こあらん
2026-03-14 08:48:47
20098文字
Public ロベシエ
 

Please, look at me /ロベシエ(R18)

シエテの無自覚片想い+バレンタインデーがテーマです。一応。
バレンタインデーの前日に始まり、ホワイトデーに二人がくっつくお話。シエテが恋愛に非常に臆病です。メンタルツヨツヨお兄さんではありません。解釈違いの気配を感じたら回れ右。
えっちシーンはありますが、全体の15%くらいです。
基本的にロベリア視点。2ページ目だけシエテ視点




 艇が停泊している町外れの集合地で、木々がまばらに生えた場所──そこにシエテはいた。昼過ぎの強い日差しがシエテの肌を煌めかせ、穏やかな風が彼の髪をゆったりと揺らしている。腕を組みながら、ぼんやりと周りの様子を見ながら、一緒に依頼を受ける団員を待っている。久々に見るシエテに、ロベリアの胸は喜びで高鳴った。やっとやっとだ!と逸る気持ちを抑えながらロベリアが近づくと、シエテは顔を上げ、目を見開いて驚いた。
「え、この依頼、お前とだけなの?」
 まさかロベリアだけだとは思わなかったのだろう。心底驚いた顔をして、ロベリアをじっと見つめており、声も心なしか震えている。予想外の流れでどう動こうか迷っている様子だ。ロベリアは軽く笑いながら、素知らぬ顔で答えた。
何か不満かい?依頼内容は団長から聞いていたんじゃないのか。ホワイトデー当日で細かい依頼が殺到していて、全員が忙しいのはキミも知っているだろう?」
………

 ジロリと、シエテの鋭い瞳がロベリアを睨む。ロベリアは、そんな冷ややかな視線を軽く肩をすくめながら流した。今の状況を見て、ロベリアがグランに頼み込んだ依頼ということにすぐに勘づいたのだろう。確かにその通りだ。『シエテと仲直りがしたいから、二人っきりで依頼を引き受けたい。ただ、シエテにはオレのことは言わないでくれ』そう、グランに頼み込み、グランは悩んだ末に了承し、こう言った。『今回だけだよ?だから、ちゃんと仲直りする事。シエテには上手く伝えるから』

──ウィ、分かっているさ、グラン。このチャンスを無駄にはしない。

 そう、頭の中でグランに話しかけながらシエテを見る。目を細め、口端を上げながら

キミが同伴なら、グランがいなくても安心してオレを外に出せるって、グランが言っていたぜ?」
 グランの名前にシエテはピクリと反応し、眉間にしわを寄せながら目を閉じ、大きなため息を吐いた。まるで、何かひと言ロベリアに告げたいのを我慢しているように。それから頭を軽く左右に振り、ロベリアよりも前へ進もうとする。ロベリアはそんなシエテの様子を、目を細めながら見つめる。
グランちゃんからの頼みなら仕方がないね!それなら、いこうか!」


 口調はいつものシエテだが、その視線はロベリアに向けることは無かった。



 依頼は、町の付近の森にいる手配された魔物の討伐という簡単なものだった。所詮、シエテと二人っきりになる口実の依頼だから、グランも簡単なものにしたのだろう。ロベリアとの会話は極力避けようとするシエテだが、戦闘中は普段通り完璧にこなした。連携もいつも通りで、久々のシエテの美しい剣捌き、そしてそれに連なる音を聞くことができて、ロベリアは懐かしさで嬉しくなった。集合時間が遅かったからか、単純な依頼にも関わらず、終わったのが夕暮れ時になってしまったが。

「それじゃあ、帰ろうか」
 そう言いながら、シエテはロベリアから背を向け森から出ようとする。シエテの背中から、夕暮れ前の強い太陽の日差しが差し込み、髪が金色に輝いていて美しい。眩しくてよく見えないその姿が、まるで消えゆく幻影のように感じた。 

