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無窓居室
2023-02-03 02:53:31
8889文字
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鬼と悪魔の事情
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新年デート
正月ネタのつもりが別にお正月らしいことしてない。😈👦👹👸でショッピングモールへ行く話。
😈👹と少し👦👸っぽいデート風景がだらだら続きます。多分あとで改題する。
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「
…
というわけでアカネさんは着替えた方が良いでしょう。オレちゃん新しい服を調達してきますので、すみませんがさとしくん荷物を見ていて下さい」
「オッケー!」
「ちょっ、そこまでしなくても本当に平気だって!服が必要なら自分で買いに行くからさ」
「師匠、それは難しいんじゃないかな。汚れのついた服で入ったらお店に迷惑かもだし」
「そういうことです。着替えを買ったらひめちゃんに渡しに行ってもらいますから、アカネさんは更衣室のあるお手洗いへ」
テキパキと指示されると強く断れない。是非もない早さで話が決まっていくので、アカネは背後で交わされていたこんな会話を聞かなかった。
「ねえ、ブラックなら魔界の道具とかであのくらいの染み、何とかしちゃえないのかな?」
「さとしくんって鈍いよね。足を引っ張らないでよ。せっかくいい所なんだから
…
」
更衣室で、ひめに差し入れてもらった紙袋を開けたアカネは軽く固まった。
中身は白い綿のTシャツ。袖がリブになっているスウェットに近い作りだが、織が柔らかでスポーティな雰囲気はさほどない。それよりも目を引くのは胸に飾られたアクリルコットン製のウサギのモチーフだった。
つぶらな瞳とふかふかした手触りのウサギは生地よりもう一段明るい白で、まるで甘えて胸元に擦り寄ろうとしているなようなポーズがとても可愛らしい。
可愛らしいのだが。
「
…
ブラックのやつ、絶対にからかってんな
…
」
普段の自分のイメージとは程遠い服をわざと選んだであろう悪魔のニヤニヤ笑いを思い出す。一瞬顔を引き攣らせたものの、ウサギの姿を見ているうちに不思議とアカネの覚悟は決まってしまい、落ち着いた気分でシャツに袖を通した。このモチーフに罪はない。
化粧室を出たところで待っていたブラック本人と顔を合わせたときも澄ました表情でこう言ってやったものだ。
「意外な趣味してるよな、悪魔のくせにカワイイじゃん。会う人みんなに言いふらしてやろうか?これトップYouTuberのブラックの趣味なんですって」
「カカッ!うさぎ年ですからね。今年も良い年になりますように」
ブラックは心底楽しそうだった。このくらいの意趣返しがなくては面白くないといったところだろう。
「ひめ達は?」
「席へ戻ってティータイムの途中です。ゆっくり来ていいそうですよ」
「そっか。お言葉に甘えて、ちょっと庭へ出てみるかな」
「どうぞ、二人にはラウィンしておきますから」
フードコートの外の庭は芝生と花壇、小さな子供達が遊べる遊具などを備えてなかなかの広さがあった。いつになく暖かい年明けで、アカネは日向なら上着を着なくても大した寒さを感じない。
陽の光の下では雪景色よりむしろ春の野に見えるオフホワイトのシャツの地に、コットンのウサギの毛は銀色に光っていた。少しこの子に外の空気を吸わせてあげてもいいだろう、こんなに可愛いのだから。それにたとえ自分のことを茶化すためだとしても、ブラックが買ってくれたウサギなのだから
…
。
連日の編集作業で疲れた身体をほぐすように伸びをしていると、隣からブラックが覗き込むように邪魔してきた。カメラちゃんこそ連れていないが両手でフレームの形を作り、そこにアカネを収めて撮影の真似をしてくる。
「なんでお前までついて来るんだよ!」
「だって、可愛いじゃないですか。見ていたいんです」
「どうせウサギがだろ」
「もちろん、それもあります」
「他には?Tシャツのデザインが?タグについてるロゴが?」
「さぁ、どうでしょう」
ブラックのからかい方にもとっくに慣れたアカネは褒め言葉を決して自分のこととは受け取らない。ブラックもそれを分かっていて、ニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべながら早足のアカネについて庭を歩く。
「可愛いですよ、アカネさん」
「よせって」
「ほんとに可愛いです。いくら見ていても飽きませんね。いやぁ、どうしてこんなに可愛いんでしょう?」
「殴るぞ!」
二人は段々と駆け足になった。もう子供ではない男女がじゃれるように追いかけ合う様子は、この微妙な関係を知らない者が見たらさぞかし人目をはばからない幸せなカップルに見えることだろう。実際すれ違った人達のうち何人かは顔を赤らめ、負けじと強く肩を寄せ合う恋人らしき二人連れもいた。
勘違いさせておけばいい、とアカネは珍しく開き直って思う。ブラックは自分のことなんて女の子として好きではないし、だから自分もブラックのことを恋という形で想うことなど決してないのだ。
胸の奥を突く小さな痛みを誤魔化すように、アカネは笑い声を上げて駆け回った。ブラックはその傍を離れずついて来た。
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