Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ナガレ
2022-08-24 18:12:52
8991文字
Public
Clear cache
SSまとめ(その4)ぶぜまつ
すべてページメーカーで作って上げたもの、もしくはポイピクからの再録です。(メイクアップアーティスト豊前※現パロ、桃を貰った松井、細川江二振りの七夕、リップクリームの話、ワンライ企画作品)
1
2
3
4
5
【白鳳桃】
貰った桃を独り占めしようとした松井と。
熟しすぎてしまったからあげると言われ、桃を二つ貰った松井は途方に暮れていた。丸い桃はどちらも甘い香りを放ち、果皮越しでも十分に柔らかい。今日明日のうちに食べないと傷んでしまいそうだ。しかし残念な事に、今は皆出払っている。少しすれば誰か戻って来るかもしれないが、それまでは誰もいない。うーん
……
と暫し考えた松井は、小さく頷くと厨に向かった。その表情はどこか楽しそうだった。
もしかしたら誰かいるかもしれないと思っていたが、幸か不幸か厨には誰もいなかった。夕餉の下ごしらえにはまだ早い時間だからだろうか。腕まくりをした松井は包丁とまな板を借りる事にした。
まずは桃をさっと水で軽く洗って産毛を落とす。水気を切ってまな板の上に置くと、桃の割れ目に包丁を入れた。
……
思ったよりも柔らかい。うっかり力を入れ過ぎてしまわないように気をつけないと。先に全て剥こうか、それとも切ってから剥こうか。誰かと分けるなら等分してから剥いてもいいが、今は松井だけだ。刃物の扱いには慣れている。松井は桃を手に取ると、刃元の部分を使ってするすると皮を剥いた。桃色の桃は皮を剥かれて白くなった。
「
…………
」
誰も、見ていない。松井には一度やってみたかった事がある。真ん中の種を避けるようにざっくり適当に素切りすると、松井はそのまま齧りついた。
「うん。甘い」
やわらかな果肉としたたる果汁を独り占めしている。上機嫌の松井は残りも種だけ落としてそのまま齧りついた。
桃はあっさりと松井の胃の中に消えた。舌の上で味わうよりも早く胃に落ちてしまった。しかしまな板の上にはもう一つ残っている。どうせこの後は事務仕事に戻らねばならないのだ。糖分は栄養だ。二つとも松井の貰ったものだから、もう一つ食べたって怒られまい。松井が桃を貰った事は誰も知らないのだから。
とは言え、折角だしもう一つは味わいながら食べよう。器に入れて部屋に持って行ってもいい。松井はガラスの器を借りる事にした。あと、爪楊枝も貰った。
先ほどと同じように皮を剥いて割れ目に包丁を入れると、今度は等分に切り分ける事にする。まずは一か所切れ目を入れて、一切れ目。次に種を避けるようにしながら二切れ目を
――
「松井?」
突然背後から声を掛けられた松井の手に思わず力が入る。あ、と思った時には遅く、二切れ目になるはずだった桃は潰れていた。
「豊前
……
」
「悪ぃ」
声を掛けてきたのは外から帰ってきた豊前だった。松井を探していたのか、それとも偶然厨に立ち寄ったのかはわからないが、松井の姿を見つけたので声を掛けたのだろう。気づかなかった自分も悪いからここはお互い様だ。
「気づかなかった僕も悪かった」
そう言うと松井はうっかり潰してしまった桃を口にした。この桃も甘くて美味だ。思わず頬が緩んでしまう。指先から垂れそうになった果汁を慌てて舐めると、松井は豊前の視線に気がついた。
「
……
はい」
ついさっき切り分けたばかりの一切れ目を摘まむと、松井はそのまま豊前の口元に持っていった。意図を察した豊前がぱくりとそれを口にした。
「甘ぇっちゃ」
豊前がもう一つとねだるので、仕方ないなぁと松井はもう一切れ切って豊前に差し出した。ついでに指まで食べられそうになったので、そこは睨めつけておく。器を用意したけれど、出番は無さそうだ。豊前がもぐもぐと咀嚼している傍らで、松井も自分の分を一切れ分けて口に放り込んだ。
これで残り半分。全部食べていいよと、松井は種だけ器用にくり抜いた。しかし豊前は手を出さない。手が果汁でべたつくのが嫌だから楊枝が欲しいのかと思ったが、それも違うみたいだ。
……
そういう事か。包丁を置いた松井が建前だけのため息混じりで、濃厚な甘さを漂わせる熟れた実を豊前に差し出した。松井の行動は正解だった。
「
……
ごちそーさん」
「おそまつさまでした」
無言で完食した豊前の口の端に果肉がついている。松井はそれを指で拭い取ると、誰も見ていないしまあいいかと口にし、まな板と包丁と使わなかったけれど果汁が飛んでしまったかもしれないので器を洗い、最後に自分の手も洗った。
濡れた手を備え付けのペーパータオルで拭くと、松井は豊前を見やった。働かざるもの食うべからずというわけではないけれど、豊前も食べたのだから。
「暇なら仕事手伝って」
松井の仕事イコール細かい字がたくさん書かれた書類。松井の部屋に散らばる書類を想像した豊前が露骨に嫌なそうな顔をした。
「君も食べたよね」
「わーったよ」
おやつ分は働けと松井が暗に告げると、豊前は仕方ないなと了承した。
「あと一息ってところなんだ。今日中に終われば明日は非番にできる」
明日の豊前は非番だ。松井の言いたい事を豊前は正しく理解した。そういう事なら手伝わないという選択肢は無い。ご相伴にも預かった事だし、ここはしっかり働こう。目標は夕餉までに、遅くとも就寝時刻までに松井の仕事を終わらせる事。豊前が手伝えばいける。そうでなければ手伝えなんて言ってこない。
二振りは並んで厨を出ると、松井の部屋に向かった。
1
2
3
4
5
【Wavebox】
https://wavebox.me/wave/dt3sbq0apzlnkkwl/
↑ Waveboxです。匿名メッセージを送ることができます。何かあればどうぞ!
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内