著者: 雷歌/らいと
2026-07-17 00:28:05
7013文字
Public バンやろ
 

【bnyr / 宗翼宗・大京・宗一・進徹】VT5無配SS

(pixivより再掲)欠席してしまったVT5で配布予定だった無配SSです。


大京


「歌い方を、教えて欲しい?」
「ああ!」
 勢い良く頷いた大和を、京は首を傾げながら見つめる。
 お互い時間が取れる日は、大和が京の家によく訪れていた。リビングに置かれたソファに二人して座り、京お勧めの紅茶を飲む。二人のいつもの日常を過ごしていると、大和が京に言ったのだ。歌い方を教えて欲しい、と。
 歌い方と言われても、オシリスとブレイストでは曲の雰囲気が違う。全力の熱さをぶつけてくるブレイストの曲に対し、内にある熱さをにじみ出すようにするのがオシリスの曲だ。
「ええと」
「今度のライブに合わせてカバー曲をもう一個歌うんだけどな、翼がもっと男の色気を出して歌えってうるさくて」
「カバー曲?」
「それで、色気あるっていったら、やっぱり京だから、京に頼むがいいかと思って」
 名案だろ? と笑みとともに向けられ、京は首を傾いだままつられるように笑みを返した。
「カバー曲って、なんの曲なんだ?」
「ちょうどバレンタインだからな!」
「ああ……なるほど」
 バレンタインといえば、不滅の曲がある。元は昭和の人気女性アイドルが歌っていたものだが、何人ものアーティストやアニメキャラクターを演じる声優にカバーされてきた曲だ。
 京も一応は知っていたため、合点がいったかのように頷き、おそらくはブレイストのベーシストの提案なのだろうな、ということまで考えた。京の考えていることを何故か読める大和は、その通りだよくわかったな、と口にする。
「しかし、色気、か。いざ考えてみると難しいな」
「そうか? 京が歌ってる時いつもそうだけどな」
「い、いつも、そう、なのか」
「ああ。本当はもっと抑えて欲しい」
 真剣な顔して言う大和に気圧されながら、気をつけてみる、と口にした。とはいえ、歌っているときは歌うこと以外に意識できないので、気をつけるも何もないのだが。
「それで、歌い方、だったな」
「まず京に歌ってもらって、それを真似してみる」
 音源は持ってきた、と言ってCDを鞄から取り出した。それをプレイヤーにセットしてとりあえず一度流す。流れ終わると、歌詞を見ながら少し口ずさんだ。
 女性用の音程なので男性の京が歌うには調整が必要だ。歌の一音目を声に出しながら歌い易い音程を探る。ここならいけるな、と確信すると、そこからするすると歌いだした。
 色気とやらをきちんと理解したわけではないが、いつもの曲にぶつける思いで京は歌詞を口に乗せた。
そして、二番のサビを歌っている途中のことだ。
「んむっ」
 突然キスをされ、そのままソファに押し倒された。
「や、大和?」
「とっておきのチョコレート。確かに甘いな?」
「い、いや、それは、歌詞で」
「んー、でも、確かに甘いんだよなあ」
 そう言って、再度口付ける。触れるだけでなく、軽く唇で食んだり舐めたり、舌を少し押し込めば素直に開いた奥を思う存分堪能したり。京の息があがってきたところで、ようやく唇を離した。
「うん、甘い」
「でも、チョコでは、ない……
「甘いし美味しい」
 唇を今度は京の首元に落とし、確かな意思をもって大和の手が動き出す。
「や、大和っ」
 どうやらキスだけで終わらなさそうな気配を感じ取った京は、軽く大和の肩を押さえながら慌てて言う。
「歌い方は、もういいのか?」
「ムラムラするから、京に教えてもらうのはよくないな!」
 良い笑顔でそう言い放つものだから、京は苦笑を浮かべながらしょうがないなと大和の行為を受け入れた。
「それで、京さんからちゃんと教わってきたのか?」
「ムラムラして無理だった!」
 正直に言うボーカルにため息をついたベースは、ちゃんとよけいなこと言わないよう京さんに躾けてもらわないとな、などと思ったのであった。


おわり。