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吾妻
2023-10-03 20:11:36
11519文字
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アークナイツ
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Short Story log02
SNSなどに投げ込んでいた短い話のまとめです。基本的にイチャイチャしています。
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Kiss me
「ドクター、ちょっ、タンマ
……
――
!」
ステインレスは、それ以上言葉を続けられなかった。
向かい合って座った女の細腕が伸ばされ、両側から頭をがっしりと押さえつけてきたかと思ったら、次の瞬間には唇と唇が重ね合わされていたからだ。
理解が追いつかずに、ムードもへったくれもなく目をまんまるに見開いていると、女の小さな舌が促すように唇の表を舐めてきた。ほとんど反射的に薄く口を開けば、あっという間に熱を持った舌先が口内へ滑り込んでくる。
(あっま
……
)
絡め合わされる舌からは、アルコールの味がした。バーにいる間はそれほど酔っているように見えなかったのだが、もしかしたら彼女は泥酔しているのかもしれない。それはもう、べろんべろんに。
(いや、確かに『ドクターからキスしてよ』ってねだったのは俺だけどさ!)
半分以上冗談だった。
ここまで熱烈に要望に応えてくれるなんて、まったく、かけらも、想定していなかったのだ。
どうやらドクターは、自分からキスをするのが苦手らしい。
ステインレスがその事実に気づいたのは、それなりにあんなことやこんなことをするようになってからだ。
とはいえ、それ自体には特に問題も不満もない。むしろ、常に周りから『何を考えているかわからない』と評されるほど飄々としている彼女が、ふたりきりのときにだけ覗かせる戸惑いや恥じらいが心地よいくらいだった。
『男として意識されてんだな』とか、『ドクターって結構俺のこと好きなのかも』などと自惚れることができて、案外悪くないものだ。
だが、それはそれとして、たまには、本当にたまには、向こうからのアクションが欲しくなるときもあり、時折冗談めかしておねだりをしてみたりしていたのだが、その度に頬や額に児戯のようなキスを落とされて誤魔化されてきた。
今日も、そんなじゃれ合いの一環として、酔った勢いでおねだりをしてみたところ
――
このような状況に陥っているのである。
「ドク、ター
……
! 急に、どうし
……
っ」
ベッドに後ろ手を突いている体勢のせいで、真正面からのしかかってくるドクターを抱きとめることも押し返すこともできない。
息継ぎのタイミングにようやくそれだけ絞り出したのだが、すぐに再び唇を塞がれてしまって、言葉を続けられない。ドクターを送り届けるために訪れたはずの室内には、濡れた音ばかりが響く。
「
……
きみがねだってきたくせに」
やがて、ぐずぐずに重なっていた唇が離れると、肺活量がないせいで息を乱しに乱したドクターが、不服そうにステインレスの顔を覗き込んだ。
「そりゃ、そうだけど
……
すげぇ激しかったから、びっくりしたっつーか
……
」
「きみがいつもしてくることだろ」
据わった目に間近から覗き込まれて、ステインレスはごくりと喉を鳴らす。
ムスッとした表情ではあるものの、ドクターの白い肌には赤みが差して、呼吸はしどけなく乱れていて、端的に言えば非常に“エロい”。恋人同士とはいえ、決して二人きりの時間が潤沢に取れているわけでもないだけに、こういったシチュエーションはまずいのだ。
正直、自制心に自信があるほうでもないので、このまま美味しく頂いてしまいたくなる。
「
……
ま、マジ? 俺、いっつもこんなえっろいキスしてる?」
しかし、相手は酔っ払いなので。
そもそも、体力があるほうでもないので。
ここは大人しく寝かしつけたほうが良さそうだと踏んだステインレスは、にこにこと笑顔を浮かべて笑い話に変えてしまおうかと思った
……
のだが。
「してる。いつも食べられるんじゃないかって、心配になる」
「
……
そっかー」
実際に、食べてしまうことも多いので、反論もできずに相槌だけを返した。
するとドクターはさらにムスッとした顔をして、
「
……
そういう気分に、ならない?」
などと言い出した。
「
………………
え?」
そういう気分とは、一体?
ステインレスもまた、少々酒が残っているので、まともに思考が働かない。
頭の周りにクエスチョンマークをいくつも浮かべているステインレスを見て、焦れたらしいドクターが、再び顔を押さえ込んで唇を重ねてきた。
「いつも、こうされると
……
ゾクゾクするから
……
」
ついばむように繰り返されるキスの合間に零される女の言葉で、遅ればせながらステインレスは状況を把握した。
これはもしや、ひょっとして、ひょっとしなくても。
「もしかして、誘ってんの
……
?」
ベッドに突いていた手を、ドクターの頬に滑らせる。
心なしか赤らんだ目元を僅かに細めて、ドクターが、
「そうだと言ったら?」
などと返してくるので、必死に押さえ込んでいた熱が一気に膨れ上がって、熱っぽい吐息となって溢れ出した。
「は
……
、そういうのは、もっと
……
早く
……
言えって
……
!」
じゃれ合うようなくちづけを繰り返しながら、ステインレスは自分の上着に手をかけた。中途半端に下がったままのシャツのジッパーを引き下ろして、もどかしげに袖から腕を抜く。恋人からのお誘いを無碍にするなんて、そんな勿体ない
――
もとい、礼を失した態度を取るわけにはいかない。
「なぁ、ドクター、抱いていい? よな?」
上着をベッドの下に放り出して、改めて恋人に向き直ったステインレスの胸元に、とん、と触れるものがあった。
ドクターの頭である。
「
……
ドクター?」
はじめは、甘えるために擦り寄せてきたのだと思ったのだが、どうにも様子がおかしい。
深い呼吸が聞こえる。呼吸というかこれは
――
酔いからくる睡魔に負けたのか、ドクターはステインレスの胸にもたれかかって、すやすやと、寝息を立てていた。
「
…………
マジ?」
安心しきった様子で眠っている恋人を抱きとめつつ、ステインレスは心の底からの困惑を言葉にした。
こんなに煽られて、めちゃくちゃその気になってるっていうのに?
心臓はバクバクいってるし、呼吸も乱れてしまっているし、何より腰の下に集まった熱をどうしたらいいのか。
だが
――
「ん
……
」
子猫のように頭を擦り寄せてくるドクターの寝顔があまりに安らかで可愛らしく見えたので。
「あー。もー
……
」
ステインレスは、目覚めかけた欲望から意識をそらしつつ、ドクターの体をベッドに横たえた。
【終わり】
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