望野おもち
25848文字
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DRAPLS/Prologue②

せっかくだし全員喋るまで書こう、ってバカをやらかしたら追加で2卍ウェーイ✌️でした。原案絵や50問50答から若干性格が変わってる人がいますが、こっちが正しいということで。動くとイメージ変わりますね。



「し、し、しし死ぬかと思った、ほんと、ばかじゃん……!! ここにハシゴつけた人バカ!! 誰が昇り降りすんだって!!」
「途中手の感覚無くなっちゃったよね……適宜休憩してよかった……! NEMIねみちゃん、下見ながら降りてくれてありがとう」
「いやいやいや!! つづりんが声掛けてくれたし! あとコレ助かった~神経すり減るといるもんだね、糖分!」

 途中4回ほど落ちかけたが、なんとかボロボロのハシゴを降りきった。手の感覚は無くなったし、まだ少し膝が笑っている。リュックサックの肩紐をいつもの長さに戻して、中から巾着袋を出した。いつも常備している、飴玉やラムネなどの糖分だ。ラムネを口に放り込んで、NEMIちゃんにも1粒おすそ分けする。

「あざあざ。……綴りんてさ、周りからお母さんとか呼ばれたりしない?」
「不本意ながら」
「多分だけどポーチに絆創膏入ってるタイプの人?」
「ご明察……

 NEMIちゃんの手持ちは携帯だけだった。絶望の残党に襲われた際鞄を無くしたのかもしれないとのこと。落とすといけないので、NEMIちゃんの携帯はハシゴを降りている間は私のリュックサックで預かっていた。どうやらモバイルバッテリーでの充電も満タンの様子。無事降り立ったので返却する。

「ケータイありがと。糖分はあるけど飲み物欲しいよね、喉乾いたし。あと普通に休憩したいわ、足ガクガク……
「そうだね、どこか座れる場所とか探せたら……

 ミシミシ鳴る錆びかけのハシゴのある壁は、しばらくの間は視界に入れたくない。フラフラ疲労困憊の私たちは降り立った地下都市を前に、既に若干気が滅入っていた。

「──あ!! いたいた、おーーーーい!! そこの2人!!」
「はヒ、は、速い、まっ待ってもろて、ゲホッ」

 宛もなく歩いていると、遠くからこちらへ近づいてくる男の声がした。軽快な足音で、元気が有り余っていることだけはよく分かる。

◆生体認証を行います しばらくお待ちください
◆データ照会 申請 承認 ID確認中
◆生体認証成功
国民ID:EMEDDC44_N14FP 綾瀬あやせ 駿しゅん 様
国民ID:IM898989_N36FP 蔭山かげやま 徒丸とまる 様
過去データベースに有害記録なし
健康状態スキャン 良好
心身ともに問題ありません
ラプラスの定義する「市民」に認定

「うお、またしゃべった。じゃなくて! キミらさっきあのハシゴで降りてきたよな! 落ちないかヒヤヒヤしたよ、大丈夫?」

 爽やか笑顔のジャージ男は、結構なスピードで走ってきたというのに息ひとつ切らさずケロッとしている。先に地下都市に上陸していたらしく、私たちの決死の行軍を見て駆け付けてくれたそうだ。いかにもスポーツマンという見た目で、髪はサラサラの軽いツーブロック。そこまで大柄ではないものの、引き締まった太腿やふくらはぎが身体能力の高さを見せつけている。

「大丈夫じゃないし! 死ぬかと思ったわ。手とかボロボロだし、足もげそうだし! アンタらも?」

 NEMIちゃん流石のコミュニケーション能力で、話しかけてきた男にすぐさま反応した。助かる、と影でホッとする私である。

「ここじゃないけど、オレもハシゴ! あ、オレが綾瀬あやせの方。あっちのしかばねが蔭山かげやま
「屍とは失礼な、返事くらいしまゲッホゲホオエ、ぎゅぅに、はじっだら、……
「し、死にかけてる……!!」

 むしろ私たちより死にかけの、なんともダサめシンプルな格好のメガネの彼は蔭山と名乗った。聞くと、彼らも地下シェルターで目を覚まし、ここに降りてきたらしい。綾瀬の方はピンピンしているが、蔭山はかなり時間をかけて降りてきたそうだ。顔色は真っ青で、萎びたワカメのような印象が残った。

