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憂依
2024-02-17 22:44:46
20170文字
Public
供養シリーズ
供養③:これが俺らの愛の形/それが彼らの愛の形/これが僕らの愛の形(火緑)
書きかけのネタ供養シリーズ。うちの火緑の話。
書きかけの話の前書きで「どうでもいいですが、私の中ではうちの火緑はア○ヒスーパードライならぬ火緑スーパードライって呼んでます。全然うまくも面白くもないですね、ハイ。」とか書いてることからお察しの通り、あんまり馴れ合ってないけど一応付き合っているらしい二人というのが私の中の火緑像です。
かきかけすぎてやばいな、これ。高尾との話とか落ちをどうするつもりだったのか全く思い出せない。
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それが彼らの愛の形
高尾君から見た、どう見ても付き合ってないのに付き合ってるとお互いに言っている火神君と緑間君の話。
かつて、高尾和成は緑間真太郎のことが嫌いであった。
この感情は、おそらく中学時代に帝光中と対戦したことのある選手なら、誰もが一度は抱いたものだろう。
帝光中男子バスケ部に所属する五人の天才、通称「キセキの世代」の名は同世代の者なら知らぬ者はいない。
あまりに圧倒的で、あまりに傍若無人な天才集団。
試合に出れば全戦全勝、完全無敗。その華々しい経歴とは裏腹に、彼らに敗れ、その才能の差に打ちのめされてバスケの世界から去って行ったものも少なくはない。
高尾も、そんな帝光に敗れた敗北者の一人であった。
ただ、一つ付け加えるならば、高尾が破れたのは正確に言えば「キセキの世代」ではなく緑間真太郎である。
高尾のいた中学と帝光で行われた練習試合。帝光は高尾の中学を格下とし、二軍を送り込んでいた。
それに気分を害された高尾たちは帝光の二軍相手に善戦し、一時はリードすら奪うことが出来た。
それも、あの化け物が出てくるまでのこと。
帝光敗北の危機に、選手交代として投入されたのは二軍に同行していた一軍レギュラー、「キセキの世代」の一人であった緑間だった。
そのあとは、語るまでもない。
緑間真太郎の圧倒的3Pになすすべなく敗北し、高尾は彼へのリベンジを心に誓った。
しかし、夏の大会は帝光にあたる前に予選敗退し、結局その願いはかなうことはなく。
それならば高校で、と誓った矢先に緑間も同じ高校に進んでいると知った時は、思わず運命を呪いたくもなった。
まあ、それは今や昔の話。
高校で緑間真太郎と同じチームに所属することにはなったが、コートの外の彼は高尾が思っていたよりも面白い人間で、気づけば一か月もたたないうちにいつも一緒にいるようになって、今では良き相棒であり親友とまでなっているのだから、本当に人生とは何が起きるか分かったものではない。
しかし、それでも。
それは、あまりに予想外にして、想定の範囲外の出来事であった。
「ああ、そうだ」
いつもと変わらない学校の帰り道。当たり前のようにじゃんけんで負けて、リヤカーを漕がされている俺との世間話の合間。
まるで思い出したかのように、
「お前には言っておこうと思っていたのだが。この間、火神と付き合うことになったのだよ」
そんな、爆弾発言をかましやがった。
――――
それが彼らの愛の形
――――
キィィィィィ、と甲高い音と共にブレーキを握りしめ、リアカーが急停止する。
余りの衝撃発言に脳が思考を放棄して、緑間が何を言ったのかを受け入れることを拒否していた。
前後に何の脈絡もないくせに、あまりにも自然に言い放たれた言葉は、俺の脳みそに人生で最大級の混乱を起こしている。
いやいやいや、今この男はなんていった?
どう考えても俺の聞き間違いだ。そうだ、そうじゃなきゃおかしい。だって全てがおかしいのだから。
「おい高尾、急にブレーキをかけるな。危ないだろうが」
「真ちゃん、ごめん、その、ちょっとよく聞こえなかったんだけど。今、なんて言った?」
リヤカーの荷台部分に乗る真ちゃんを振り返り、恐る恐る問いかけた。ぜってー声震えてるよ。
今日も遅くまで残って自主練をしていたため、辺りはすっかり暗くなり、街灯の光だけが道路を照らしている。
大通りならともかく住宅街に入れば閑静なもので、この周辺にはオレと緑間の乗るリアカー以外に人影も射影も存在せず。
夜ということも相まって静かなものだというのに良く聞こえなかったとは我ながら言い訳がましいと思うが、それくらい、緑間の言ったことは簡単に受け入れられるものではなかった。
急にブレーキをかけた俺に批難するように睨んできた真ちゃんは、はあ、とわざとらしくため息をついた。
「
……
そうだな。バカなお前にもわかりやすいように言ってやる。お前もよく知っている誠凛の火神大我と、俺が、男同士だが、つきあうことになった。そういったのだよ」
さすが真ちゃん、頭いい。俺の逃げ道をことごとく防ぐ親切な説明に、さすがの俺もこれは理解せざるを得ないというか、理解させられた。
じゃなくて!!
