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Hannigramクロスオーバー掌編



 アダムはかわいい。僕のことじゃなくて猫のことだ。僕の恋人のルーカスはオスの猫を飼っていて、彼の名前はアダムという。グレーのゆるやかにウェーブした毛並みをもった、小さくて甘えん坊の仔猫だ。

 かわいいっていう言葉は、なんだかとても主観的で伝わりづらいような気がする。感情を表す言葉は全部そうだ。だからもう少しわかりやすくいうと、僕はアダムを見ていると、そうっと抱き上げて、膝の上にのせて、彼が嫌がらないあいだはずっとやさしく撫でていたいっていう気分になる。知ってる? 猫の身体はとても柔軟で、抱き上げる瞬間はぐんにゃりするんだ……みんなはとうの昔に知っていることなのかな。

 僕は動物を観察するのがとても好きだけれど、動物のほうが僕を好いてくれることはあまりなかったんだ。父さんがまだ生きていたころ、よく言われた。「お前の怯えが相手に伝わってしまうんだ、怖がらなくていいんだよ」って。だけど自分の感情をコントロールするのは僕にとってひどく難しいことで、だから動物への僕の関心はいつも一方通行だった。

 アダムの場合も最初のうちはそうだった。アパートメントの隣の部屋に越してきたルーカスが、挨拶のあと、僕の名前を聞いた瞬間に「なんて偶然だ」って声をあげて、それをきっかけに僕たちは部屋を行き来するようになったのだけど――こういうとき「アダムは僕らのキューピッドだ」って言うんだよね――初めて会ったアダムは僕に抱かれるのを全力で拒否していた。しがみついたアダムの爪がルーカスのケーブルニットの編み目に引っかかって、服はすっかり伸びてしまって、だけどルーカスははにかむように笑いながら「彼はシャイなんだ」って言った。「僕もそうだ」って返すと、「君たちには共通点が多いね」ってルーカスはまた笑って、ゆっくり仲良くなればいいと言った。「そうしたい」って僕は答えた。

 その言葉のとおりに、僕たちはとてもゆっくりと仲良くなった。僕たちって、つまり、僕と猫のアダムとルーカスのことだけど。今では僕たちはひとつのベッドで眠る。

 だけど毎週の金曜とたまの――一か月に一度くらい――水曜の夜は例外で、アダムはリビングのペットベッドで眠ることになっている。僕とルーカスがセックスをするからだ。シャワーを浴びたあと、キスを始める前にルーカスはアダムを寝室の外に出してしまう。僕はそんなことをしなくてもいいと思ったのだけど、ルーカスが「お願いだから」と言ったので、理由はわからないけれどそうしている。

 最初、アダムはさみしがって力リカリとドアを引っ掻き、甘えた声で鳴いていた。そのせいかルーカスのペニスはなかなか勃起しなくて、僕たちは長いペッティングだけでことを済ませた。どちらにしろ僕には男性との性交経験がなかったから――なお、女性に関しては一人との経験がある――挿入を伴わないセックスで終わるのは、誰のせいでもなかった。

 いいニュース。最近になって、アダムは部屋を追い出されても鳴かなくなった。どうやら僕らが相手をできないときは外に遊びに行くようになったみたいだ。過保護なルーカスはそのことをとても心配していて、これは悪いニュースになるのかな。

 もうひとついいニュース――これで合計はプラスになる。僕はアナルセックスを覚えて、前立腺の刺激だけでオーガズムに達することができるようになった。

 僕には愛するという言葉の意味が正確にはわからないけれど、僕のお腹の中でルーカスが射精するとき、悲しくないのに涙が出る。ずっとそのまま抱き合っていたいような気もするし、もう一度声が出て止まらなくなってしまうくらい突いて欲しいとも思う。わけがわからないけれど、嫌な感じじゃない。全然そんな感じじゃない。そんなとき、ルーカスが何度も耳元で「愛してる」って囁くから、僕も「愛してる」って返す。今度はそんなに間違っていないと思う。