⁂ 相互様オリジナルゲッター小説三次
ネモフィラって、本当は西部劇の世界の花なんだよ
「えー」
ガンマンたちがどんぱちやってたとき、傍に咲いていた花、ああ、それじゃあ待って
―――ネイティブアメリカンがトマホークをたずさえ駆けた大地に咲いていた花
「あ、それならありだよ、ありになった」
一見独り言の多いことに定評のある彼が入梅の頃のどこか湿っぽい廊下を行けば、窓の下は朝からの雨に駐車場からエントランスまで、傘の花がいくつも開いている。そして駐車場脇にはこの季節の花の紫陽花が、青から紫のグラデーションの濡れてひときわあざやかな畝を成して咲く。ここの土壌は花を赤く染めないらしいのにこっそり安堵しつつ、彼が高みの見物でその慌ただしい通勤風景を眺めていると
櫻の木の下に死体が埋まってても文学作品にしかならないけど
紫陽花の下に死体を埋めると花の色が変わっちゃうね、アルカリで赤に
彼の「片割れ」が遠慮深くも実に余計な事を告げた。いつものことであった
「あのねえ、神さんたちの目を盗んでサスペンスドラマの犯人みたいな真似しにくる奴なんているわけないじゃないか」
頭頂にぴょこりと立ったいわゆる「アホ毛」を片割れとの通信アンテナの調子が悪いかのように左右に振りつつ呆れたように彼が言えば
そうだけど
そうだけど昨日渓が道で撥ねられた子猫を庭に埋めてあげに行ったでしょ
あれ、この辺だったりしないかな
「うわ」
優しさがあるいはこの後、眼下の光景を一変するかもしれない
今後渓が少しばつの悪い顔でもするようなことがあったら、何も言わず自分の部屋のネモフィラを渡してきょとんとしてもらおうと彼は思った。彼の花の花ことばは
『私は貴方を赦します』
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