吾妻
2023-12-31 22:28:41
10125文字
Public アークナイツ
 

Short Story log03

SNSなどに投げ込んでいた短い話のまとめです。
基本的にいちゃついています。
お相手がバラバラですが、それぞれ別の世界線の話ということでひとつ……


送り猫は送り狼になりたくない

a.m.1.25 音声記録開始

(ドアの開閉音)
(やや不規則な二つの足音)

……ほらドクター、部屋着いたぜ。まだ起きてるか〜?》
――……
《え? 何? 端末? ダメだって、仕事はもう終わり。今日はもう寝んの。……ほら、マスク取って。上着も。とりあえずどっちも机の上置いとくからさ。あとは……このへんに着替え……

(クローゼットを漁る音)

《あったあった。白衣自分で脱――ぐのは無理そ? じゃあとりあえずベッドに座っ――あっこら! まだ寝んなって!》
……寝ろ、だの、寝るなだの……一体、どっち、なんだ……
《そりゃ徹夜続きだったんだから寝て欲しいけどさ、着替えないと寝苦しいじゃんか? まだ横になるなよ。とりあえず白衣は脱いで》

(ファスナーを下ろす音と衣擦れの音)

……ソレも俺が外したほうがいい? しょーじき、ソレ外すの手伝うとそういう気分になるからイヤなんだけど……あー、わかったって、ちょっと待って――

(ホックを外す音)

……肩紐から腕抜いて。んで、こっち着て。……もー、ボタン掛け違えてるじゃんか。っと、これでよし。これ以上は手伝わないかんな。下は自分で着替えて……って、なんでむくれた顔すんだよ。これ以上手伝ったら、ナマゴロシの俺が可哀想じゃんか》

(衣服を着脱する音)

《はいはい、よくできました。じゃあ後は寝るだけな》

(スプリングの軋み)
(寝具を捲り上げる音)

――……
《ん? 何? ――ハァ? ダメだって。今日は添い寝はナシ! ベッドが狭いと、ドクターだってちゃんと休めないだろ?》
《フェイ、スト……
………………

(盛大な溜息)

……次の休み覚えてろよ。ぜってー三倍返ししてもらうかんな。……そっち、ちょっと寄って》

(スプリングの軋み)

《ドクター、こっち。頭。そ、俺の腕の上乗せて。オッケー、ほら寝るぞ》

(ぽんぽんと背を叩く音)

(静かな寝息)

……寝んの早。疲れてんのに無理ばっかするから……。ってか腕ほっそ……ちょっと力入れたら折れんじゃねーの?》

(静かな寝息)

……

…………いい匂いするし。やっぱ俺ナマゴロシされてんじゃん。…………今ならちょっとくらいこのへん触っても………………ダメだよなぁ…………はぁ…………

(かすかなリップ音)

……今日はこれで勘弁してやるか。おやすみ、ドクター》

a.m.1:43 音声記録終了


            *


 徹夜などするものではない。
 そんなことは、誰に言われなくてもわかっている。が、時には無理をしなければ終わらない仕事もある。
 とはいえ、無理をした翌日はとにかく起きるのが辛い。
 眠りの中に割り込んできて、徐々に存在感を増してくるアラーム音に顔を顰めつつ、身じろぎをすると――
……まだ早いじゃんかー……
 むぎゅ、と温かくて弾力のあるナニカが顔に当たる。その落ち着くようで落ち着かない感触を、ドクターはよく知っていた。
 〝自分の胸板〟にドクターの頭を押し当てる形で抱き込んだ男は、毎朝同じ時間に鳴るアラームを慣れた手つきで止めてしまった。
「もうちょっと寝よ?」
 成人男性らしからぬ甘えた声でそう言って、ステインレスは恋人の長めの前髪をかきあげて、啄むようなキスを落とす。
……なんで、君がここに……
「ドクターが帰してくんなかったんだろ? 添い寝しろって言ってさ」
……
 そのようなおねだりを、したような、していないような。記憶は曖昧だ。
 寝ぼけた頭では思考も難しいし、逞しい胸元に抱き寄せられて頭を撫でられていると、どんどん眠くなってくる。
「安心していーよ、仕事には間に合うように起こすからさ。……だから、もーちょい独り占めさせて」
 快活な男には珍しく、その声には掠れた色気と独占欲が滲んでいたので。
……じゃあ、お願い」
 再び擦り寄ってくる睡魔に抗わず、身を委ねることにした。


【終わり】