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冬暁
2026-04-06 22:30:00
3507文字
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悠アキ
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悠アキSSまとめ
四作のSSをまとめたものです。特殊な設定の話も含みます。
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大人になる日はいつだろう
冷たい雨の降る日のことだった。
ぽつぽつと葉を滑る雫の中に、傷だらけの子供がいた。息をしているかもわからない。近づいても微動だにしない。
口元に手を翳せば、かすかに呼気が触れる。
「まだ息がある」
羽織っていたコートを子供に巻きつけて抱き上げた。細い首に似合わない無骨な首輪で千切れた鎖が揺れる。
——
助けられるだろうか。
抱き上げた体の軽さに込み上げた不安を首を振って払う。
吹かずとも消えそうな灯火を前に、アキラはひた走った。
それから十余年。
傷だらけだった子供は、誰が見ても振り返るような美丈夫へと成長した。薄っぺらく折れそうだった体は逞しくしなやかで、細い灯火は嵐をも耐える炎へ。
「アキラくん」
蜜色の瞳をとろりと蕩けさせた青年は、己を拾い癒してくれた男へと頭を預ける。
「僕、ちゃんと良い子にしてたよ」
「少しやり過ぎな気はするけれど
……
」
足元に転がる侵入者たちは、軒並み意識を飛ばしていた。致命傷こそ避けてはいるが、死んでいないだけマシというべきか。死んだ方がマシだったというべきか。
「どうして? コイツらは二人の命を狙ってるのに。命あるだけ感謝するべきだ」
ワントーン低く吐き捨てられた言葉に、アキラは苦い笑みを浮かべてその頭を撫でた。途端に甘く綻ぶ双眸にほっと息を吐く。
魔女狩り。彼らが掲げるシンボルはそれだ。アキラが妹のリンと人里離れた森の中に居を構えているのは、魔女であることを知られないようにするためだった。近くの村民たちとは持ちつ持たれつで良好な関係を築けてはいるものの、世間は未だ魔女への畏怖が根強い。
ここ数年は、どこからか情報が漏れたのか。兄妹を狙う魔女狩りが増えていた。それに合わせるように獰猛な番犬と化しているのが、拾い子の悠真だ。
アキラがさっと手をかざし彼らに止血を施せば、悠真は膨れたように唇を尖らせた。
「アキラくんは優しすぎるんだよ」
「そうかい? 必要以上に犠牲を出して関わられる方が嫌なだけだよ」
「それもそうだけど。それであんたが傷つく方が僕は嫌だな」
悠真はアキラの細い腰に両腕を回し、ぎゅぅとその体を抱きしめる。首筋に鼻先を埋めれば宥めるように背中を撫でられた。
子供扱いされているような仕草に喜びと不満がせめぎ合う。
「悠真は良い子だね」
「
……
そーだよ。とっても良い子だから、もっと褒めてくれる?」
「何が欲しいんだい?」
「あんたの隣」
「それならいつもそうだろう?」
「そうじゃなくて!」
勢いよく顔を上げた悠真は、アキラの優しい眼差しに口を噤んだ。子供の頃から変わらない顔立ち。
彼の隣に立ちたい。彼の信頼も愛情も全て欲しい。でも、人間である悠真はいつか先に死ぬ。
いつまでも子供ではいられない。子供でいたいわけじゃない。
だけど、悠真が大人になったと気づいた時。アキラは悠真を置いていくのだろう。
「
……
たくさん撫でて?」
「もちろんだとも」
するりと髪を梳く指先に目を閉じる。
この時間がずっと続けば良いのに。
吐くことのできない願いを飲み込んで、悠真はあたたかな手のひらに擦り寄った。
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Posted by 冬暁/
薄明
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