Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ムクロジカ
Public
文字/雑多
【Sugar Sugar Everyday!】
シナリオネタバレなし
メルロル/アルエル/レグシュウ/シグリリ
※ケーキバース ※R-15程度の描写有
1
2
3
4
5
6
ふわり。甘い匂いに鼻をくすぐられ、ボクは静かに目を覚ます。一人で眠るには広いベッドから降りて、一度ぐんと背伸びをした。寝間着のまま部屋から出れば、砂糖の香は更にその存在感を増す。
階段を過ぎ、リビングに入った。扉を開けた途端に香る、甘露で優しい菓子の歌声。キッチンで調理をする彼がボクに気が付き、柔らかく微笑んだ。
「おはよう、ロルくん」
「おはよう、メル殿」
ちょうど焼き終えた頃だったらしい、彼はまだ熱いフライパンからパンケーキを皿に移し替えている。滑らかな湯気を漂わせるそれは、全身で自分は美味だと主張していた。
微笑みを返しながら歩み寄れば、彼はボクの額に口付けを一つ落とす。近付いた首筋が煌めいて、口内に唾液が溢れた。仕方がないと一つ息を吐いて、彼の寝間着を小さく引く。期待を隠さないまま、彼は屈んでボクと視線を合わせた。
彼の顔を両手で包み込み、ゆっくり唇を重ねる。細かな啄みから始まり、やがて捕食するように彼の口内を貪った。互いに隙を見つけては何とか呼吸しつつ、ボクは彼を深く味わう。とろとろに溶けたチョコレートが舌を這うような、潰れたカスタードプリンがキャラメルと混じって喉を侵すような感覚。おかしくなった味覚が、彼を極上の食材だと告げている。
「ぷは、ぁ」
絡んだ舌を解いて離せば、ボクたちの間で銀糸が垂れて千切れた。頬へ赤色を散らした彼は、まだ足りないと言わんばかりにボクの首に腕を回す。彼の方が身長は高いので器用に膝を折り、ボクに縋るような形でまた口を寄せてきた。
それを人差し指で制止し、少し呆れた声を漏らす。
「メル殿、今日は仕事があるだろう」
「
……
むぅ」
「そんな可愛い顔をしても、ダメなものはダメだ」
「オレに可愛いなんて言うの、ロルくんだけだぞ」
「そうかい? それは光栄だ」
まだ不満だと表情で伝える彼に、思わずクスクスと笑ってしまった。ボクのそんな反応を見て、彼はまた頬を膨らませる。その動作がまた愛らしくて、つい頭を撫でてしまった。
彼の額へと、唇を押し付ける。軽く吸ってリップ音を鳴らしてやれば、彼はくすぐったそうに口角を歪ませた。そこに安堵の色が滲んでいるのを見て、ボクも漸く安心する。
彼はケーキの性質を持つ人間だ。フォークにのみ最上の菓子として機能するその性質は、一人の例外もなく先天的なもの。対するボクは、フォークの性質を持つ人間だ。それは全てが後天的、自分も突然に失せた味覚に困惑したことがある。
フォークになったのは、彼と結ばれて数日後。彼と共に作った料理、それに対する感覚が尽く失せていた。彼との卓にも食欲が唆られず、口に入れても無味無臭。そして何より異質なのは、料理よりも彼を見ているボクだ。
違和感を覚えた彼が、対面から手を伸ばした。無意識に手を握り、その指先を咥えた。驚く彼を無視して、ボクは甘露を舌で転がした。整えられた爪を舌で撫でて、少し乾燥した皮膚を軽く噛んだ。唐突な異常行為だが、彼もボクもそれだけで全てを理解した。
彼はケーキで、ボクはフォークになったのだ。
『いいよ、ロルくん』
『ちゃんとのこさず、食べてくれるなら』
そう告げた彼は、自分を前から抱きしめた。強くなった砂糖の香りで頭が茹だり、くらりと大きく揺れたのをよく覚えている。だけど、ここで彼を食べ尽くすわけにはいかない。彼が喜ぶとしても、それをボクは望まない。
だからボクらは約束したのだ。
いつか必ず、キミの全てを平らげると。
「焦らなくても、ボクはキミを
残したり
遺したり
しないよ」
そっと抱きしめて、彼の存在を浴びた。本能が食欲を突き落とそうと背を押して、理性がそれを太い縄で固く縛っている。こんな綱渡りの極限状態だと言うのに、ボクも彼も心は穏やかだった。
【おのこし厳禁】
1
2
3
4
5
6
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内