ナガレ
2021-05-15 21:27:27
12798文字
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彼方の呼び声(ぶぜまつ)

8月インテでコピー本(ペラい)として出せたらいいなと思ってる、ボーイミーツガールぶぜまついIF話。べったー掲載分は下書きなので、ここから加筆修正入ります。※独自設定多め。


時空の向こうにあったものは、綺麗なものに溢れた世界。僕達の生きる荒れ果てた世界とは大違いだ。この世界も一度歪んでしまえば、滅びを待つ世界に変わってしまうのだろう。もし歪んでしまったら、きっと僕達と同じ事を考える。歪みには歪みをぶつけて戻すしかないと。いたちごっこ、堂々巡り。いつまで経っても戦いは終わらない。
ぼんやりとした薄暗がりに覆われた、どうしても捨てきれないあの世界。その薄暗がりを払う方法があるはずだ。あの向こう側には月が、星が、太陽が、明るいものが隠れている。薄暗がりが晴れれば大地だってきっと豊かさを取り戻す。一打刀の絵空事、戯言だと切り捨てられてもいい。僕はそれを伝えたい。
(戻らなければ……
立ち上がろうとしたけれど、体に力が入らない。頬に湿った土が触れて気がついた。――そうか、僕は破壊されたのか。
物音はどこからも聞こえない。戦闘が終わり、敵も味方も引き上げた後だった。破壊された僕は捨て置かれたのだ。じきにこの体は砂塵となって消える。消えたところで、必要なものは刀種と数。破壊された個体の事など誰も気に留めない。でも、僕には名前がある。
(名前、何だったけ)
しばらく呼ばれていないから忘れてしまったよ。思い出したいけれど、時間が無い。手や足先の感覚も無くなってきた。もう目は開かない。頭の中に霞が掛かってきた。早く、早く思い出さなければ。

松井。

そうだった。彼の与えてくれた名前はまついごう。その五音を少しだけ短くして、僕は「まつい」と呼ばれた。消える前に思い出す事ができてよかった。

*****

豊前は夢を見た。暗闇の中に松井がいて、じっとこちらを見ている。折れた松井はもうどこにもいない。だからこれは夢だと豊前はすぐにわかった。じっとこちらを見ている松井の足下にはあの日流した花があった。ちゃんと松井の元まで流れ着いてくれたらしい。よかった。
花に気づいた松井が拾い上げた。丈夫なものを包んでくれと言ったからか、花束は崩れていなかった。松井の口元が小さく動いた。何と言ったのだろうか。豊前には聞こえなかった。

……夢か)
二度と彼に逢ってはいけないと決めたのは、歴史を守るために生まれたという己の存在意義を捨ててしまいそうだったから。だからこれ以上逢瀬を重ねてはいけないと決めたのだ。そんな松井と夢の中で再会した。
あれは何か意味のある夢だったのだろうか。起き上がった豊前は大きく伸びを一つすると、床の間の刀掛けを見た。端に転がる自分の本体。刀掛けには松井江。いつもと何も変わらない。――いや、違う。
「まさか……!」
違和感と言えばいいのだろうか。何がどう違うかなんてうまく言えないけれど、確実に違うのだ。。豊前は松井江を掴むと、審神者の居室――ではなく、謁見の間に向かった。審神者もきっと気づいている。空っぽだった松井江に魂が宿った事に。
廊下を全速力で駆ける豊前を咎める者はいなかった。駆け抜ける豊前の手に握られた松井江、それの意味するところを皆知っているからだ。
「主!」
「君も気づいたみたいだね」
すでに審神者は謁見の間にいた。豊前は審神者に松井江を渡した。今すぐ顕現の儀式を行ってほしいと、言外に審神者をせっついた。しかし審神者は、身支度を整えてきたらどうかと苦笑で返すだけだった。起き抜けのその格好で対面するのはいかがなものか。
審神者に指摘され、豊前はもさすがにこれは無いなと思った。疾風の如く廊下を引き返す豊前。途中で篭手切とすれ違った。
「篭手切!」
「りいだあ?」
「部屋に全員集めとけ!松井江が目覚める!」
……はい!」
それを聞いた篭手切もまた、廊下を駆け抜けていった。朝から畑仕事に勤しんでいる桑名を呼びに行ったのだろう。篭手切も松井江の顕現を待ち侘びていた。彼には江の者としての繋がりだけでなく、細川家の縁もあった。
布団を上げるのも、脱ぎ散らかした寝間着を片づけるのも後だ。戦闘衣装を身に着け、豊前は再び謁見の間に走った。
「待たせた!」
「では、始めようか」
顕現に立ち会う近侍は豊前。松井江を手に駆けて行く豊前を見た元々の近侍は、何も言わずにその任を豊前に譲った。この本丸の者なら誰もが知っている。江の者達、とりわけ豊前がどれだけ「この松井江」の目覚めを待っていたのかを。
刀剣男士の松井江が今ここに――

「郷義弘が作刀。名物、松井江」

桜花に似た花弁が舞い、一振りの刀から新たな命が生まれた。顕現の口上を述べると、生まれたばかりの命、刀剣男士・松井江は審神者の後ろにいた豊前に視線を向けた。豊前には一目でわかった。――松井だ。豊前の知らぬ所で折れた彼は、巡り巡ってこちらの世界に転生したのだ。
豊前はこの松井江があの松井であると確信している。そうでなければこんなにも惹かれるわけがない。豊前が松井を忘れた事は無い。しかし松井が覚えているとは限らない。覚えていたとしても、彼にとって時間遡行軍の一員であったという事は忌まわしき記憶で、忘れてしまいたいものという可能性だってある。敵だったはずの刀剣男士として生まれ、戸惑っているかもしれない。
一体何と声を掛ければいいものか。松井の心境を惟る豊前。先に口を開いたのは松井だった。記憶の片隅から決して消える事の無かった、緑の混じった青色の瞳。松井がじっと豊前を見つめ、おもむろに尋ねた。

「君の名前を教えてくれないか」


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ここから加筆修正していくけど、大筋はこんな感じ。


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