せっかくだし全員喋るまで書こう、ってバカをやらかしたら追加で2卍ウェーイ✌️でした。原案絵や50問50答から若干性格が変わってる人がいますが、こっちが正しいということで。動くとイメージ変わりますね。
10時の方向、北西へ
私たち4人は、北西方向を目指して歩いている。NEMIちゃんと私が8時、綾瀬と蔭山が12時方向から歩いてきたから、そのちょうど真ん中を進んでいる。
「NEMIちゃんってさ、ちなみになんで“ねみ”ちゃんなの?」
「おお、いい質問。当ててみ」
唐突にNEMIちゃんクイズが始まった。現役女子高生、人気急上昇の
Utuber。皆自然と「NEMIちゃん」と呼ぶので「なぜNEMIちゃんはネミちゃんなのか」は盲点だった。
「特に理由ないんじゃね」
「あるわ失礼な。理由は2個あるよ」
「なんでしょう、
眠いと掛かってたりします?」
「
……あのさあ、バラエティって知ってる? 普通ちょっとは大喜利しなさいよ、軽い感じで当てんなバカ」
「不可抗力ですぞ! 異議あり!! いつからバラエティ番組やってたんスか!!」
ちなみに今蔭山が当ててしまった「
眠い」は、NEMIちゃんの動画の質問コメント返信の際話していたので知っていた。配信中にウトウトして寝そうになった事もあるらしいし、快適な睡眠にこだわっているそう。お気に入りのオーダーメイド枕の紹介や、ディフューザーのレビュー動画など結構本格的なものまであり、ファン層が若者だけでなく社会人まで行き届いているのが特徴だ。
「あとなんだろ
……なんかの頭文字とか?」
「綴りんわかる?」
「え、うん
……多分だけど」
これはラプラスの生体認証音声のおかげ。NEMIちゃんの本名は「
天音光希」。あま「ねみ」つきで、NEMIちゃんだ。最初は気付かなかったし、この話になるまで気に留めていなかったが、思い出せばカチッと収まったパズルのようにスッキリした。
「あま
ねみつきで、NEMIちゃんじゃないかな」
「せいかーい! まあリアルネームだから世に出ないものではあるんだけどさ」
呼びやすいし語感もいいしですぐ決まったそうだ。親しみやすいし雰囲気も合っている。
「吾輩の徒然丸日記はそのままですぜ。
徒丸クンなので」
「あ、そういうアレならオレのコートネーム「アヤ」だから、気軽にアヤちゃんって呼んで」
「なんかヤだから綾瀬」
「綾瀬氏」
「綾瀬かなあ」
「ぴえんすぎ、だーれも呼んでくれん。なんなの」
「そこはかとないコレジャナイ感がするんスよ、兄貴」
徒然丸日記──ブログサイト内のアクセスランキング1位、あらゆるジャンルのオタ活記録をまとめた日記メモは、様々なオタクたちの代弁者として信頼の高いものだそうだ。聖地巡礼に行けばマナー喚起を添えるし、写真もプライバシーに配慮した加工を施す徹底っぷりは「オタクの鏡」とまで言われている。SNSでもファンとの交流が盛んだが、年齢不詳を謳っているため「超高校級」であることは伏せられているそう。ネットリテラシーがすごい。
「綴りんはなんかあだ名ある?」
「和歌、はよく呼ばれてたかなあ。あだ名なんてなんぼあってもいいよねえ」
「それな〜」
ここに来て人生で初めて「綴りん」と呼ばれ、結構定着している。悪い気はしないし、響きも可愛くて嬉しいものである。
……こんな謎の地下迷宮じゃなければもっと良かったのに。
「──あ! 人いるじゃん! おーい!!」
「今思ったんだけどオレらめっちゃイイヤツじゃんね。人集めに頑張ってウロウロしてさ」
「ほんそれ」
かなり離れているが、遠くに人影が4つ。こちらの声に気づいて、各々立ち上がった。4人ともスラっとした体格をしており、スタイルが良く見えた。
「仰った通りでしたわね。参りましょうか」
よく目立つのが、銀色の美しい髪を結い上げている「上品」と言う言葉に足が生えて歩いているような女性。遠目から見ると精巧な人形にすら見える。
「ね。思った通り。おーい」
こちらも目立つ整った顔立ち、スラっと手足が長くてスタイリッシュ、世に言う甘いマスク(だと思う)な男性。
「
……、甘いにおいがする」
大きなマフラーで顔の半分を隠してしまっている、コートを羽織った厚着の女性。
「
…………」
難しそうな顔をしたメガネの男性。こちらを見ているのかそうでないのかよくわからない、若干焦点の合ってなさそうな感じがちょっと無気味さを漂わせる。
◆生体認証を行います しばらくお待ちください
◆データ照会 申請 承認 ID確認中
◆生体認証成功
国民ID:EM47266E_N13TP 早乙女 玲央 様
国民ID:IF180614_N40TJ 鷹栖 忍 様
国民ID:IM00AC9A_N17TP 九十九 千尋 様
国民ID:EFF7F6F5_N34TJ 宝生C. ジュリア 様
過去データベースに有害記録なし
健康状態スキャン 良好
