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ナガレ
2021-04-30 20:18:23
9266文字
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SSまとめ(その1)ぶぜまつ
すべてページメーカーで作って上げた小ネタの再録です。(名前を書く話、軽装ヘアピンの話、雪の夜の話、片想いの話、赤い糸の話)
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【例のヘアピンについて】
松井の軽装を見て衝動的に書いたもの。豊前視点です。
主が「桑名と松井の軽装を仕立てるんだ」と、染めたばかりの反物を見せてくれた。桑名は大地をいめーじした色で、松井はあいつがしてる爪紅の色から選んだ色。桑名の方には薄く柄が入っていた。
「少しずつ誂えていったから、二振りの分が遅くなってしまってすまないね」
「順番だろ。仕方ないっちゃ」
篭手切は四振りで軽装を着て夏祭りに行きたかったと残念がっていたが仕方ない。次の夏に行けばいいし、別に秋冬に着ていけない決まりも無い。
「採寸は終わっているから、あとは仕立てを頼んで待つだけだ」
「仕立てにはどれぐらいかかるんだ?」
「今から頼むと霜月の終わりぐらいかなぉ」
外に着ていくことはできなくても、部屋の中で着ればいい。みんなで着れば篭手切も喜ぶだろう。
虫干も兼ねて、春先に着たきりの自分の軽装を久しぶりに引っ張り出すことに決めた。
――
それから数日後。用事があって万屋街に来ていた。
目当ての物を買うと、非番で暇だからと万屋街の中を見て回ることにした。いつも同じ店にしか行かないので、違う通りに入ると知らない店ばかりだった。
さすが万屋街。色んな本丸の刀や審神者、政府の関係者がいる。自分の同位体にもすれ違った。元は同じはずなのに、何となく違うと感じるから不思議だ。
ぶらぶら冷やかしながら歩いていると、とある店の軒先に並んでいる商品が目に止まった。簪とか櫛とか、そういう類のものを売ってる店だ。
「お兄さん、ぜひ見ていってくだしゃんせ。主さんもきっと気にいるよ」
「
……
どーも」
女の主への贈り物を探しているとでも思われたのだろうか。残念ながらうちの主は見た目の歳が同じぐらいの青年だ。
折角なので軒先で商品をじっくりと見てみることにした。毛氈の上には色んな髪飾りが並んでいる。とんぼ玉やつまみ細工のついた簪、扇形の片簪、赤塗りに蒔絵の櫛。
(何か違ぇんだよな
……
)
どれもこれも綺麗だとは思うが、何となくしっくりこない。店の人には悪いが立ち去ろう。そう思って視線を逸らすと、ひっそりと並べられた石のついた小振りの髪留めに気がついた。
――
あ。これいいかも。
「これ、一つくれ」
「毎度あり?」
代金を払い、袋に入れてもらった物を受け取った。二振りの軽装が仕立て上がるにはまだしばらく時間が掛かる。それまで見つからないようにしなければ。うっかり机の上に置きっぱなしにしたら、絶対に見つかってこれは何か聞かれる。
こっそり篭手切に預かってもらおうか。篭手切なら何も聞かずに預ってくれそうだ。
……
いや、恥ずかしいからやめよう。
たまには違う道を通ってみるのもおもしろい。思わぬ買い物ができた。この色はあいつの色だから絶対に合う。そんな確信があった。
少し浮かれ気味で本丸に戻ると、廊下で松井にすれ違った。
「あれ?出掛けてたの?」
「買い物してきた」
「ふふっ。楽しかったみたいだね」
「まぁな」
「今からおやつにしようと思っていたんだ。豊前もお饅頭食べる?」
「食べる」
「じゃあ、お茶も一緒に用意するよ。部屋に持って行く」
厨に向かった松井の背を見送る。部屋に入って上着を脱ぐと、ポケットの中でカサッと髪留めの入った袋が小さく音を立てた。
主は霜月の終わりに軽装が仕立て上がると言っていた。これを渡したら松井はどんな顔をするのだろうか。その日がとても楽しみだ。
――――――――――
松井江へ。軽装似合ってるね!その髪飾りの出所について詳しく教えてくれないか?
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