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カレット
2026-04-16 16:53:20
12947文字
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騎士の瞳を窓にして
ブルーベリー学園修行編if/リコちゃんのシンクロマシンネタ無自覚アメリコ/シンクロマシンの仕様はゲーム本編寄り/ポケモンがめちゃめちゃ喋るし捏造注意
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その後すぐ、例の女性がやってきて、マシンを回収していった。
「シンクロマシンのモニター協力、ありがとうございました!」
女性の去っていく姿を尻目に、アメジオが呟く。
「シンクロマシン
……
?」
「ええと、かくかくシキジカで
……
」
ポケモンたちがそれぞれ単独行動していて、バトルで傷ついて倒れた所にもトレーナー不在の上、怪しげなマシンを持って硬直していたところまで知られてしまっていたからには、全て話す他無かった。
回復マシンに向かって階段を登りながら、アメジオに説明した。よほどショックなのか、彼の目がいっぱいに見開かれる。
「カルボウとシンクロ
……
? まさか、先ほどまでずっと?」
「うん
……
」
「カルボウの体でありながら、ストライクの大群とバトルし、崖から落ちたと?」
「そう
……
です」
「何て無茶を
……
」
驚愕に染まった声が耳に痛い。その通り過ぎて、返す言葉もない。
「何度か連絡したんだが、それなら返事がなかったのも頷ける」
そう言われて慌ててスマホを見ると、確かに不在着信と未読メッセージが、アメジオからだけでなく何通も。慌ててロトムに入力をお願いした。
回復マシンにカルボウもブリムオンも、気疲れした様子のマスカーニャもみんなボールに入れて預けた。自販機で缶のサイコソーダとミックスオレを学園のポイントで決済して、アメジオに両手で差し出した。
「どっちか、貰って」
「奢られる理由は
……
」
「あるよ
……
! 今日は助けてもらいっぱなしなんだから、どっちもあげても足りないくらい!」
「
……
では、頂こう」
サイコソーダを受け取ってもらえて、胸を撫で下ろす。近くのベンチに座り、ミックスオレの甘さを飲み込んで、ようやく人心地ついた。間を空けて座り、缶を傾けるアメジオを横目で見る。こんな風に並んで座ったことは、今までなかった気がして。
隣から、切実な響きの声がかかる。
「君が無事で良かった」
「本当にね」
「もっと早くに気づけていたら
……
」
アメジオは心底悔やんでいるようで、恐縮してしまう。カルボウの中にわたしがいたと気づけなかったから? 崖から落ちる前に駆けつけられなかったから? それでも。
「充分助けてもらったよ」
「怖い思いをしただろう」
缶を握り直して、アメジオがわたしの顔色を窺うように目を向けてくる。
気にかけてくれるのは素直に嬉しいけれど。確かに怖さもあったけれど。
「カルボウがちゃんと守ってくれたよ。それに、カルボウの中から見えたこと、沢山あったから」
「奴もすっかり一人前の騎士か」
ふ、とアメジオは淡く微笑む。ミックスオレの後味を急に強く感じて、慎重に唾を飲み込んだ。
アメジオは再び缶に口をつけようとしたけれど、ぎくりと動きを止めた。
「待て。カルボウに話したことは
……
リコも」
「聞いちゃった
……
」
「なるほど? 確かに俺に借りがあるというわけだ」
悪役めいた笑みと声色にどきりとする。そこまで聞いちゃいけなそうなことは聞いてないと思うけど
……
! 一体何で返させられるんだろう。
アメジオは表情を消し、ふ、と息をついて遠くを見た。
「ジガルデのセル探しを始めて以来動き詰めだと、ハンベルに小言を言われてな。はねやすめをしろと煩いから今日ここへ来た」
「なのに、ここでもセル探しと人助けしてたんだね」
「性分なんだ。それでも今日はしっかり休んだ。カルボウの回復を待ちながら」
「短いよ」
「今も休んでいる」
「もっと、ゆっくり休んでね」
「そうだな。証人が要るだろう。明朝までこちらに滞在するんだが、今夜食事を共にしてくれないか」
「わ、かりました
……
」