心身ともに問題ありません
ラプラスの定義する「市民」に認定
いかにもモテ男そうな人と、お人形さんのような人がすぐにこちらへやって来た。私は背が低いわけではないのだが、彼と彼女はなんだか別世界の人のように感じる。顔が小さくて手足がすらっと長い、テレビの中のモデルさんを見ているみたいだ。
「こんにちは、お初にお目にかかります。
宝生ジュリアと申します。以後お見知りおきくださいませ」
「俺が
早乙女。あっちのマフラーちゃんが
鷹栖ちゃん、メガネが
九十九くんね。そちら方は?」
「あたしはNEMI、インフルエンサー。こっちが図書委員さんの綴りん、ラクロス綾瀬、ブロガー蔭山」
NEMIちゃんのコミュ力に頼りっぱなしの私は、心の底から感謝しかない。どこに行ってもこの人がいればなんとかなる気がしてきた。心強過ぎる。すると、綺麗な瞳をさらにキラリと輝かせたお人形さん──
宝生さんが、NEMIちゃんの手をガシッと取った。
「ま! まあまあまあ! わたくしいつも拝見しておりますNEMIちゃんさま!! 毎日メイクとルームツアーと
ベストコスメと!! こんな所でお会いできるだなんて
……!! 怪我の功名というものですわ、ぜひ握手を!」
「もうしてるもうしてる。ご視聴ありがとうございまーす。よっしゃハグもしたろ」
「はわわ
……!!」
熱烈なファンサにお嬢様が骨抜きにされているのを横目に、とりあえず話進めていい?という顔をするイケメンが肩を小さくすくめた。
「えっと、簡潔に。俺は一応超高校級の資産家。あっちのジュリアちゃんが鑑定士。メガネの九十九くんは数理学を専門に研究してる数理学者。鷹栖ちゃんは──」
「
……あなた、甘いものを持っていますね」
「ひえ」
音もなく背後に立たれていたし、なんだか殺意すらあるし、覇気というかオーラというか、とにかく生きた心地がしなくてゴクリと息を呑む。マフラーちゃん──
鷹栖忍さんは私の背後から、スンスン、と小さく鼻を鳴らすのであった。
「お、音もなく
……!? オレより速いんじゃね
……」
「アイエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!? しかも覇気!? この人属性盛杉!!?」
ガヤを入れずに助けてくれよという文句は飲み込んでおく。冷や汗がこめかみを流れて行った。
「図書委員ちゃん。リュックにお菓子とか入ってるなら分けてあげてよ。
……甘いものが足りないってゴネてたから」
「は、はい! えと
……飴玉でいい?」
「あめだま!!」
殺し屋のような殺気から、飴1粒でチュールを貰った猫へ早変わりしてしまった。なにこれ? 知らん
…という私と資産家
早乙女の悲しきアイコンタクトが静かに行われた。
「その手帳、見せてもらっても?」
「あ、はい
……そんな綺麗なものじゃないんだけど」
「綺麗さより情報が欲しい。
……なるほどね。これ、さっき書いた?」
「上から撮った写真を参考に」
「OKOK。で、16人を中央に集めよって話ね」
早乙女玲央。海外にもネットワークを持つ総合商社早乙女グループ社長のひとり息子。教養の一環として投資の勉強をしたところ、平均的な人間が死ぬまでに稼ぐ金額をサクッと形成してしまいこの冠を頂くこととなった天才。加えてルックスとスタイルも抜群ときた。何度か雑誌の表紙を飾ったこともあるらしい──ドキュメンタリー談。頭の回転が早いのか、彼は私の手帳を見てすぐ納得した素振りを見せた。
「
……どうしたの綾瀬」
「図書委員ちゃんじゃなくて綴りんだし。あと綴りんの手帳綺麗だし」
グルル、と番犬のように威嚇する綾瀬の矛先は早乙女に向いている。どうやら先程のやり取りの中に、彼なりに引っかかるものがあったらしい。
「
……。あ、えと、名前が綴目和歌子で、綴りんて呼ばれてて」
ちゃんと名前で呼べよ。とむくれる綾瀬だが、NEMIちゃんは「綴りん」としか紹介しなかったため、名前を呼ぶにも呼べないのが要因になっている気がして名乗った。その私の思考すら見透かした顔で、
「どうも。じゃあ俺も綴りんちゃんて呼ばせてもらうね、お嬢さん」
「ヒエ」
甘いマスク。世間は彼をきっと流行りの言葉で「メロい」というのだろうけれど、見識のない私は背中がムズムズして終わるだけだった。多分これは「この人のファンの女性に目をつけられたくない」という防衛反応。ハニートラップも私にとっては所詮危険なただの罠、易々と死にたくないものである。
「
……キミはあれかな
……なんだろう。脳筋元気小僧?wwww」
「よしやっぱこいつ嫌い、見下すなボンボン野郎!!!!!!!」
「あーおもしろ、キミからかい甲斐があるわ。なんかそんな見た目してるもん」
「どんな見た目だよ!!」
「え!? 鏡みたことない? 綴りんちゃん貸してあげて」