──これは、このまますぐに帰って逃げるつもりだな
 そう思い、ロベリアは口を開けた。


「シエテ、……キミ、何かオレに言いたいことがあるんじゃないのか?」


 その言葉に、シエテは一瞬ピクリと固まった。それから、くるりとロベリアの方へ振り向き、ニッコリといつものニヤケ面をロベリアの前に晒す。あまりにもわざとらしくて、ロベリアは思わず笑ってしまう。
「えー、別にないけど?」
「くははっ、とぼけるなよ。こんなに長い間オレを避けていたくせに。なかなか捕まらなくて、苦労したオレの身になってくれ」
「え、……そうなんだ」
 最初のわざとらしい笑顔の仮面は、ロベリアの一言により一瞬で剥がされる。ロベリアがずっとシエテを探していたとは夢にも思わなかったようで、呆気にとられたように立ち尽くし、ぼうっとした様子でロベリアの話を聞いている。そんなシエテに近付こうと、ロベリアはゆっくりと一歩踏み出し、前に出た。シエテの吐息が微かに聞こえる程の距離が、二人の今までの隔たりをゆっくり溶かしていくようだった。
……あの日からずっとキミの事を考えていたんだぜ?」
「あれは、ごめんって。別に深い意味はなかったんだからさ……もう忘れてよ〜」
 低く、まるで囁くような声でロベリアはシエテに呟く。寂しかった、会いたかった──そんな感情を乗せながら。それでもシエテはロベリアの方は見ず、目を逸らして大地の方を見る。

「へぇ……
 だが、頬がほんのり紅くなったのを、ロベリアは見過ごさなかった。
 やはりこれは。ロベリアの胸の中でずっと期待していた感情が湧き上がってくる。小さな種火が徐々に燃え上がって大きな炎となろうとしている。昂ぶる気持ちを抑えつつ、シエテを見つめる。
「なに? 」
 ニヤつきながら見つめているロベリアを不審に思ったのか、シエテの視線はロベリアに向けられた。
いや、キミが思った以上に強情だったから、ね
「え、なに?喧嘩なら買うよ?」
 キリッと睨みつつ、シエテは一瞬の殺気をロベリアに向けた。ガラスのような美しい蒼い瞳が、鋭く刺すようにロベリアを見つめる。ピリピリと肌からその緊張感を感じつつも、ロベリアは一切動じない。今のシエテはまるで手負いの獣──いや、目の前の敵に威嚇する小動物だ。瞳の奥には動揺が見える。全く怖くない。むしろ、その姿がロベリアの好奇心を煽っていると気付かなかいのかロベリアは思わず吹き出してしまう。
「おいおい、何をそんなに怯えているんだい?エレガンスじゃないぜ、もう少し落ち着いたほうがいいんじゃないか。オレはキミとゆっくり話がしたいだけ、さ
 目を閉じ、両手を上げて肩をすくめている様子のロベリアを見ながら、シエテははぁっと大きなため息をついた。そのまま、眉をしかめ、じっとロベリアを見つめる。柔らかなそよ風が、ふわふわとシエテの髪をなびかせている。次の言葉を待っているようだ。まだロベリアとシエテとの距離は数歩ほどある──これでは、話せることも話せないな、とロベリアは思った。


 ロベリアはじっとシエテを見つめながら、一歩、また一歩と近付いた。近づいていくロベリアに気付き、シエテは後ずさるも背後の木にあたり一瞬怯む。その隙に、ロベリアは一気に近付き、逃げ道を塞ぐように木に背を預けたシエテの横に片手をドンッと叩きつける。シエテは顔を引きつらせ、ふざけたノリでロベリアに向けて話し出す。
話をしたいみたいだけど、こんなに近付く必要なくなーい?」
「ノンノンっ、オレはキミに散々逃げられていたからな。これくらいしないと、キミはまた逃げるかもしれないだろ? 」
 “逃げる”という言葉に反応し、シエテの視線が泳ぐ。身体も一瞬ビクついて、非常にわかりやすい。脈も少しあがり、明らかに動揺している。ロベリアは真剣な表情でシエテを見つめ、ずっとシエテに聞きたかった事を口にする。
………それで、 なんでオレから逃げていたんだい?あんなに頻繁に会っていた“お友達”が急にいなくなって、この一ヶ月、寂しかったんだぜ? 」
「そ、それはただ、忙しかったからで深い意味はないよ 」 
「へぇ。わざわざオレの部屋から離れた部屋で寝泊まりしたり、オレに会わないようにしていたのにかい。キミ、オレが近づいて来たら気配消して逃げていただろう?知っていたぜ
……そ、それは……」 
 ロベリアが一言、言葉を口にする度、シエテの言葉がつまり、視線が彷徨う。そんなシエテをロベリアはじっと見つめる。熱い、真剣な眼差しで、シエテの言葉を待つ。空もいつの間にか夕焼け空で、オレンジ色の光が二人を照らす。シエテの髪や肌が、いつもよりも少し紅く染まっていく。