俺の知らない火神さんでもなく火神と知らない誰かとでもなく実は真ちゃんか火神のどっちかがあり得ないけど女だったとかいうこともなく、マジで、火神と、真ちゃんが、付き合うことになった、だと?
「ごめん、真ちゃん。何がどうしてそうなったの。ツッコミどころ多すぎて俺何からつっこめばいい?」
「まあ、お前が驚くのも無理はないのだよ」
「というか、普通に十人中十人が驚くと思うけどな?!」
あの超がつくほどの朴念仁で生真面目で女性関係と縁遠そうな緑間に恋人が出来たというだけでも、十分驚きのあまり勢いで今はもう卒業した先輩達にメールを送ってもおかしくないくらいの事態なのに、その相手が男で、しかも天敵といっても過言ではない火神だと、一体だれが想像できただろうか。いや、いるわけがない。
むしろ予想できてた奴がいるのなら名乗り出てほしい。そしてどうして予想できたのかご教授してほしいくらいだ。
こっちはもう頭は完全に混乱状態だというのに、緑間はいつもと同じ表情一つ変えずに今日のラッキーアイテムである消臭剤を手持無沙汰に眺めていた。なんでそんな他人事なんだおい。
ひとまず、気持ちを落ち着かせる意味も込めて俺は再び自転車をこぎだした。
あまり止まりっぱなしだと交通の邪魔だし、帰りも遅くなってしまう。
しかし、付き合うにしてもなぜ男。なぜ火神。
例えば、仮に相手が男だとしても小さくて線が細くてきゃしゃで見た目が女の子にしか見えない
……
そんな相手ならまだ納得できる。だが、火神は緑間に比べれば小さいが俺より背が高い。というより、平均的男子高校生より圧倒的に高い。体つきもがっしりしてるし顔立ちだってワイルド系で、完全に男だ。
勿論、緑間が外見で相手を判断するような人間ではないのは俺もよくわかっているが、かといって火神の内面に緑間がひかれたというのも考えづらい。なにせ、二人の間にはよっぽど馬が合わないのか何かあるたびにいがみ合っているイメージしかない。
確かに、緑間は火神に対して何かと助言らしきものを送っていることはしばしばあった。その度に俺は「ツンデレかよー」とチャカしてきたが、まさかあれは緑間なりのアプローチだったのだろうか。
いや、緑間のツンデレが発揮されていたのは別に火神だけではない。そういう意味では俺だって緑間のツンデレらしい言動を何回も受けている。自分で言うのもなんだが、俺と真ちゃんはあまりに一緒にいすぎるので「お前らホモか」とからかわれたことは一度や二度ではない。
というか、朝の登校から下校で家に帰宅するまでほぼ俺と一緒にいるわけで、それほどの時間を真ちゃんと一緒に過ごしてきたのに火神に好意を寄せているなんて全く気付けなかったとは。いや、普通男が男を好きになってるとは思わないが。
そこまで考えたところで、はたと気づいた。
真ちゃんは火神と付き合うことになった、と言っている。
つまり、火神も真ちゃんのことが好きだったというわけで。
おいおいおい。真ちゃんから火神への矢印だけでも理解不能なのに火神も真ちゃんを好きだったとかまじで!? 全然気づかなかったけど!?
やばい、落ち着こうと思ってたのに謎が増えるだけだった。
とりあえず、目下一番の疑問は。
「
……
てか、そもそもだけど、真ちゃんってホモだったの?」
「そんなわけがないだろう。俺は男には興味ない」
俺の問いに、緑間は一切間を開けることなく言い切った。
自転車をこいでいるので後ろにいる緑間をうかがい知ることはできないが、その声にはどことなく苛立ちが感じられた。
うん、今のは「何をバカなことを聞いているのだよ」と緑間が思っている時の声である。
「いや、でも付き合ってるんだろ? 火神と」
「ホモ、ゲイというのは男を恋愛対象として見る人間だ。俺は
……
火神がたまたまそうだっただけで、男に興味などないのだよ」
「ああ、そうですか」
もしかして、俺は今惚気られたのだろうか。まさか緑間から惚気られる日がこようとは。今日は赤飯炊いてもらうべきだろうか。
じゃねえよ!!
なんで俺頭の中で一人ノリツッコミしてるんだっつうの!