「ラプラス!! こいつのどこが市民だよ!! 心に問題大アリだ!!!!」
◆ラプラスの生体認証に問題はありません。
「
……らしいけど?」
「クソすぎる」
気配を殺して観戦していた蔭山は、この戦争に「体育会系陽キャvs金持ち爆モテエリート」と名前をつけたらしい。私といえば、同じく気配を殺して鎮火を祈るだけであった。
「あの。あめちゃんありがとうございました。このご恩は忘れません」
「は、はい。どういたしまして
……えっと、
鷹栖さん」
「はい。
………すみません、私も超高校級なのですが、知らない人にはひみつにするよう言われてて明かせません。まことにごめんなさい」
飴玉で元気をチャージできた
鷹栖忍さんは、全く無駄の無い動作で正座し、丁寧に頭を下げたのだ。ギョッとしてたじろいだ私はすぐ頭を上げるよう懇願すらした。
「ちょ、ちょっと! 鷹栖さんやめて、」
ゴトッ。
「あ」
「え?」
「ん!?」
おずおずと立ち上がった鷹栖さんの纏う大きなコートの中から、何かの鈍い落下音がした。頑丈そうなブーツのそばに落ちているのは──
「はわ。うっかり」
「(め、メリケンサック)」
「(メリケンサック落ちなかった?)」
「(あ、この人肉体言語派。吾輩ミンチにされるヤツ\(^o^)/)」
ささ、とそれを懐にしまうと何事も無かったかのような白々しい顔をする鷹栖さんは、改めてペコリと頭を下げた。
「このご恩は忘れませんので、なにかあれば言ってください。護ります」
「ど、どうも
……」
「(綴目氏! これどう見ても護りますというより畳みます的なアレでは!?)」
「(だとしても言えるわけないじゃん! 本人何事も無かったような顔してるよ!?)」
自己紹介は済んだと言わんばかりに、鷹栖さんはスンとした顔に戻ってしまった。言及して拳をお見舞されようものならタダじゃ済まない気がするので、触れずにそっとしておくことにする。触らぬ神に祟りなしだ。
「集合場所はここから真っ直ぐ?」
「うん、広い道を真っ直ぐ行けばわかると思う」
「じゃあモタモタしても時間の無駄だし行こうか。行くよーそこのお嬢たち」
すっかり仲良くなっているNEMIちゃんと
宝生さんは、2人並ぶと「ギャルとお嬢様」という感じで、まるで漫画に出てくるマドンナたちのような華々しいオーラが見える。
「自己紹介遅れて申し訳ございません。わたくしは鑑定士のお仕事をしておりまして、そう呼ばれています。どうぞよろしくお願いいたします、綴目さん、綾瀬さん、蔭山さん」
「よろしくお願いします」
「よろしくな〜お嬢」
「ご機嫌よう〜ですお嬢氏」
第一印象はフランス人形のような精巧な美しさのある落ち着いたイメージだったけれど、どうやら意外と明るい性格らしく、ハキハキ話すしキャピキャピもしてる。人は見かけによらない。
宝生C.ジュリアさん。教養の一環として芸術の歴史を学び、それが土台となって鑑定士として覚醒した名家のお嬢様。聡明さと要領の良さ、そしてなにより生まれ持ったカリスマ性が、この才能をさらに開花させたそうな。価値の高い骨董品には所有者やその血縁の間でいざこざやすったもんだも稀にあり、宝生さんはそれを華麗に解決することもあるそう。
「参りますよ、九十九さん」
「
…………」
「ああ、彼ずっとこんな調子。知らない? 現代のガリレオ」
九十九千尋で特に有名なのは、世界の金融市場や経済の安定化に繋がる数理モデルを開発したこと。現象数理学の観点からデータを解析し、統計データからメカニズムを解明まで、ただの好奇心で成し遂げたのだ。大学の専門専攻で長い時間かけて取り組むようなものを彼はたったひとりで完成。コメントとして「
……ちょっと気になったから」と短く残したという──金融知識に詳しい早乙女談。
「よ、よろしくお願いします」
私の挨拶にぺこ、と軽い会釈だけ返してきた
九十九は、特に会話する意思もないようで、また別の方向を向いてしまった。
「数学とか計算とかにかかれば、多分パソコンに打ち込むより彼の頭の方がずっと早いだろうね。頭の中に高性能なソフトウェア積んでる感じかな。だからずーっとぼんやり考え事してる顔、あんま気にしなくていいと思うよ。多分あっちも何も気にしてないし」
彼の愛想の無さにフォローが入った。ずっとこの調子の九十九、糖分切れで力が出なかったらしい鷹栖さん、ウロウロするより待機を選んだ合理判断の早乙女。さすがの宝生さんも、ここに乗っかる形でじっとしていたようだ。
「なあなあ綴りん、このグループキャラ濃いね」
「属性パラメーター強めに振った感じがしますな」
「(それは多分全員に言えることだと思うよ
……)」
こうして、宝生さん、早乙女、鷹栖さん、九十九の4名は広場へ合流に向かうのであった。
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