ご、ごめん。ちょっとどう顔を合わせたらいいかわからなくて……逃げてた
「へぇ、なんで?」
…………
 ぽそりと、弱々しく答えるシエテからさらに質問を投げかけると、また黙ってしまった。もう一押しだな、と内心思いながら、ロベリアはにやりと、不敵な笑みを投げかける。
ああ、あの冗談の事なら気にしてないぜ?キミも、オレを避けているのはそれが原因じゃないんだろう?」
……うっ……
 図星だったようで、シエテの言葉がつまる。チラリと、ロベリアの様子を見る視線が頼りない。

 ──しかし、ずっとこの態度のままだと、埒が明かないなそう、ため息をつきながら考える。もう、シエテから言葉を引き出すのはこの辺でいいか。ロベリアはもう我慢できず、両手でシエテの肩をガシッと掴んだ。シエテは驚き、ロベリアの方に頭を向ける。シエテの吐息や、心臓の音がよく聞こえる距離まで近づく。瞳が大きく見開かれ、澄んだ空のような瞳が丸くなるのがよく見える──顔が近い、身長が同じくらいだから当たり前だ。ロベリアはそのまま、自分の唇をシエテの唇に重ねた。


 初めてのキスは一瞬ででも、何故か長く感じた。シエテの柔らかくて熱い唇の感触、そして甘いシエテの匂い──初めての感覚に、ロベリアの頭は熱くてくらくらしそうだった。唇を離したら、瞳を開かせ、固まった表情のシエテの表情が見えた。そんな様子のシエテなど、構わずロベリアは目を細め、切なそうな表情でシエテに訴えた。

「好きだ。キミも……オレのことが好きだろう?」

 熱っぽく、震えた声で告白してきたロベリアに、シエテは口に腕を当てながら驚く。顔は耳まで赤く、真っ赤だ。拒否しようとするように体を引くが、力が抜けてしまっている。
「は………??な、なんで……!?」 
「キミが離れた時のあの顔が忘れられない。キミのあの熱い、オレを求めているような視線……。アレでオレは、キミが好きだと気付かされたんだぜ?」
 ロベリアをじっと見つめているシエテの瞳が、大きく見開き震えている。シエテにとって思いもよらない、ロベリアからの言葉だったのだろう。先ほどから耳まで顔が真っ赤で、言葉を紡ごうにも何も出てこない様子だ。そんなシエテを見ながら、ロベリアは薄く笑いながら、甘い声で囁いた。
……そんな、キミが、オレの事を好きじゃないわけ、ないだろう?」

「なぁ、シエテ」と言葉を続けながら、シエテの頬をそっと撫でる。まるで壊れ物を扱うかのように優しく、何度も何度も。
「──っ……!」
 その度、びくっとシエテの身体が震え、息を飲む音が聞こえる。ロベリアからの熱い視線が気恥ずかしいのか、視線が空中を漂う。空も日が沈みつつある。さらに強い、深い茜色の光がシエテの頬を照らし、赤色に染め上げいく。でも、この色全てが夕焼けの光だけではないだろう。

何がキミをそんなに臆病にさせているのか分からないが。いい加減、自分に素直になった方がいいと思うぜ。ほら、キミのここ
 そう言いながら、ロベリアはシエテの心臓のあたりを指で優しく、トントンと突く。自信に溢れたエメラルドの瞳が、熱烈にシエテを捉えて離さない。
「さっきから、オレの事が大好きって必死に訴えている。くははっ、もう爆発しそうだな
「────っ!」


 無言の静寂が、二人の間を包み込む。その間、ロベリアはシエテから目を離さず、じっと強く見つめていた。シエテはその間、無表情なまま視線はじっと遠くを見ていて、感情が読み取れない。どのくらい、待っただろうか。この静寂を打ち破ったのは、意外にもシエテだった。ハハッと自嘲気味に小さく笑い、眉を下げながらロベリアを見つめた。  
……はぁ、お前には隠し事できそうもないね。逃げても無駄だって、わかったよ

 瞳を閉じ、ふぅっと息を吐いた後、蒼い瞳が揺らぎ、恐怖と喜びが混ざった光を宿しながらロベリアを見つめる。覚悟を決めたような強い決意が瞳の奥から溢れていた。シエテはそのまま、言葉を続けた。
……そうだよ、ロベリア。お前のことが好きだよ。関係が変わるのが怖くて逃げてた……ごめんね」
 淡く微笑む彼の表情が、夕焼けに照らされて儚く輝いていた。空色の瞳は暖かな光に溶かされ、優しい光の粒を宿すように揺れている。それは、あまりにも美しい情景で、ロベリアの心を強く揺さぶられ、理性が一瞬で吹き飛んだ。
……シエテっ!!」
 抑えきれない衝動に駆られ、ロベリアはシエテを強く抱き寄せた。──やっと捕まえた!その喜びを表すかのように、腕に力がこもり壊してしまいそうなくらいに。唇が、再び重なり合う。柔らかくて、温かくて、気持ちがいい。シエテの手が、ロベリアの腕をギュッと掴み、緩く自分の方に引き寄せていた。




※※※※※※


──バレンタインの渡しそびれたプレゼントを渡したい、落ち着いたら部屋に来てくれないか?


