芹沢亀吉
2026-04-27 07:40:05
7669文字
Public 風刺
 

どうした湊川護

暴虐な軍国主義者の楠木武一等陸佐が恥をかく物語の通算125話目。今作の主役は湊川護二等陸曹の筈なのに楠木武が悪目立ちし過ぎて埋没しているような気が。あと食事中の閲覧は厳禁で!


「大体乃木も湊川も周辺への注意が足らなさ過ぎる!毎日起きている間ずっと周辺への注意を払っているこの楠木を少しは見習、グワッ!?」

 怒鳴っている途中にバナナの皮を踏んづけ仰向けにすっ転んだ楠木は登場早々に恥をかく体たらく。これの何処が「毎日起きている間ずっと周辺への注意を払っている楠木」なのやら。しかもこの時踏んづけた皮はつい先程楠木本人がポイ捨てしたもの。毎日のように部下に暴言を吐き暴力を振るう楠木は信太山駐屯地きっての嫌われ者故彼がポイ捨てした生ゴミを片付ける者など誰もいない。

「痛たたたた、誰だ!こんなところにバナナの皮なんか捨てたのは!?この楠木に恥をかかせおって!さっさと名乗り出ろ!軍人精神を注入してやる!早く名乗り出んかぁ!」

 いやいやいや、そのバナナの皮ポイ捨てしたのは楠木サン、アンタだから。さっさと自分自身に軍人精神とやらを注入しろよ。

「さては乃木、湊川、貴様らの仕業だな!この楠木を逆恨みし恥をかかせるつもりだったのだな!『刑事コロンボ』を全話観て並外れた推理力を培ったこの楠木を騙し通せるとでも思ったかぁ!?」

 もしかしてこの暴力主義者は部下達から恨まれている自覚あるのかな?

「まず湊川がここにバナナの皮をポイ捨てする!次に乃木と湊川がわざと喧嘩を始める!この部下思いの楠木が喧嘩を止めに来るまでな!最後にこの楠木にバナナの皮を踏ませる!どうだ、凄いだろ!名推理だろ!だが名探偵楠木の推理力はまだまだこんなものではないぞ!グハハハハ!」

 素晴らしい、今の楠木の推理(笑)は全部間違っている、最初から最後まで何もかも。「まだまだこんなものではないぞ!」というのはもっと的外れかつ頓珍漢な推理(笑)も出来るということか。余りにも見当違いな推理(笑)を聞かされ、湊川も乃木もただ唖然とするばかり。

「この楠木の部下を思う気持ちを利用し恥をかかせるなど不届き千万!百叩きの刑だぁ!」

 そう叫んだ楠木が精神注入棒を振り上げるも、乱暴に扱い過ぎて既にボロボロの棒がポキッと折れたため百叩きの刑は不発に。精神注入棒の一片が床に落ちカランと乾いた音が鳴り響く。

「何だ、この棒は!?粗悪品じゃないか!中国製か!」

 折れてしまった精神注入棒を中国製ということにしたい楠木の意に反し棒の側面には「MADE IN JAPAN」即ち日本製であることを示す刻印がくっきりと。

「こんな中国製の粗悪品はこうしてやる!こうしてやる!」

 怒りに任せて折れた日本製の棒を踏んづけ始めた楠木ではあるものの、右足首を捻り再びすっ転ぶ体たらく。この時右足首を捻挫した楠木は湊川と乃木の2人に無理矢理自分を医務室まで運ばせたのだから何処までも自分勝手。部下達には無茶苦茶な訓練を強要する癖に自分は毎日缶コーヒーをグビグビ飲みダラダラ過ごす楠木の身体はブヨブヨの肥満体型故、医務室まで運ぶのはさぞかし大変だったことだろう。

 逃げるように医務室を出て乃木とは反対の方向に歩く湊川の目線の先に軽部かるべ孝士たかし一等陸士の姿が。

「何だよ、軽部!?俺に何か文句でもあるのか!」

 気弱な軽部は楠木、乃木からは勿論湊川からもいじめの標的にされている身。楠木、乃木を内心憎み軽蔑している湊川もその2人同様いじめ加害者なのだから世話が無い。湊川に怒鳴られ半泣き顔の軽部は身の危険を感じて素早く立ち去った。

 勤務が終わり独身寮に戻った湊川はいつも通り魔術の再現に勤しむ。