「あ。あたしは」
「待て待て、言わずともわかるぜ。UtuberウーチューバーのNEMIちゃんだろ!」
「ピンポン! ご視聴ありがとうございまーす。チャンネル登録と高評価もよろしく」
「もうしてる!」
「「ウェーーーイ!!」」

 そんな明るい2人のやり取りを眺めて、ああ陽キャ……と眩しさに目を細めていた私。屍になって溶けかけだった蔭山も似たような顔をしていた。あなた同族か、おぬしもか、という静かなアイコンタクトがあった。

「てことはだ。天才のオレは気づくワケよ、こりゃ偶然じゃないってさ。オレ、超高校級のラクロス部。んで蔭山が」
徒然丸日記つれづれまるにっきの中の人、超高校級のブロガーじゃよ。個人情報だから晒さないでクレメンス」
「まじ? え、もしかして綴りん」

 超高校級のインフルエンサーNEMIちゃんこと天音光希あまねみつき
 超高校級のラクロス部こと綾瀬駿あやせしゅん
 超高校級のブロガーこと蔭山徒丸かげやまとまる
 地下研究施設、地下都市へ降り立った超高校級と呼ばれる希望の高校生が既に3人もいる。3人の注目を浴びる私は目線があちこち泳いで、少しバツが悪くなったけれど名乗ることにした。

「えと、綴目和歌子つづりめわかこです、一応……超高校級の図書委員……
「えー!! すっご、ガチじゃん!! これ偶然じゃないでしょ!!」
「NEMIちゃんオレそれさっき言ったよ? 聞いてた?」

 登録者数うなぎ登りの売れっ子インフルエンサーNEMIちゃん。初心者助っ人から全国優勝へ導いた快足の綾瀬。ブロガーランキング殿堂入り、万物のオタクからリスペクトを受ける蔭山。努力や才能によって開花した、超高校級の高校生たちだ。

「(私は……何もすごいことしてないし)」


 人よりちょっとだけ責任感が強いだけの、至って普通の女子高生。明るく場を盛り上げることも、人を引っ張ったりまとめたりすることもできず、特別な技能があるわけでもない自分に付けられた肩書きが、身の丈にあっていないゴテゴテの高級品のように見えてならない。まさに馬子にも衣装である。目線は斜め下に落ちていった。

「んでさ、蔭山曰く危険は特にないんじゃね?って話」
「ふーん。その心は?」
「オホン。拙者若かりし頃こういうシェルターに避難したことありましてね、アルターエゴたんがセキュリティバチコリ守ってくれてたゆえ、超安全だったのであります」

 私も概ね同意である。絶望の残党、赤い瞳の犯罪者たちから身を守るための避難シェルターは、あらゆる外敵を拒絶する。それ故にひもじい思いもしたし、抑圧された期間は苦しいものであった。多感な子供時代の一部がそこにあったせいか、ワガママな妹の面倒も見ていた手前かなり我慢をするクセがついてしまった。

「まあ外に一旦出られないのは困るとしても、ここがどこだか分からないにしても、ひとまずは安全というわけで。仮に誰かに拉致られてここにいるとして? そヤツらが危険だとして? ラプラスたんが《市民》判定出さないでしょう。危機感は持ちつつ、焦る必要はない。つまりそういうことです。アルターエゴたんの言うこと絶対! アルターエゴたん最強! 最高! ということですな」
「だそうです」
「だってさ、綴りん。どう思う?」
「(陽キャ達がものすごい他人事だ……)あ、えと、そうだね。ちゃんと生活できることが確認できたら、ひとまずは」

 気になるのは何故ここにいるのか、だ。確かに安全なのは間違いないだろう。外敵から身を守れる実績がシェルターにはある。けれどそれに至るまでに、気を失う前何があったのか。そしてここはどこなのか。なぜ私たちなのか。ラプラスは全てを語ってくれず、未だ不信感が拭えないでいるが、《アルターエゴ》というだけで謎の安心感信頼感はある。それに、物理的な被害、身体的苦痛があるか?と言われるとハシゴ以外に特にない。現状、とりあえず人と合流することが優先すべき事として一致した。