 艇に戻った時にロベリアはシエテにそっと部屋に誘い、シエテは恥ずかしながらも夕食後にロベリアの部屋に訪れた。依頼後に身綺麗にしたようで、軽装で来てきている。シャツから見える白い素肌が魅惑的だ。あまりにも無防備だな、と内心ロベリアは思いながら、シエテをベッドに座らせた。ロベリアも隣に座りつつ、サイドテーブルにずっと置いてあった、菓子箱をシエテに渡した。
「本当は当日に渡したかったが。ジュテーム、シエテ」
「あ、ありがとう
 まさか、バレンタイン当日にロベリアが用意していたとは思っていなかったようで、感慨深そうにプレゼントを見つめている。よほど嬉しいのか、瞳がきらきらしている。その隙にロベリアは、シエテをベッドに押し倒そうとした。──が、


「ノン!シエテ!何故抵抗するんだっ!?」
「そりゃ、そーでしょっ!!?いくらなんでも早すぎだからっ!?こーいうのは順番っていうのがあるでしょー??」
 シエテは一瞬で、ロベリアの様子に気付き、ロベリアの両手を掴んで抵抗した。バランスを崩して、ベッドに倒れたが、必死でロベリアがシエテを組み敷くのを防いでいる。ギリギリと二人の腕に力が入り、押して押し返す力の競り合いのなか、シエテが顔を上げて驚きながら叫ぶ。
「っていうか、お前、力ありすぎっ!魔術師じゃなかったの!?」
くっ、そんなのは、今、関係ない、だろうっ!?」

 抵抗するシエテに、息を荒げながら必死になってロベリアは自身の腕に力をこめる。ロベリアは、とにかく必死だった。一ヶ月もシエテに逃げられ、ずっと心の中で溜まっていた劣情がもうはち切れる寸前だ。それに、シエテの事だ。何かしらの原因でまたロベリアの元から離れ、逃げる可能性だってある。ロベリアはとにかく、今晩シエテと肉体関係を結んで、“恋人同士になった”という既成事実を作りたかった。とにかく、もう我慢できない──このままシエテを自分のモノにしたい、今すぐに!焦った形相で、ロベリアはシエテを見つめながら、絞り出すように声を出す。
「やっとの事で、キミを、捕まえ、られたんだっ。もう、お互い想い合っているんだいいだろう?ずっと、オレはキミを
「で、でもさぁ。こ、心の準備ってものがあるし
 シエテにとっては、ロベリアに再会してから予想外な事が続きすぎて、全てに置いて心の対応ができていなかった。今日一日で、ロベリアに会い、告白され、恋人となり、キスまでした……意識してしまい、距離を置こうと思っていた人物に、である。もう、色々な事が起きすぎて頭がパンク寸前だ。頭が熱くて湯だってしまいそうだし、さっきから心臓がうるさいくらい鳴り響いている。こういう時、どう対処していいかわからず、困惑し、気恥ずかしい顔でロベリアを見つめ続ける。ロベリアはそんなシエテの思いなど、気にせず真剣な顔で見つめている。熱い、エメラルドの瞳がずっとシエテに訴えかけている。

そう言って、キミはまた逃げるんじゃないか?一ヶ月、オレを避けてた事忘れたわけじゃないよな?」
「───っ……!!」
 一瞬シエテの腕から力が抜け、力が弱まるのをロベリアは見逃さなかった。そのまま力を込め、シエテの腕を白いシーツの上に縫い付ける。シエテはそのまま抵抗せず、ロベリアはシエテの上に覆いかぶさる。急に静まったロベリアの部屋にギシッとベッドの軋む音と、二人の鼓動が響き合う。ロベリアに捕らえられ、身動きが取れなくなったシエテは、眉を下げ困ったような顔をしながらロベリアを見上げる。はぁっと吐くシエテの息が甘く、熱い。
「お前さぁ、ずるいよ。それは
 まるで、観念しました、と言わんばかりの表情で、ロベリアの心臓はどきりと高鳴った。顔を近づけると、シエテの息が詰まる音がした。シエテの細く、ふわふわな髪を撫でるように触れながら、甘く、掠れた声で囁いた。

