【Sugar Sugar Everyday!】

シナリオネタバレなし

メルロル/アルエル/レグシュウ/シグリリ
※ケーキバース ※R-15程度の描写有



 大きな洋館、広い自室。ベッドでクッションに身を預けながら、彼はスマホを弄っていた。与えたスマホには特殊なセキュリティをかけており、外の情報は手に入るが彼から与えることはできないようになっている。見る専用の携帯端末、ということだ。


「なぁアル〜 お腹空いたんだぞ〜」


 ぽいっ、スマホをベッド端に投げた彼がオレの名を呼ぶ。上目使いでうるうると分かりやすく可愛こぶる姿を愛しく思いながら、傍で読んでいた本を机に置いて立ち上がった。ベッドの脇に腰を下ろし、その髪をさらさらと撫でる。


「晩飯はしっかり食べただろうが」

「足りないんだぞ! 夜食をしょもーするんだぞ!」

「野菜残そうとしてたヤツのセリフじゃねぇなァ、エルディ?」

……だめ?」


 わざとらしく本名で呼べば、彼はぷくっと頬を膨らませる。そしてオレに寄りかかり、腕を絡ませた。先程と違い、いじらしげに視線をゆっくり合わせ上手に媚びる。しかしオレは、それが彼の上手な駄々の捏ね方だと知っていた。


「駄目だ」

「ちぇっ!」


 パッと手を離し、エルはベッドへ身を投げる。唇を尖らせながら、つまらなさそうにクッションを抱きしめた。幼子のような様子に微笑ましさを覚えていれば、その視線が窓へ向くのを見る。


「外に出たいか?」


 オレの喉から、低い音が鳴った。特に驚いた様子もなく彼はこちらを見て笑う。少し呆れたような表情で、彼はころりと転がりオレに近付いた。その首に結ばれた赤いリボンは、彼の所有者が誰かを明白にする。


「過保護なんだぞアル」

「馬鹿言え。テメェはテメェの価値を理解してねぇだけだ」

「ケーキなんて今どき珍しくもないのに」

「テメェが食まれるなんざ、想像するだけで反吐が出る」

「じゃあオレは、誰にも食べられず腐っていくのか?」


「────いいや。血の一滴まで、エルの全部はオレのもんだ」


 オレの両頬を手で包み、彼は寂しげに笑った。その仄暗い色を上書きするように、オレは彼と唇を重ねる。触れるだけの軽いキスだ。

 額同士をコツリと合わせ、真紅の瞳に写る自分を見る。凡庸な人間ノーマルの自分は、ケーキの彼を甘いとは思わなかった。もし、自分がフォークだったら。彼の価値を理解し、余すことなく味わい尽くせたら。彼に寂しい思いをさせることも無かったのだろうか。


「(……考えても無駄なことだな)」




【カトラリーがない食卓】