般人と比べればだいぶ悪いものである。
そんな彼はその長身や容姿、加えて毎日持ち歩いているおは朝のラッキーアイテムの存在でかなり浮いていた。
高校や大学では、バスケ時代の相棒であり親友である高尾の存在もあってすっかり緩和されていたが、
加えて、研修期間が終わった時の新人歓迎の飲み会の席で起きたとある騒動により、緑間は
今日は会社の友人と飲みに行っていたため、普段よりも帰りが遅い。
最寄駅を降りて、人通りのほとんどない通りを一人歩く。

早く家に帰って風呂にでも入って疲れを癒したい。
そんなことを考えながら歩いていると、

――――その男は何の前触れもなく、緑間の前に現れた。

……げえ」
……な」

互いが互いを認識した瞬間、思わず両者の口から驚きと戸惑い、そして何より苦渋の言葉が漏れる。
そこにいたのは、緑間にとってひどく見覚えのあり、しかし。ここにいるはずのない男だった。

………………
………………

深夜の路上で、お互い無言のまま向かい合う二人の男。
いきなりの事態に混乱し言葉を失う両者だが、先に口を開いたのは緑間の方だった。

……なぜ、お前がここにいるのだよ」

あらん限りの悪態と暴言を何とか飲み込んで、そんな言葉を緑間は吐き出した。
不機嫌に顔がゆがむのも、眉間にしわがよるのも隠そうとせず、目の前の男を睨み付ける。
言いたいことは山ほどあれど、結局そのほとんどがこの言葉に集約されるからだ。

なぜ、アメリカにいるはずの火神大我が今この場にいるのか。


火神は緑間が高校時代にバスケで争った好敵手の一人である。
その長身から命中率100%の高高度3Pを放つ緑間に対し、火神は持ち前の跳躍力を生かしたプレイが得意で、緑間にとって火神の相性は最悪といってもいいものだった。
おまけに、お互い性格が合わないこともあって顔を合わせるたびに二人は幾度となく衝突をくり返したが、緑間が大学に入りバスケから離れてからはすっかり疎遠となっていた。
加えて、火神は緑間と違い、学生時代に培ったバスケの腕前をいかんなく発揮する職場……すなわち、プロのプレイヤーになっている。
しかも、プロバスケの最高峰であるアメリカで、だ。
人伝にしか聞いていない緑間だが、アメリカの大学に入学した火神はその二年後にマイナーリーグのとあるチームにスカウトされ、今度のドラフトではNBA入りするのではないか噂されているとかいないとか。
最も、火神が今何をしているのかなど全く興味のない緑間には、どうでもいい話であったから話半分に聞いてしかなかったが、火神はいまだにアメリカ暮らしのはずである。日本の、ましてや今自分が住んでいる街に現れようがないのだ。
しかし、現に火神は緑間の目の前に現れた。

「いや、それはむしろ俺のセリフっつうか……。なんでお前がここにいんだよ」
……俺は今この近くに住んでいて、家に帰るところなのだよ」
「はあ?! お前ここら辺に住んでんのかよ! ……つうか、それにしたってこんなところで会うとかどんな偶然だって」
「そんなことより、俺の質問に答える方が先だろうっ」

緑間の言葉に驚いて間抜け面を晒す火神に、思わずこめかみのあたりを押さえてしまう。
初めて会った時からそうであるが、どうにも火神とは話がうまくかみ合わないことが多い。
語尾が多少荒くなってしまうのも致し方ないだろう。

「あー、今シーズンオフだから日本に遊びに来ててよ。さっきまで近くで飲み会やってたんだ」
「答えになってないのだよ……! 俺は、なぜお前がここにいると聞いたんだ」
「いや、だから今シーズンオフだからこっち帰ってきたって言ったじゃんか」
「そういうことを聞いているのではない!!」

思わず強いものになってしまった口調にすぐさまハッとなり、周囲を見渡す。
もう深夜といえる時間帯。大声を出してよけいな注目を浴びるのは遠慮したいところである。
幸いにして、辺りに人の姿がないことを確認して思わず息を吐くと同時に、相変わらずのずれた物言いに、緑間は頭を抱えたくなった。

高一のバスケの地区予選で初めて対面した時から、火神と緑間はなにかにつけて反発しあうことが多かった。
性格がかみ合わないというのもあるし、火神のプレイスタイルが緑間の天敵だからだというのもあったかもしれない。
火神が自分をどう思っているのかなど興味はないが、緑間自身に関して言えば、緑間は火神のことを嫌っていた。

「つうか、お前本当に普通の会社員になったんだなー」

そんな緑間の苦悩など知ったことではないというように、スーツ姿の緑間を見て火神が唐突にそんなことを言い出した。

「それが一体なんだというのだよ」
「いや、お前のことだからもっと頭のよさそうな職業に就くのかと思ってたからなあ。後、普通に会社員やってるお前とか想像できねえ」
……それは他の奴らにもさんざん言われたのだよ」
「ま、もう何年も会ってなかったしなー俺ら。俺がアメリカに行って以来か? そんだけあれば人間変わるもんか」
「そうだな。貴様は何年たっても変わっておらんが」
……おい、それはケンカ売ってんのか?」
「売られてないと思ったのか?」