「つうか、なんで火神なわけ? 俺ずっと一緒にいたけど、真ちゃんが火神を好きだったとか全然気づかなかったわ」
「
…………………
」
「黙るのかよ!」
まさかの黙秘とは。
自分から話題を振っといて話を膨らませるのは拒否するなんてひどいぜ。
それとも、さすがの真ちゃんも色恋沙汰を語るのは恥ずかしいのだろうか。そう考えると、思わず俺の口元がニヤニヤと歪んでしまう。
「じゃあ、真ちゃんっていつから火神のこと好きだったの?」
「
……
いつ、というのなら。最初に、あいつに負けた時だ」
「
………………
ええええええ?!」
思わずブレーキを踏むのも忘れて振り返った。
夜の暗闇で正確には判別できないが、緑間は恥ずかしがる様子もなくいつもの表情のままで、さっきニヤニヤしたのに損したじゃねえか、という風に思ったりもしたのだが、ちょっとまて。
「最初に負けたって
……
一年のIH予選!? 一年近く前じゃねえか!」
「おい、前を向いて走るのだよ。危ないだろうが」
「いや注意するのそこ!?」
こっちがさっきから驚きまくっているというのに、真ちゃんはどこ吹く風だ。なんでそんな平静なんだよ。驚いてる俺が悪いのか。
とりあえず、言われたとおりに前を向く。俺が事故って真ちゃんを怪我でもさせたらたまらないしな。
……
しかし、そうか。
真ちゃんがそんなに長い間火神のことを好きだったとわ。
ということは、さっきは違うと思ってたけどやっぱり今までの数々のツンデレ行動は真ちゃんなりのアプローチだったのだろうか。わかりづれえよ。普通の人にはまず伝わらねえよ。俺ならともかく火神に伝わってたとは思えねえよ。
そんなことを考えて、すぐに思い直した。
直接か間接かはしらないが、そんな緑間の思いが伝わったから二人は付き合いだしたのだろう。
いや、もしかしたら伝わってなくて、火神の方が告白してきたのかもしれない。
そういや、どっちから告白したんだ。
そんな時、丁度赤信号に引っかかった。ブレーキをかけて停止すると、ちょうどいいとばかりに後ろを振り返って、
「なあ、それってどっちが先に告白したんだ?」
「
……………………
ど、っち?」
その時。
それまでいつも通りの平静を保っていた真ちゃんが、初めて表情を崩した。
顎に手を当て眉間にしわを寄せる。それはまるで何か考え事をしているような仕草で、事実、緑間は考え込んでいた。
いや、付き合うことになったんだろ? どっちが告白したかを聞いてるだけなのに、何を悩む必要があるのだろうか。
また沈黙を決め込むか決めてるのかとも思ったが、それにしては一番最初のリアクションが変だ。
「
……
そう、だな。火神からだな、あれは」
「ちょっと待って。なにそのあいまいな言い方。さっきの沈黙もそうだけど、本当に火神と付き合うことになったのか?」
「当たり前なのだよ。
……
まあ、そうだな。一般的な交際の始まりとは呼べないかもしれないが」
「一体どういう経緯で付き合うことになったんだよお前ら」
「ノーコメントだ」
「あ、ずっりー! また黙秘かよ!!」
「それより高尾、青になっているのだよ」
「え、あ」
言われて前を向けば、確かに信号は青になっている。
真ちゃんへの追及を一時中断し、俺は再び自転車のペダルを回し始めた。
結局、その後真ちゃんは俺の質問をことごとくスルーし、真ちゃんの家に到着してしまったので、俺はそれ以上の情報を得ることはできなかった。
その後の真ちゃんは、驚くくらいに何の変わりもなかった。
今までと同じように学校のある日はおはようからおやすみまで俺といっしょだし、俺の見る限り火神と携帯で連絡を取り合っているそぶりを見せない。
元々真ちゃんは必要事項の連絡ぐらいにしか自分から携帯を使わない人間なので、携帯をいじるそぶりがあればすぐに目に留まる。
まあ、俺も真ちゃんに来てるメールを全部把握してるわけじゃないので、俺の気づいてないうちにやり取りしている可能性も無きにしも非ずなのだが。
真ちゃんが火神の話を口にすることはなかったので、俺も火神とのことについて真ちゃんに深く追及することはなかった。
真ちゃんは俺だから信用して話してくれたみたいだし、男同士の恋愛なんて普通は嫌悪を抱くものだろう。
おおっぴらに話す内容ではないから話せる場所も限られてくるし、
ただ、たまに「火神とはどうなのよ?」と聞くと、「特に変わりないのだよ」と毎回同じ言葉を返された。
まあ、会う時間もほとんどないだろうからそんな進展もしないだろうな、と楽観的に考えていた俺は、後日、いかにその認識が甘かったのか。
……
いや。
いかにその認識が“正常”であったかを、理解させられる羽目となったのだ。
****
再び、夏が始まろうとしている。
インターハイ。
去年は予選リーグで誠凛に敗退してしまった俺達秀徳だが、今年の組み合わせは桐皇、誠凛、正邦、霧崎第一といった都内の強豪校とは予選リーグでは当たらないものとなっていた。
そのせいもあってか危なげなく予選リーグを突破。こうして決勝リーグを迎えることとなった。
決勝リーグに上がったのは、俺達秀徳のほかに誠凛、桐皇、そして霧崎第一であった。
ブロックが異なれば会場も違うので実際に目にしていないが、スカウティングでプレイは目にしている。
誠凛は木吉が抜けたとはいえ去年のメンバーはほぼ残っているし、青峰のいる桐皇も要注意だ。
「俺ちょっとトイレ行ってきまーす」
「試合もうすぐだからな、早くすませろよー!」
「へーい」
主将の許可をもらって会場内のトイレへと足を進める。
ちゃんと出掛けにトイレは済ませたはずだが、暑いからってスポドリをがぶ飲みしたのがまずかったか。
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