榎本奏江
2026-03-28 04:34:26
8215文字
Public 小豆さに
 

【小豆さに】永遠に続く悲しみの向こう側へ

『一瞬の永遠をここで誓おう(https://privatter.me/page/69c6daf7b80bb)』の続きです。
※審神者の元婚約者(故人)のことが書かれています。
※小豆さに連載小説の核心的ネタバレが含まれていますので、連載を読んでいる方は要注意です。


【一日前】
また、夢を見る。
昔に比べたらだいぶ頻度は減ってきたけれど、無くなったわけではない。
たった一度の過ちを、夢の中では何回も何十回も何百回も何千回も繰り返す。
忘れるな、思いあがるな、と突き付けるように忘れたころに、幸せを感じたころに見せられる。
分かっている、知っている。
忘れることも、忘れたいとも思わないから、どうか夢の中ではもう、雄一を殺したくないの。

例え、雄一本人から赦されたってその罪と事実が消えるわけではないのはわかっているから。

◇◆◇

「はっ、はっ、はっ、はっ! ……はぁっ」
「恭香、だいじょうぶか? また、こわいゆめでもみたのか?」
 桔梗は言葉では返事をせず、黙って視線を逸らした。
 日ごとにちごとその夢は鮮明に大げさになる。
 実際は経った一瞬の出来事だったのに、夢の中では誇張されて繰り返される。
 周り声も実際ない声が聞こえてくる。
 ある出来事で成仏する前の雄一と一度、再会して本人から「怒っても憎んでもないよ」と言葉を貰ったのにも関わらず、夢の中では相変わらず自身のことを憎んでくる。
 もしかしたら桔梗の願望なのかもしれない。優しさで赦さないでほしい、どうせならもっと憎んで嫌って、恨んでほしい、と。
 自分を責めて責めて責めて責めて一生赦さないでほしいと。
「大丈夫……ごめんね、起こしちゃ――って、 あず……さん」
 小豆は起き上がり、桔梗を包み込むように抱きしめた。
「むりしなくてもよいのだぞ」
「ん、今は本当に大丈夫。ありがとう。いつも気を遣わせちゃってごめんね」
 桔梗は抱きしめ返し、小豆の背中を数回叩いた。
 顔だけを離し、小豆の顔をしっかりと見つめる。
「あなたの方が辛そう」
「それは、きみみがずっとくるしいおもいをしているからなのだぞ」
「そうだよね、ごめんね。本当にあずさんは優しいな。ごめんね、私だけの問題なのに、ここまで関わってくれて、側に居てさせてくれてありがとう」
「あたりまえだ。きみはわたしの【はんりょ】だ。わたしのたいせつなそんざいがつらいとき、なにもしないわけはないだろう?」
 小豆は桔梗の左手を握り、薬指に付けられた、桔梗の誕生日に贈った指輪に口付ける。
「ん、そうだね……ありがとう」
 桔梗も同じように小豆の素肌に付けられた左手の薬指に付けられた指輪に口付けた。
 ――ああ、重くなっていた気持ちが軽くなる。
 だからこそあの日、見た夢を思い返すと今の幸せが、小豆が支えてくれる現実が苦しくなる。
 ――私は、もし、何かしらの形であずさんを失ってしまったらどうなってしまうのだろう。想像したくないけれど、考えてしまう。いや、いつか必ず何かしらの別れが来るのは分かっているはずなのに、あなたが居ない世界が想像できない。私はどうやって生きていけばいいのだろう?