それで借りを返せということなんだろうか。そんなことでいいのか、と思いつつ首を縦に振った。ただ皆やアンにどう話したらいいだろう。明らかに、ふたりで、というニュアンスだったのだから。
ドーム内を循環する空気が髪の毛をさらさらと揺らす。遠くでポケモンの鳴き声が聞こえる。天井に映し出された空は陽がだいぶ傾いている。本物の空と見紛うほどの強い色に照らされて、同じように感じたらしいアメジオがぽつりと呟いた。
「ここが海の中とはな」
「そう思うよね」
「テラリウムドームに、シンクロマシン
……
興味深いな」
「ソウブレイズとシンクロしてみる?」
穏やかな会話は初めてのことなのに、どうしてか気安くて、いつまでもこうしていたくなる。同じ目線で仲間としての貴方と言葉を交わせるのは、やはりわたしがポケモンではなく人間だから。
「面白そうだ。君はカルボウとシンクロして何を思った?」
「わたしは
……
」
アメジオの問いに思い出すのは、ストライクに囲まれた時のこと。カルボウはお腹が空いていたし、ブリムオンも疲れているんだし逃げなくちゃと思った。でも、カルボウは騎士は逃げないって言って立ち向かった。そんな風に。
「ポケモンのやりたいことを何も考えずに反対のことを指示していた時が、今まで何度もあったかもしれないって、思ったの」
「ポケモンを導くのがトレーナーだろう?」
「でも、カルボウたちが誇り高いこと、アメジオは知っていて、気遣ってくれたよね」
疲れたカルボウを抱き上げるとき、言葉をかけてくれたように。
「わたしはポケモンの気持ちをもっと考えてあげられるようになりたい。そして、一番いい方向を、一緒に見つけて進みたい。アメジオみたいに」
ずっと抱いていた憧れを、そっと言葉に乗せた。受け取った彼は、一瞬だけ虚を突かれたようにわたしを見た。
「ポケモンと人との未来を、探る、か」
彼の誓いが、わたしの中にも根を張って、芽吹いているのだと、知ってもらえただろうか。
「
……
買い被りだ。俺は自分の信念に従っているに過ぎない」
ただ、と言葉を切り、アメジオは遠くに見えるキャニオンエリアの山に目をやった。
「そんな風に考えられるリコだからこそ、カルボウは守ろうとしたのだろう」
胸の中にじわりと満ちる熱に、浸る。そんな風に言ってくれるアメジオだからこそ、もっと知りたくなるんだよ。
紫の双眸には、変わりゆく空の色が映り込んでいる。目が吸い寄せられていて油断した所に、ふいうちのように、かちりと視線が合わされた。
「
……
俺の腕の中で何を思った?」
何を、訊いてくるんだろう。
急に喉の渇きを覚えて、残りのミックスオレを一度に飲み切った。喉の奥に張り付く甘さをいなしつつ、言葉を探す。
「
……
炎タイプにとっては人間の体温がひんやりなんだな、って
……
」
「
……
そうか」
ほんの少し、アメジオは眉根を寄せた。つまらなかった? 分かりきったことを言ったから? だって、どきどきしたなんて、言えるわけもない。
なのに。
「君を腕に抱いていたと聞かされて、心が落ち着かないのは、俺だけか」
その訊き方と、拗ねたような目を向けてくるのは、ずるいと思う。
「
……
わたし、も、です
……
」
「ならば良い」
サイコソーダの缶を空にしたアメジオは、どこかすっきりとした顔をしていた。
(ならば良いって、何が良かったの。同じ気持ちで良かったってこと?
……
どうして?)
訊きたいことが膨れ上がるけれど、やり場に困って、とりあえず空き缶をゴミ箱に捨てにベンチから立ち上がった。
軽い音が2回。わたしの後に続いたアメジオが、隣に並んだ。
「そろそろ行こう。ライジングボルテッカーズの面々に挨拶しなければ」
ボールホルダーにポケモンたちの入ったボールを取り付けながら、頷いた。アメジオは情報共有をしたいとメッセージをくれていたのを思い出す。やっぱり休むつもりないんだな、とつい笑ってしまった。
そこへ。
「リコを借りる、と断りを入れなくてはな」
同じ技を二度も鮮やかに命中させてくる、彼は確かに格上のトレーナーなのだった。
ラクリウムに打ち勝つには、きっとここまで培った全てが必要になる。
カルボウの心と触れ合えたことも、この先必ず、わたしの勇気に変えて進もう。
全てを取り戻した暁に、彼の目指す高みへ、わたしもいつか辿り着きたいから。
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