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yoAi_mochii
4416文字
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二つの性を持つカムクラくん(召神・狛日・カム日)
もし術後の日向――神座に、希望ヶ峰学園が「より優秀な才能を次世代へ継承させる」ことを目的とした機能を組み込んでいたとしたら
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おまけ③ (狛日←神(←狛))
数年後。
プログラム世界の会議室には、珍しく真剣な空気が漂っていた。
「いや、だからさ
……
」
日向は額を押さえながら大きく息を吐く。
出産。
それ自体は望んだ結果だ。
けれど、身体の変化や痛み、出産に伴う様々なリスクの話を聞けば聞くほど、不安は膨らんでいく。
未来の話とはいえ、十か月後に新しい命を迎えると決めた以上、その恐怖が簡単に消えるわけではない。
「怖くないわけじゃないんだよ」
ぽつりと漏らす。
「もし上手くできなかったら、とか」
「うん」
向かいの狛枝が静かに頷く。からかう様子はなく、珍しく真面目な顔だった。
「ちゃんと親になれるのかとか」
「それはそうだよね。命懸けなんだから」
穏やかな声に、日向は少しだけ肩の力を抜いた。
「お前がまともなこと言うと逆に怖いんだけど」
「ひどいなぁ」
苦笑しながら、狛枝は自然な動作で日向の手を取る。
「大丈夫だよ」
「狛枝」
「少なくともさ
――
」
握った指先に僅かに力がこもる。
「産まれる前からそんなことで悩んでる人が、悪い親になるわけないじゃないか」
日向は言葉を失った。
温かい。それだけなのに、胸の奥に張り詰めていたものが少しだけ緩む。
「
……
お前のそういうところ、ずるいよな」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「都合よく解釈するな」
狛枝は楽しそうに笑い、つられるように日向も口元を緩める。
重かった空気が少しだけ和らいだ。
そんな二人のやり取りを静かに見ていた神座が、不意に口を開いた。
「なら問題ありません」
二人が同時に顔を上げる。神座はいつもの無表情のまま続けた。
「ハジメが嫌なら、僕が代わりに産みます」
沈黙。
三秒。五秒。十秒。
「
……
は?」
最初に声を出したのは、半ば固まっていた日向だった。
神座は淡々と説明を続ける。
「陣痛が始まった段階で表に出ればいいだけです」
「いや、『だけ』じゃないだろ」
「痛みも恐怖も僕が引き受けます。合理的です」
まるで当然の結論を告げるような口調だった。
確かに神座の理屈に破綻はない。だが、理屈が通っていることと、それを感情的に受け入れられるかどうかは別問題だ。
人間は理屈だけで生きているわけではない。日向は深々と頭を抱えた。
狛枝がゆっくり手を挙げる。
「質問いいかな?」
「どうぞ」
「イズルくんは、ハジメくんを安心させるために言ってる?」
「そうです。リスクは僕に移りますので」
「ふぅん」
狛枝が楽しそうに目を細める。その笑みはいつも通り柔らかく、どこか掴みどころがない。ですが、神座にはわかる。
この男は質問しているのではない。確認しているのだ。
自分でも輪郭の曖昧な感情を、わざわざ白日の下に引きずり出そうとしている。
「じゃあさ、ハジメくんが怖くないって言ったら?」
返答する価値もない問いだったはず。
それでも僅かに思考が止まった事実が、すでに答えになっている。
「その場合は必要ありません」
平坦な声でそう告げると、狛枝は満足そうに笑った。
「なるほどね」
――
その表情が気に入らない。
自分の内側を見透かしたような顔が。
「やはりあの時、あなたの性器を折るべきでした」
思った以上に率直な言葉が口をついて出た。
狛枝は一瞬目を瞬かせ、いつものように浮世離れした笑みを浮かべ、両手を胸の前で軽く振りながら肩を竦めた。
「それは勘弁してほしいなぁ」
「え!?いつの間にそんな物騒な話になったんだよ!?」
日向だけが話についていけず、慌てたように声を上げる。そんな彼を見て狛枝はますます楽しそうに笑う。
日向はまだ気付いていないらしい。
神座が日向の苦痛を肩代わりしようとした理由は、単なる合理性だけではない。
それは紛れもない事実だ。だが、それだけではない。
もし自分が一人の人間として存在していたなら。
もし日向と同じ時間を生きられたなら。
もし自分がこの身体の片割れではなかったなら。
彼は今とは違う答えを望んだのではないか。
少なくとも、他人との子供のために日向が命を削る未来を、手放しで祝福できるほど無関心ではない。
代わりに産むという提案は優しさだったが、同時に、自分でも認めていない独占欲の表れでもあったのであろう。
「
……
あはっ」
狛枝は思わず口元を押さえた。
きっと認めないだろう。そもそも自覚すらしていないかもしれない。
その感情は求婚より重くて、不器用で、どうしようもなく報われない。
けれど。
少しだけ愛おしかった。
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