無窓居室
2023-02-03 02:53:31
8889文字
Public 鬼と悪魔の事情
 

新年デート

正月ネタのつもりが別にお正月らしいことしてない。😈👦👹👸でショッピングモールへ行く話。
😈👹と少し👦👸っぽいデート風景がだらだら続きます。多分あとで改題する。

 
 正月二日のショッピングモールは大勢の客で賑わっていた。初売りの人混みが去った時刻にも売り場にはそこそこの列が出来ており、一休みするために寄ったフードコートの席取りも簡単ではない。
 アカネは昼からひめに誘われてオーガニック化粧品店の福袋を買うのに付き合っていた。コスメティックに興味を持ったことのないアカネにとって馴染みのなさすぎる出掛け先でいささか不安だったが、小学生が一人で混雑する商業施設へ買い物に行くというのも心配だ。
 詳しく聞けばそもそもショッピングモールに誘ったのはさとしで売り場を出たら合流すると言うし、さとしにはブラックもついているだろうということで、短時間の荷物持ちくらいならと承諾したのだった。
 行ってみれば化粧品店にはアカネも知っている薬草のサプリメントや自然派素材のプロテインも揃っていて、説明しに来てくれた店員との会話も弾んで楽しい時間だった。福袋を買えて満足そうなひめを横目に店を出る。
 良かった、今回はヘマをしなかった。
 いつだったか、ひめと来たファッションビルでアカネは犬用の鎖をネックレス、リードをベルトだと勘違いして買おうとし、ひめからアクセサリーのセンスについて厳しくレッスンを受けたことがある。ついでに小柄な人向けの服屋だと思っていたそこはペット用品店だった。大抵のことについて大らかなアカネだが、さすがにこの経験は半ばトラウマになっていた。

「喉が渇かないか?ひめ、疲れたならそっちの荷物も持つよ」
「ありがと師匠。大丈夫よ」

 調子づいたアカネは両手に買い物袋を下げ、並大抵の男ならたじたじとなってしまうだろう声と身のこなしでひめを気遣う。応じるひめの物腰も大人の女性顔負けの洗練されたものだった。 

「ちょっと休みたいとこだけど、まだ空かなさそうだな

 席の確保を引き受けたアカネが呟いたのとほぼ同時にひめの携帯が鳴った。二、三言喋ったひめがさとしの姿を見つける。
 嬉しそうなオーラを全身から発してぶんぶん手を振っているさとしの後ろには、いつも通りブラックが掴みどころなく立っていた。

「ちょうどいいタイミングだったよね〜!席取ってあるよ。四人分!!」
「もう会っちゃうなんてね。せっかく師匠とのデートを楽しんでたのに
「ひ、ひめちゃん!?」
「でもまあ、さとしくんにしては役に立つじゃない」

 ひめに遊ばれて顔色を二転三転させるさとしを見ながらアカネは小さく笑う。それから自分用に引かれた席へひめの買い物袋を置き、手荷物を抱え直した。

「それじゃあアタシはここで。さとし、ブラック、ひめのことちゃんと家まで送ってやってくれよ。それと明けましておめでとう。今日は楽しかったし、会えてよかったよ」

 元々さとし達にひめを渡すつもりだったアカネはそのまま席を離れようとした。驚いたさとし達が引き止める。

「えーっ、アカネちゃんもう帰っちゃうの!?」
「ひめ、師匠とお茶できるの楽しみにしてたのに
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいけど動画の仕上げが残ってるしなぁ」

 家には冬休みのうちにアップしたい動画の未編集部分が幾つもあった。技術的なことは青鬼ちゃんがやってくれるとはいえアカネも任せきりではいられない。世間が休みで動画を見る人の多い年末年始はYouTuberにとって大事な時期なのだ。そこで同業者のブラックが口を利いた。

「気持ちは分かりますがコーヒーの一杯くらい良いじゃありませんか?あそこの専門店、このあたりでは初出店らしいですよ」
「コーヒーなんて苦くて子供には無理だよ〜」
「ねぇさとしくん、ひめ、あっちのお店のタピオカミルクティーが飲みたくなっちゃった。季節限定なんだって」
「よしきた!俺いまお年玉持ってるからね!おごってあげる!!」
「あ、おい!迷子になるなよ!」

 さとしがひめの手を取って席を飛び出していく、この一連の流れのあからさまな符牒に気付かないのはアカネだけだった。要するに三人は協力してアカネをブラックと二人きりのコーヒータイムへ仕向けたのだ。打ち合わせも合図もなしに。

「大丈夫かな
「二人とも携帯を持ってるんでしょう?そうそう迷う歳じゃないですよ。それに、あの調子なら離せと言ってもさとしくんが手を離さなさそうですしね」

 どうにか納得したアカネはコーヒー店へ案内されながらまだ混み合うテーブルの向こうに二人の姿を探していて、自分もブラックに手を引かれていることさえ意識しなかった。