望野おもち
14334文字
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DRAPLS/Prologue①

エイプリルフールですね。勢いで1卍ちょい。
材料ここから▶︎ https://privatter.me/page/6940f34bc9db9
エイプリルフールですからね。




 ──ぴぴぴ、ぴぴぴ……

 6時半のアラームを寝ぼけながら黙らせて、布団の中で眠気と戦う辛い10分間から1日はスタートする。もう少し寝たい、いっそ布団の中で過ごしたい、むしろ布団が出してくれない……と色んな言い訳をしながら、誠に不本意ながらのそのそとベッドから這い出る。

 母は看護師で、今日は夜勤。父は出張で3日前から出ている。4個下の妹はまだ寝ているようだ。放っておこう、最高に機嫌が悪いに決まってる。触らぬ神に祟りなし、一応隣の部屋に向かって「起きろー」と声だけ掛けておいた。

 卓上ポットのスイッチを叩いて、リビングのカーテンを開ける。セットしておいた炊飯器の湯気に包まれながら、しゃもじで白米を切るように混ぜる。愛用のお弁当箱にホカホカの米を半分敷き詰めて、冷蔵庫から昨晩作っておいた卵焼き、瓶の鮭フレーク、ケチャップ、冷凍庫からカットほうれん草、ナゲット、週末作ったストックのミニハンバーグを取り出しそれぞれ放り込んだ。

「(あ、ほうれん草無くなった)」

 冷凍モノたちは保冷剤の役割も果たす便利アイテムで、食べる頃には自然解凍されているだろう。お弁当の蓋は出発する前に閉めるから、昼ごはんの準備はここまで。「寝起きは悪いけど、1度起きたらテキパキ動く」と母に言われたことがある。まさにその通りである。もう目は覚めた。

 お弁当の準備中に卓上ポットがカチッと鳴るので、マグカップに移しておいた白湯を口に含む。身体にいいとネットで見たが、枕詞は「知らんけど」だ。女の子は身体を冷やさないようにと医療従事者お母さんが言うのだから、理由が何であれ悪いものでは無いことは確かである。

 お茶碗に白米、さっき使った鮭フレークを散らして卵焼きの端っこも乗せる。そういえば海苔の佃煮が余ってたのでスプーン1匙分白米にトッピング。赤いお椀にはストックから引っ張り出したインスタントの味噌汁をスタンバイする。今日は長ネギだ。さっきの卓上ポットの湯を注いで朝ごはんは完成。おかずが沢山乗ったお米と、お味噌汁。小皿を使わないのは洗うのが面倒くさいのではない、水の節約だ。こういうのはチリツモズボラである。

 携帯を触りながら食事を済ませて、時折テレビの天気予報に耳を立てながら皿を洗う。これで7時半。洗顔して日焼け止め、眉毛を整えて、髪をセット。将来困らなさそうな毛量だが、現在進行形で外ハネ、広がり、パサつきが深刻だ。面倒なので束ねて簡単に団子にしてしまう。毛が重すぎるので、髪ゴムの寿命は2週間頑張れたらいい方だ。これで7時55分くらい。忘れ物がないかリュックを確認し、お弁当と箸、保冷剤、おやつのひとくちチョコを保冷袋に放り込む。

「詩織ー。もう出るからねー」

 ここで本日の星占いを見て、気合いが入ったり入らなかったりで家を出る。お気に入りの待受画面の時刻はちょうど8時。耳にはワイヤレスイヤホンをねじ込んで外の音をシャットアウトした。徒歩10分、電車10分、徒歩10分、合計30分間の通学がスタートする。

 オカルトじみたものには懐疑的だけれど、占いの順位がいいと気分も軽くなる。ところが今朝の占いは最下位だった。病は気からと先人は有難い言葉を残してくれているし、だいたい8位より下の日は星占いの結果を気の所為にしている。昨日は10位で気の所為、今日も気の所為、見なかったことにしよう。それでも何か都合のいい結果はないかと他の星占いサイトをサーフィンしても、今日の牡羊座は軒並み最下位。なら血液型はどうか? B型は4位、つまり最下位。干支も最下位だった。

SHIORI「お姉ちゃん」
SHIORI「なんで起こしてくれなかったの!?」
SHIORI「スタンプを送信しました」
SHIORI「スタンプを送信しました」
SHIORI「スタンプを送信しました」

 ポコポコと携帯の通知がうるさい。知るか。行ってきますの前もう一度声をかけたのに文句を言うな。2回起こしたけど無視したのは妹の方だ。自分と性格が正反対の妹は、本当に同じ母親の腹から生まれたのか不思議に思うほどである。すると、

綴目ゆり「わか、起こしてあげなよ」
綴目ゆり「詩織は遅刻しないようにね」
綴目大介「戸締り忘れずに」
綴目大介「スタンプを送信しました」

 ゆりが看護師の母、大介は出張中で建築士の父。詩織が中学生の妹だ。なぜこのトークルームで自分が悪いような空気になっているのだろう。納得がいかない。自他ともに認めるしっかり者だが、自分は姉であり母親になった覚えは無い。妹には一刻も早く自立して欲しいものである。のらりくらりと甘えて、頼って、人任せにして楽をする妹を、憎みはしないが呆れはする。表では愛嬌があるとチヤホヤされているそうだが、姉に対してこんなにも自分勝手。あながち今日の占い最下位は間違ってないのかもしれない。

綴目つづりめ 和歌子わかこ「2回起こした」
綴目 和歌子「起きないしおりが悪い」

 ちょっとむしゃくしゃしたので、二言メッセージを送ると携帯をポケットにねじ込んだ。寝起きの悪い人間を根気よく叩き起すほど女子高校生の朝に時間の余裕はないのだ。責められる筋合いは無い。

 とはいえ。言葉がキツかったかなとひとつまみ分の後悔に心が濁る。なんだか嫌な気分だ、ツイてない。こういう日は決まって良くないことが連鎖的に起こる。今日はブレーキを強めに握るくらいの気持ちで過ごした方がいいだろう。