芹沢亀吉
2026-04-27 07:40:05
7669文字
Public 風刺
 

どうした湊川護

暴虐な軍国主義者の楠木武一等陸佐が恥をかく物語の通算125話目。今作の主役は湊川護二等陸曹の筈なのに楠木武が悪目立ちし過ぎて埋没しているような気が。あと食事中の閲覧は厳禁で!


 いきなり沖縄県の宮古島に飛ばされ、自分達の身に何が起こったのかを理解出来ない楠木ら3人。折しも宮古島では陸自の連中が迷彩服を着たままゴミ拾い等を行い、ボランティア活動の自衛隊宣伝利用を許さない心ある市民達から抗議されている。そしてたった今宮古島に飛ばされた楠木ら3人も迷彩服姿。要するに楠木は陸自隊員としての任務中に観心寺に行き寺側を恫喝して無理矢理本尊を公開させたということ。

 かねてより自衛隊への抗議を激しく憎悪していた楠木は迷彩服姿の輩に抗議する市民達をギロリと睨む。

「Tシャツ着ろって、警察や消防団にも同じこと言うのか!?ゴミ拾いしてくれてありがとうございます、だろ!自衛隊に感謝するのは日本国民として当然のことだろ!この非国民共がぁ!」

 日本軍は住民から土地を強制接収し軍用飛行場を建設、アメリカ軍は空襲に加え上陸戦により住民を多数殺害と太平洋戦争中の日米両軍から酷い目に遭わされた宮古島の歴史を知っていれば、その宮古島にて現役自衛官が自衛隊宣伝のため迷彩服姿のままボランティア活動などもってのほかとすぐにわかる。楠木のように抗議する市民達を逆恨みし罵声を浴びせるなど下衆の極み。

「楠木一佐の仰る通り!てめぇら何様なんだよ!よく見りゃ爺さん婆さんしかいねぇ。可愛い子ちゃんがいるなら俺デート申し込んだのによぉ。湊川、てめぇも何か言って、おい湊川!どうしたんだ!楠木一佐!湊川が、湊川が!」

 何の前触れも無く湊川が卒倒したのを受け慌てふためく乃木は一見同期の彼を心配しているように見えるとはいえ、実のところ「湊川の卒倒の原因はお前だろ!」と楠木に難癖付けられるのが怖いだけ。

 湊川の卒倒が楠木、乃木に衝撃を与える中、空から謎の声が。

「楠木武よ、今現在そなたは自分の足で立って歩くことが出来る。何故だかわかるか?」

 確かに先程観心寺の境内に入った時は湊川、乃木に身体を支えてもらっていたのに今の楠木は右足首を捻挫してからまだ24時間経っていないにも拘らず普通に立って歩くことが出来る。

「そなたが私のいる金堂に入った時、この私が右足首の捻挫を完治させたのだ。そなたの身体を支える湊川護と乃木大が辛そうにしているのは見ていられなかったからな。私の力ならそれぐらい容易きこと。にも拘らずそなたは私に感謝するどころか寺の人達に私を祀る厨子の扉を無理矢理開けさせ、空海が唐時代の中国から日本に伝えた私に向かって中国殲滅を命じる有様。私には全く感謝していないのに自衛隊に抗議する市民達には自衛隊への感謝を強要とは何様のつもりなのだ?」

 そう、空から聞こえるこの声は観心寺本尊の如意輪観音のもの。

「貴様あの千手観音だな!大楠公の末裔であるこの楠木に難癖を付けるとは貴様こそ何様だ!?」

 だから観心寺の本尊は千手観音じゃなくて如意輪観音だって。

別世界の楠木武は私の名を正しく言えていたのに、この世界の楠木武はそれも出来んか。まあそれはどうでも良い。私に欲情した乃木にしてもそうだが罰当たりな貴様らを宮古島に飛ばしどのような反応を示すか試してみたが、ボランティア活動を自衛隊宣伝に悪用する卑劣な輩に抗議する市民達に罵声を浴びせるなど不届き千万。最早救いの手を差し伸べる必要は無いな。さて湊川護よ、今こそ目覚めよ。」

 間髪入れずに湊川が起き上がり、パチリと開いた両目は眼球全体が不気味な赤い輝きを放つ。どうやら漸く自らの体内に神霊を呼び入れるのに成功した模様。無論この召喚術成功は如意輪観音のテコ入れだが。

「ト・メガ・セリオン!ト・メガ・セリオン!俺が主役の筈なのに楠木のタワシヒゲ野郎も乃木のヤリチン野郎も目立ちやがって!こんなこと許されてたまるかぁ!」

 今の湊川には第四の壁の向こう側が見えている様子。読者の皆様の中には今までの主役でありながら埋没している湊川に対し「どうした湊川護」と言いたい方もいれば、完全に人が変わってしまった今の湊川に対し「どうした湊川護」と言いたい方もいることかと。お好きにどうぞ。