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サブさぶれ
2026-06-07 22:03:21
11437文字
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彩り 【SSシリーズ】
スグリにいろんな綺麗な景色を見てほしいと考えて始めたSSシリーズ。
不定期更新。ゆっくり書き進めていきます。
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ポーラエリア
スグアオ+ガオガエン
白い嵐は突然やってきた。外にいた生徒全員に冷たい雪を鋭く浴びせかけ、ビュオオオ、と唸り声を上げる様は、この世の一切合切を拒絶しているようだった。
スグリは咄嗟にアオイの手を取り、強風に背中を押される形で電気石の岩窟へ逃げ込んだ。
強く打ち付けられたせいか、アオイはすっかり全身雪まみれだった。頭と肩の雪を払ってやると、アオイはくすっと笑ってからスグリの頭と肩の雪を払ってくれた。
「はあ
……
。いつ止むかな、これ」
紫色になってもなお可愛い唇から白い息がほわほわ出て、すぐにそこら中へ散らばっていった。
天候を人の手で管理しているこのドームで、ここまで天気が荒れることは殆どない。おおかた、ドーム部の新人が調整ミスをしたのだろう。
復旧するとしたら大体十五分程度。
特に意味などなかったが、スグリはそのことは黙っておくことにした。震える細い肩を抱き寄せる。
「早く止むといいな」
「ねー。全然ブルレク進まな、っくしゅ!」
「ふふ。俺たち、ポーラさ来んのに薄着すぎたな。ガオガエン」
ポンッと軽い音が洞穴に響いたのと同時に、赤と黒の巨体が二人の前に現れた。
「グァオオォー」
胸を反らせて雄叫びを上げる、お決まりのポーズを決めた親友・ガオガエン。スグリは彼が腕を広げている隙に、分厚い胴にぽすんと抱きついた。
「ほら、アオイも」
手を差し出してアオイを誘う。彼女はガオガエンの顔を上目遣いで窺い、嫌がっていないのを確認してから、そっと抱きついた。
「あったかー」
ふかふかの毛並みと炎ポケモン由来の温かさにかじかんだ身体が溶かされる。真横の恋人の唇も、すっかりいつもの林檎色に戻っていた。
さりげなく、かつ、いやらしくならないよう、アオイの腰に手を伸ばして自分の方へ引き寄せた。頭上からガオガエンが鼻で息を鳴らした音がした。
薔薇色に温められた頬のアオイがスグリに振り向く。
「ガオガエン、カッコいいよね」
「だべ!? 爪が鋭くてムキムキで闘争心強くて、そんでわやつえーから大好きなんだ!」
「ガウ」
スグリの言葉にガオガエンはニヒルな笑みを浮かべた。いかにも悪タイプ、というこの表情は特にかっこよくて最高だ。
「学園さ入学すっとき、ポケモンっこ一匹もらえるーってなっててな。俺、ねーちゃんに図鑑さ見せてもらって、最終進化が一番かっけーからニャビーにしたんだ」
最初に出会った日を今でもはっきり覚えている。お互い、ちょっとずつおっかなびっくりだった。
絆が深まったのは、今日と同じ、調整ミスの猛吹雪の日。凍えるスグリの胸に自らポンッと飛び出し、全身を使って温めてくれたのだ。「一緒に強くなろう」と男の誓いを交わしたのもこの時だった。
「ニャヒートの時までは、時々膝さ乗っかって甘えてきてたけど、進化してからは撫でられんのも嫌がってさ。ちょっと寂しい」
「グァン?」
「けど、こうやって寒ぃ時はあっためてくれんのは変わんねぇな」
軟弱なことを言うな、と言いたげな怖い顔で睨みつけていたのに、照れると顎をしゃくれさせてそっぽを向く。出会った時からの妙な癖も変わらない。
「仲良しなんだね」
「うん!」
満面の笑みで頷くスグリの背中に、ガオガエンの鋭い爪が刺さる。元々の性格が照れ屋な彼の小さな抗議は、痛いけど痛くなかった。
ガオガエンに埋もれたまましばらく話している内に、外の世界に静けさが戻っていた。思っていたより早く復旧したらしい。スグリよりも早く天候の変化に気付いたアオイが自分達からパッと離れた。
「あ、ねえ、晴れたよ! 行こ、スグリ! ガオガエン!」
ぬくもりを名残惜しむことなく、彼女はまっすぐに駆け出していく。光の中に消えていく背中は、最初に出会った憧れた姿のまま、強く、かっこよく、美しく、どこまでも遠い存在に思えた。
(俺も、いつか
……
。必ず)
小さくなっていく背中に向けて手を伸ばす。そして、決意を込めて力強く光を握った。すっかり逞しくなった沢山の相棒の内の一匹を見上げる。
「一緒に、強くなろうな」
「ガオ」
ガオガエンはまたニヤリと笑い、片腕をスグリの頭に近づけた。鍛えあげた拳に自分の拳をぶつける。ヒールポケモンの瞳には、自分と同じ夢の星が瞬いていた。
男の誓いを新たに、スグリとガオガエンは白く輝く世界へ飛び出した。
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