Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
雨音
Public
安寧の灯
Clear cache
【あずまこ小説集】
文字数少なめ(500~1500字程度)のあずまこ小説をまとめました。
1
2
3
4
5
6
【新たな宝物】
真琴は手のひらに乗るビー玉をじーっと見つめる。ころんとしていて透き通っている、まるで飴玉みたいだ。
元々リビングの棚に置かれていて、毎日のように眺めていたら安栖
あずまい
から貰ったのだ。町のよろずやで買ったものらしい。
「
……
きれい」
幼い頃の真琴は、いや、安栖に出会うまではおもちゃを買い与えられたことは一度もなかった。見たことはある。しかしお金を持つことを許されていなかったため、欲しくても買うことができなかった。かといって両親に「買ってほしい」とねだるのもご法度だった。そうしたら不機嫌にさせるのは目に見えていたからだ。
しばらく見つめてから、真琴はゆっくり机の上にビー玉を置く。転がっていかないかを確認してからその場で膝をつき、机の下から大きな長方形の箱を引っ張り出す。真っ白な箱を彩るようにシールやマスキングテープがぺたぺたと貼られている。
蓋を開ける。中にはいろんなものが丁寧に整頓された状態で入っていた。万年筆、ノート、手紙、シール、双眼鏡
……
などなど。
これらは全て安栖に貰ったものだ。
家の中にはポスト風の小さな箱が設置されていて、そこに欲しいものを書いた紙を入れると、後日安栖にプレゼントされる。直接手渡しで貰ったり、机の上に丁寧にラッピングされた状態で置かれていることもある。
そうやって貰ったものはこの箱にしまうことにしている。無くさないように、度々開けては眺めるために。
空いている空間にころんとビー玉を入れる。本当は机に飾って毎日眺めたいのだが、小さいから無くしたら見つからなさそうで怖い。でもこんなに綺麗なのに箱にしまってしまうのも何だかもったいない。どうしたものか。
「
…………
そうだ」
真琴は思いついたように顔を上げる。机の引き出しからメモ用紙とペンを取り出し、さらさらとペン先を滑らせる。書き終わってメモを畳む。これをあのポストに入れよう。
真琴は自室を出るとリビングの本棚に設置されているポストへ向かう。畳んだメモ用紙をきゅっと握りしめ、ポストの口へ投函する。
「お願いします」
手を合わせて、目を閉じる。あとは待つだけだ。
…………………………………
翌日。学校から帰り自室に入ると、机の上にガラス製の小瓶が置かれていた。昨日メモ用紙に書いてリクエストしたものだ。
「ありがとう」
願いを叶えてくれた安栖に心の中でお礼を言う。もちろん後で本人にも直接お礼を言う。
早速箱からビー玉を取り出し、小瓶の中に入れる。カランコロンと涼しい、控えめな音が鳴る。
椅子に座り、ペン立ての横にビー玉入りの小瓶を並べる。それだけで何だか机の上が華やかになった気がした。
以前、学校の保健室でドライフラワーが入った小瓶を見たことがある。他にも様々な色の石が入った小瓶もあったし、生徒からお土産で貰ったという貝殻が入れられている小瓶もあった。ベッドで横になりながらそれらの小瓶を見ていると心がほぐれていったのを今でも覚えている。
実際に目の前にある小瓶を眺めていると心が休まるのを感じた。
これならどこかに転がっていって無くす心配も必要ない。
「
…………
これから、よろしくね」
物にも命が宿っていると安栖が言っていたのを思い出して、声をかける。
するとビー玉が応えるようにキラリと光った気がした。
1
2
3
4
5
6
広告非表示プランのご案内