ナガレ
2021-04-30 20:18:23
9266文字
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SSまとめ(その1)ぶぜまつ

すべてページメーカーで作って上げた小ネタの再録です。(名前を書く話、軽装ヘアピンの話、雪の夜の話、片想いの話、赤い糸の話)


【雪の夜】
松井江フライング実装一周年だったもの。当本丸の豊前は寒いのが苦手な個体。


「あ、雪だ!」

短刀の誰かが大きな声をあげたのを皮切りに、あちらこちらから襖や障子の開く音が聞こえてきた。松井江もその一人で、そっと自室の障子を開けて廊下に出た。暗闇の中を、廊下の灯りに照らされた白い粉雪がはらはらと舞っている。粉雪は止みそうにない。朝には庭が白く雪化粧に染まっていることだろう。
同郷の雅を愛する打刀ではないが、夜の粉雪には風情があると思う。松井はもう少し初雪を見ていたかったが、部屋の中から「寒ぃ……」と聞こえてきたので、苦笑とともに障子を閉めた。今夜は一段と冷え込みそうだ。掛布をもう一枚出そうか。
そういえば、ここに来た時も雪が降っていた。あれからもう一年が経ったのかと思うと、松井は感慨深くなった。

*****

真夜中、松井はふと目が覚めた。元なら夜中に何度か目が覚める体質なのでいつもの事だ。今夜は部屋の中も本丸も不気味なくらいに静まりかえっている。まだ雪は降っているのだろうか。障子を開けて外を見てみたいが、腹にしっかりと回された逞しい腕がそれを許してくれなかった。
腕の持ち主は豊前江だ。夕べは彼と同じ布団に入った。というよりも、寝ようとしたら豊前が入り込んできた。二つ並べて敷いた布団のうち、一つは使われずに空っぽのままで冷え切っている。
松井は豊前にしっかりと背中から抱き込まれていた。完全に湯たんぽ兼抱き枕だ。寒いのが苦手だとは聞いていたが、まさかここまで苦手だとは思わなかった。
雪が舞うような冷え込みに我慢できなくなったのだろう。これからもっと寒くなるというのに、豊前はこんな調子で大丈夫なのだろうか。松井は少し心配になった。

「うーん……松井?」

松井につられて目を覚ましたのか、背後でもぞもぞと豊前が身動いだ。起こしてしまったのかと思ったが、寒い……と呟いているので、どうやら寒さで目を覚ましたらしい。

「寒いの?」
「少し……
「それならこっちの方がいいと思うよ」

松井は豊前の腕の中で体の向きを反転させた。あぁ、やっぱり。はだけているから寒いんだと、寝ているうちに開いてしまった寝間着にしている浴衣の襟元を直してやった。そのまま松井が腕を伸ばして豊前の背中に回すと、二振りは自然と向き合って抱き合う形になった。

「あったかい?」
「そーだな……

完全に目が覚めてしまった松井と違い、豊前は半分夢の中だ。このまま放っておけば、すぐに寝息が聞こえてくるだろう。しかしそれでは面白くない。「そっち行っていーか?」って聞いてくるから、てっきり――。松井は伸ばしていた脚を豊前に絡ませた。

「僕、ちょっと期待したんだけど」

密着するぐらいに体を寄せて、そのまますすと擦りつける松井。敏感なところに擦りつけられてさすがに豊前も目が覚めたのか、びくりと体が跳ねた。それに気をよくした松井の膝が豊前の寝間着の裾を割った。煽るようにわざとらしく素足同士を絡ませ、背中に回していた腕をゆっくりと動かして、豊前の顔を両手で包む。
暗闇の中でも映える豊前の赤い瞳と目が合えば、ねだるように耳元で吐息混じりに一言。

――だめ?」

ばさりと掛布が大きく波を打った。松井があと小さく漏らした声は吸い込まれて、雪の夜に消えていった。

――――――――――
「期待してたんだけど」と煽る松井が書きたかった。

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