暴虐な軍国主義者の楠木武一等陸佐が恥をかく物語の通算125話目。今作の主役は湊川護二等陸曹の筈なのに楠木武が悪目立ちし過ぎて埋没しているような気が。あと食事中の閲覧は厳禁で!
「ト・メガ・セリオン!ト・メガ・セリオン!ト・メガ・セリオン!ト・メガ・セリオン!」
湊川がいくら呪文を唱えてもただ虚しく夜が更けていくばかり。
「まただ、また何も降りてこなかった!一体どうすれば良い!?」
翌日楠木は大阪府河内長野市の
観心寺に出向き、それぞれの腕を強引に連れて来た湊川、乃木の首の後ろに回し2人に支えてもらいながら境内を歩く。観心寺の境内に入る際は大人1人につき300円の拝観料を支払うことになっていて、3人の中では一番階級が下の湊川が全員分の拝観料を負担した。
「ここは我が先祖、大楠公ゆかりの寺院!乃木、湊川、この聖地で貴様らの心の汚れを存分に落とせ!」
湊川、乃木以上に心が汚れている楠木がそれを言っても説得力など微塵も無い。楠木の肥満体を支える2人にとってその楠木のやかましく耳障りなどら声はいつも以上に苦痛である。
3人は観心寺の本尊を祀る金堂に到着するも、本尊が公開されていないことを知り楠木は怒り心頭。
「何故だ!何故本尊を拝めんのだ!?」
観心寺の本尊が公開されるのは毎年4月17日と18日の2日間のみ。お寺の人達に怒鳴る前に受付にて渡される拝観案内を読めよと。
「申し訳ございません。本日は御本尊が公開される日ではありません。たとえお姿が見えずとも扉の向こう側から御本尊は参拝された方々を見守っていますのであちらの厨子に向かって手を合わせて下さい。」
「他の凡百の参拝者共とこの大楠公の末裔である楠木を一緒にするな!大楠公の末裔である俺様が厨子の扉を早く開けろと言っているのだから早く開けろ!大体この寺が今こうしてあるのはこの楠木が陸上自衛官として毎日汗をかきこの国を守り続けているからだ!そんな俺様が本尊を見せろと言ったら早く見せるのが筋というものだろ!筋を通さんかぁ!」
確かに観心寺は大楠公、即ち楠木正成と縁があり境内には騎馬姿の銅像や首塚もある。だからといってその楠木正成の末裔が「俺様が厨子の扉を早く開けろと言っているのだから早く開けろ!」などとごねて騒ぎ立てるなどもってのほか。結局寺側が楠木の恫喝に屈し本尊を祀る厨子の扉が開かれることに。
観心寺の本尊、如意輪観音坐像は9世紀半ばに彫られたと考えられ、鮮やかな彩色、榧材の上に木屑を混ぜた漆を厚く盛る精巧な造型による神秘的かつ官能的な雰囲気は1000年以上前の仏像とは思えないほど。読者の皆様も
河内長野市のホームページを見てこの仏像の美しさを堪能して欲しい。
「うむ!この美しき像は実に素晴らしい!乃木、湊川、この楠木がガツンと言ってやったからこの像を直接拝めるのだぞ!こんな部下思いの上官を持てて貴様らは本当に幸せ者じゃないか!グハハハハ!」
湊川も乃木も仏像にはさほど興味が無く、やかましい笑い声を発する楠木を内心嫌悪こそすれ感謝など全くしていないのは読者の皆様のご想像通り。ただ女体を好む乃木は官能的な如意輪観音坐像に幾分か欲情している様子。何と罰当たりな。
「ナンマイダホーレンソー!アーメンソーメン流しソーメン!大楠公の末裔として命じる!千手観音よ!中国を滅し給え!」
如意輪観音に向かって「大楠公の末裔として命じる!」とか楠木は何様のつもりなの?こんな罰当たりなエクソシストごっこはある意味歴史的かもしれない。しかも如意輪観音を千手観音と呼んでいて思いっきり名前間違えているという。腕が6本の如意輪観音と腕が42本の千手観音を混同しているのは大雑把な性格の楠木ならでは。
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