Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
リレン
9911文字
Public
フリンズ夢 短編
Clear cache
フリンズさんと不思議な楽師さんの話
あまこい7にて展示しました
1
2
3
4
5
【第四話】
楽師の彼女が、実は月霊だったのだと判明して以来
……
彼女はフラグシップには来なくなった。
デミアンさんにも聞いてみたが、あの日が最後に店へと来た日であり、楽器も預かったままだそうだ。もうこのまま彼女に会うことは出来ないのだろうか。
もう一度会いたい
……
僕に出来ること
……
そうだ、今の僕にも出来ることある。
「デミアンさん、彼女の楽器を
――
お借りすることは出来ますか?」
「楽器を、ですか?」
首を縦に振って頷き、デミアンさんの返事を待つ。少し悩んでいる彼の反応をそのまま数秒待つと、「分かりました、よろしくお願いします」と了承されたりそして店の奥から楽器ケースを持ってきてくれた。
「ありがとうございます。彼女と話が出来るか、試してみます」
「フリンズさんには何かあてがある、ということですか。
……
えぇ、是非よろしくお願いしますね」
そうしてデミアンさんは優しく笑って、「僕も彼女のファンの一人ですから、また是非お聞きしたいですね」と言ってくれた。
***
そして僕は、銀月の庭に訪れた。ここに一人で来るのは初めてだった。ここには月神であるコロンビーナさんがいる。
月霊が彼女の本当の姿であるならば、原神の眷属となる。それならば、コロンビーナさんであれば彼女の居場所が分かると考えたのだ。思い返せば、楽師の彼女の淡いピンク真珠の瞳は、コロンビーナさんの瞳にとてもよく似ていた。
「フリンズ、来たんだね」
「えぇ、突然の訪問となり申し訳ありません」
「うん、いいよ。来るって分かってたし」
大きな月の石像の上に座り、足をぶらつかせながら僕を見下ろしている彼女。僕が近くによると、コロンビーナさんはフワリと地上へ降りてきてくれて、僕の目の前で立ち止まる。
「あの子はね、毎日泣いているよ」
「
…………
そうでしたか」
少し顔を伏せて、彼女の様子を教えてくれるコロンビーナさん。そして彼女は、普段閉じられている瞳を開き、僕の目をしっかりと見据えて問う。
「フリンズは、どうしたいの?」
僕がどうしたいのか?それは、随分前から決まっているし、何も変わっていない。コロンビーナさんの瞳を見据えて、こう答える。
「僕は、彼女に会いたいです」
「そう。分かった」
そうしてコロンビーナさんは、何も無い空間に手のひらを上にして腕を伸ばす。
「
――
おいで」
そう告げると、一匹の月霊が姿を現した。それはもちろん、楽師の彼女である月霊の姿だ。あの特有のクーヴァキを感じることができる。
「あぁ、またお会いできる日を
……
心待ちにしていましたよ」
そう伝えると、その月霊はサッとコロンビーナさんの後ろに隠れてしまった。
「この子はね、分かってると思うけど
……
楽器が大好きな、他の子と少し違う月霊なの。
――
ほら、出ておいで」
コロンビーナさんが、その月霊の背中を押すとスーッと空中を移動した。彼女が僕の目前まで来てくれたので、少し屈んで彼女と目線
――
顔の高さを合わせる。
「僕ともう一度、お話ししませんか?」
そのように声をかけると、その月霊は人間の姿に
――
楽師の彼女の姿へと変え、ポロポロと涙を溢した。
「
……
貴方を、そして皆さんを
……
騙していて、ごめんなさい」
「おや、その事を気にされていたのですね。僕としては、またその姿の貴女にお会いできて嬉しいです。ありがとうございます」
彼女が溢し続ける涙を、手袋を外してから親指で拭う。すると驚いた彼女は顔を上げて目を大きく見開いた。僕が好きな、淡いピンク真珠の瞳が僕の姿を映し出す。
「貴女の真実の姿など、僕は誰にも言いませんよ。それに
――
、」
そうやって言葉を切ってから、僕は腰に下げたランプを手に取り、彼女の目の前へ掲げて微笑む。キョトンとした彼女の顔を見てから
――
ランプの中へと自身を閉まった。そして数秒待ってからランプの外へ出ると、彼女は目を丸くして驚いていた。
「如何でしょうか? 実は、僕はフェイ
――
妖精なので、図らずとも似たもの同士ですね。
……
僕も、貴女を騙していたことになるでしょうか」
「
……
!」
少しわざとらしく落ち込んだ様子でそう伝えると、彼女は途端に慌て出した。
「あの、えっと
……
どうしたら
……
」
「大丈夫ですよ。ふふ、貴女の秘密も僕の秘密も、他の方には秘密にしましょうね」
「
…………
はいっ」
そう返事をした彼女は、あの僕の大好きな笑顔に戻っていたので、僕もつられて一緒に笑った。
「
――
さて、楽器をこちらにお持ちしました。また貴女の美しい音色を、お聞かせくださいませんか?」
「楽器を、私の楽器を
……
持ってきてくれたんですか?」
「えぇ。どうぞこちらを」
「嬉しいです。フリンズさん、ありがとうございます」
コロンビーナさんや他の月霊達、そして僕は、彼女の奏でる美しい音色を聴きながら、このゆっくりと流れる時間を享受した。
その演奏会の途中で、コロンビーナさんから彼女の話を聞くことが出来た。
「この子はね、人の集まる場所で演奏がしてみたかったみたいなの」
「なるほど、そうだったのですね」
「うん。最初の日だけは、私も一緒にお店へ行ったんだよ。とっても楽しそうだったし、お店に行く日はいつも楽しそうにしていたよ」
「えぇ
……
今でも、いつも楽しそうに演奏されています」
コロンビーナさんが、夢中で演奏する彼女に目線を向けた。僕も彼女に倣ってそちらに目を向ける。僕が見たかった光景が、彼女の笑顔が眩しく映った。
***
その後の彼女は、コロンビーナさんの計らいで、僕の居る時は夜明かしの墓で過ごす時間を持つことが出来た。この夜明かしの墓からフラッグシップへ向かう日もある。
「今日は僕が非番の日ですから、店までお送りしましょう」
「私は月霊の姿で移動できるから、必要ないのに。
……
いつもありがとう、フリンズ」
「ふふ、僕が貴女をお送りしたいのですよ」
そう言って彼女に手を差し伸べると、いまだに少し恥ずかしそうにしながら、彼女は僕の手を取ってくれた。
『世界-The World- これからの長い長い月日を、貴女と共に。』
1
2
3
4
5
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内