ふっ、と吐息交じりに口角を上げれば、今度は火神のこめかみに血管が浮かびあがる。
二つに分かれた眉を吊り上げて緑間を睨み付けると、何かを喋ろうとして口を開き……、大きくため息をついた。

「あー、やめだ。今酔ってるからよけいなこと言いそうだわ」
……それは、普段の貴様は失言をしないというボケのつもりか?」

緑間の悪態に、今度は火神は何も反応しなかった。
なぜか困ったような表情を浮かべながら頭をかくと、視線を明後日の方へと向ける。

「つーか、今日はやけにつっかかってくんな、お前。なに、さみしいの?」
……………………は?」

さみしい。
火神の口から出た言葉の意味が一瞬理解できずに、緑間は思わず固まってしまった。
一体なぜ、自分がそんな感情を抱くというのか。
そんな結論に至った目の前の男の思考が理解できず、緑間は二の句を告げなくなってしまう。
その緑間の姿を見て、一瞬遅れて自分が呟いたことを自覚し、今度は火神が顔をひきつらせた。

「あ、いや、違う。なんでもない。今のは忘れろ。……クソ、やっぱ酔ってんな。余計なこと言った。今日はもうさっさと寝よう。よし、そうしよう」

言い訳のように、誤魔化すかのようにそんなことを言いながら、火神は早足で前に進むと、緑間とすれ違う。
視界から消えた姿を追うように顔だけ後ろへ向ければ、火神は足を止めることなくそのまま進んでいっていた。

「俺は酔いも回ってきたしさっさと宿行くことにするから。それじゃあ、またな」

後ろを振り返ることもなく、何の未練もないかのように、火神は背中越しに手を振るう。
またな、といういつになるかもわからない再会の言葉だけを残して。



それは、ある暑い夜。
緑間が社会人になったばかりの頃の、七月半ばのある一幕の出来事。




* * * * * * *




緑間真太郎。
かつての学生バスケ界でこの名を知らない者はいなかっただろう。
帝光中バスケ部が生んだ五人の怪物、「キセキの世代」。
常人を絶する天才的才能を持った五人のバスケットプレイヤー。
その才能を余すことなく発揮して中学バスケ界を蹂躙し、高校に進学し五人がばらばらになってもその名は衰えることなく、むしろその実力をさらに磨きあげ全国にその名を知らしめた。

緑間はそんな「キセキの世代」のNo.1シューターとして持て囃され、その名に恥じぬプレイを示し続けた。
しかし、そんな彼は高校卒業と共にバスケを辞めた。
勿論、それまで生活の一部と化していたバスケを完全に捨てることなどできるわけがなく、今でも息抜き程度に軽くやることはあるが、彼が選手として公式のコートに立つことはもうないだろう。
大学進学に当たり、監督はもちろんのこと友人達にも大学でバスケを続けるべきだと強く引き留められたが、緑間はその全ての意見を跳ね除けた。
緑間の我侭、と言う名の我を通すことに関しての一切の妥協のなさは彼と深く関わっていればいるほど理解しているがゆえに、最終的には皆残念そうに、彼の引退を惜しんだ。
ちなみに、元々勉学に関しても優秀であった緑間は推薦で三年の半ばにはあっさりと大学入学を一足先に決め、全力を持って最後の大会であるWCに挑んでいたりするが、それはまた別の話である。
彼の頭の良さであれば職業など選り取り見取りであっただろうが、緑間は普通の会社員の道を選んだ。
それもまた彼の友人達をひどく驚かせたものだ。

そして、今日は久しぶりにそんなかつての友人達と集まっていた。
ある八月の終わりの、暑い夏の日。




「妹にさあ、いつの間にか彼氏ができてたんだよ……

かつてバスケにのみ情熱を費やしていた高校生たちは、今は皆成長し大人となって、それぞれ自分の道を進んでいる。
社会人として自分の生活を送る彼らが一堂に介する機会は少ない。
今回も久方ぶりの集まりということで各人近況を報告しあっていたのだが、その折高尾がそんなことを言い出したのが、そもそもの発端であった。

「夏休みってことで久しぶりに帰省したら彼氏出来たって……。しかも、四年くらい前から付き合ってたとかいまさら言われて……大学卒業したら結婚も視野に入れてるとか言われてさあ。いや意味わかんねえし! なにそれ?! なんで家族の中で俺だけなんも教えられてなかったの!? しかも今度園彼氏が家にあいさつに来るとかで俺どうしたらいいわけ? 反対すればいいのか賛成してやるべきなのか!?」
「高尾君はシスコンですからね。きっと、言えばお付き合いに反対されると思っていたんでしょう」

興味半分無関心半分といった面持ちで、お通しの枝豆を口に含みながら淡々とした口調で黒子が告げる。
今回は