「じゃー決まり。オレらウロウロしてたとこは人居なかったし、別んとこ歩く感じでいい?」
「そうだね。あと12人探して、状況整理をするといいかも。……ラプラス、他の12人の居場所って教えてくれる?」

◆申し訳ございませんが、
プライバシー保護の観点からお答えすることはできかねます。

「仕方ない、歩こ。あーーーもう足痛い、今日は温かいお風呂とアイスがないとヤダ!! 蔭山、アンタ人力車的なの引いてよ。あたしと綴りんが座る」
「まずモノがない、拙者車夫とか無理、むしろ乗せて欲しいまである」
「綾瀬くん筋肉ムキムキぽいしそういうの似合いそうだね」
「ヤだな綴りん、オレのことはアヤちゃんって呼んで☆」
……綾瀬」

 Utuberとスポーツマンとオタクと私。すっかり警戒心がとけて、緊張も解れつつ、巨大な地下都市を宛もなく歩き始める。街並みはどこか西洋風で、水は流れていないが水路と噴水があった。建物はどれも似たような造りをしていて、蔭山曰く「外で大まかに作って、クレーン車とかで持ってきて組み立てる感じカモ」とのことだ。その方が制作にかかるコストが抑えられるそうな。

「これさー? 一周するのに結構かかる説ない? しかもどの建物にもちゃんと鍵かかってるし。中入れないじゃん」
「扉はぶっ壊せなくもないけど、後々怖い気がするしなあ……
「いけませんな、ダメ絶対! 扉壊すは最終手段として取っておくべきです。約30年前元祖アルターエゴたんがいた密室も扉破壊行為を禁じてたそうで、以降アルターエゴたんのセキュリティも同様に扉デストロイは禁止ですしお寿司」
「危な! じゃあ辞めとこ。……つってもなあ……オレはいいけど、NEMIちゃん綴りん疲れてるだろ? 歩き回るのはあんまだよね」
「あの〜綾瀬氏、徒丸クンも死にかけだお」
「アンタはただの運動不足でしょ」
「ぐうの音も出ませんな」

 ガチャガチャと毎回ドアノブを握ってるのだが、回る気配がない。降りてきたハシゴの位置は一応わかるから、ある程度の位置感覚や方向感覚は保てるとしても、全体像が今分からない以上、無闇矢鱈に動くのはただ体力をすり減らしているだけに感じる。

……あ。そうだ、忘れてた」
「お、それ上からの写真? 綴りん冷静、かしこ!」
「そーいや撮ってたね。凄いでしょ? ……見なよ、俺の綴りんを」
「NEMIちゃん何もしてねぇのにめっちゃドヤる」
「真面目委員長で実はクラスで3番目くらいに可愛い系枠と予想」
「あたしのママだし」
「母性も配合!?」
「(好き勝手言うなあ……)」

 ぐるりと見渡したり、屋根の形を観察したりで、おおよその現在地を割り出す。

「多分、……多分だよ、今いる噴水広場が、この地下都市の真ん中くらいだと思う。そこから放射状に道が伸びてる感じ。2人はここから見て、どっちから来たかわかる?」
「わっかんね!」
「某にお任せを。ラプラスたん曰く第12シェルターの、あちら側ですな」

 今歩いてきた第8シェルターを背にすると左前くらいの方向のようだ。携帯の写真と、リュックサックから手帳を取り出してボールペンをノックした。お気に入りの、ちょっとザラザラとした書き心地の黒の0.5。

「ラプラスは確かシェルターは12個稼働してて、今は閉鎖してるって言ってた。合ってるかわかんないけど、壁にある穴……私たちが目を覚ました地下研究施設第何シェルターはおそらく12個。ちょうどいいから時計に見立ててみようか。綾瀬と蔭山が降りてきた12番を北に」
「8時の方向、というヤツですね。オタクにはわかります」
……ということで方角的には、北と西南西あたりは探索済……って感じでいいと思う」

 図解して見せると、皆ようやく合点がいった様子だ。合ってるか分からないが、ハシゴの方向、数的にもそう考える以外思いつかない。

「綴りんすご、天才!」
「初めての場所で、地図を見て歩くのがちょっと得意で……

「オレ絶対迷子になる」
「方向感覚が優れておるのですなあ」