「ホワイトデーのお返しとして、キミが欲しい

 熱の籠った瞳で訴え、ロベリアはそのままシエテの唇へと触れようとする。


──いや、お前から今貰ったばかりだけど……

シエテは、そう思いながらロベリアからのキスを、瞳をゆっくり閉じながら受け入れた。


「ふっシエテ
 ちゅっちゅと部屋に唇が重なる音が混じり合う。ロベリアは、今日初めて体感するシエテの唇を思う存分堪能していた。弾力がある、厚みのあるシエテの唇は、触れていて気持ちよく、ずっと味わっていたくなってしまう。
「んっはぁ
 角度を変えながら、夢中でキスを続ける。
合間にシエテの口から漏れる熱い吐息がたまらない。それを耳にする度、身体の奥で燻っている欲情がじわじわと燃えたぎり、熱くなってくる。我慢できなくなり、シエテの空いた口の隙間から自分の舌を捻り込む。新しい刺激にシエテの身体はびくっと震え、ロベリアの舌を控えめながらにも向かい入れる。
「ふぁっっ、んっ
 シエテの呼吸が荒くなり、声も一層甘くなり、聞いているだけで下半身が熱くなる。ずっとこの声が聞きたかった。想像していた以上に艶めかしい。
 そっと、シャツの隙間から手を入れシエテの肌に触れる。ほどよく鍛えられている腹を撫でる。シエテの肌に触れるたび、ロベリアの息は荒くなり、興奮して脳の血管がはち切れそうなくらいドクドク鳴っている。

「ま、待ってロベリア」
 ロベリアから顔を離し、シエテがぽそりと呟いた。
「ん、なんだい?シエテ」
「あ、あのさぁ。こういうの、は、初めてだから、さぁ
 頬を赤らめ、上目遣いでロベリアを見つめるその姿は、今まで見たことがないシエテだった。先ほどまでのキスで瞳は潤み、恥ずかしいのか、もじもじとしている。ああ、こんな顔もするんだな──ロベリアの中で、何とも言えない疼くような愛おしさが湧き上がってきて、無意識に笑みが溢れてしまう。
「大丈夫さ、シエテ。オレもさ
 そう言い、ロベリアは再びシエテの唇に被りついた。キスをしながら、ロベリアはシエテのシャツに手をかける。


 ロベリアはシエテのシャツをゆっくり脱がし、白い肌を露わにした。目の前に、傷ひとつない素肌が晒され、その美しい滑らかな肌にロベリアは思わず感嘆な息を吐き、そっと触れる。
……なに?」
 じっと見て、素肌に触れるだけロベリアを不審に思ったのかチラリとシエテはロベリアを見つめる。
「いや……
 全空最強と銘打っているのだから、傷のひとつやふたつあるのかと思っていたのに、全く傷跡がないとはこれには正直驚いた。流石、というべきなのだろう。ロベリアは思わず首筋に唇を当て、強く吸った。
「ひゃっ、ん
 シエテはびくっと震え、甘い声が漏れる。吸った箇所を見ると、そこには赤い印がつき、ロベリアは思わずごくりと喉を鳴らした。

──傷ひとつないシエテの素肌にオレのキスマークがついている

「──っ、あっ……ん、あぁっ!」
 まるで、長い間大切に扱われた骨董品を壊す権利を得たような興奮が昂り、ロベリアはキスマークをあちこちにつけていく。その度、シエテの吐息がさらに熱くなり、声も艶のあるものになってくる。たまらなくなり、ロベリアも一気に服を脱ぎ捨てる。シエテの視線がロベリアを捕らえているのを感じた。ロベリアは得意げになって笑う。
見惚れたかい?」
「ち、ちがっ!意外に筋肉があるなって思っただけだよっ!」
「くははっ、……嬉しいね」
 頬をさらに赤らめ、叫ぶシエテが可愛らしくて、笑いながら腰を抱き寄せた。二人の時間はまだ始まったばかり。もっと、今まで知らなかったシエテを見たい、そう思いロベリアの右手はするすると腰から下へ滑らせていった。


「──んっ、あっ……ふぅ、うぅっ」
 シエテの秘部を優しく慣らしている間から、声を必死に抑えていても漏れてくるシエテの喘ぎ声がロベリアの興奮を煽る。早く入れたい衝動にかられつつも、入念に準備をしている。シエテはその間、恥ずかしそうにただ受け入れているだけだった。目を強く瞑って羞恥心に耐え、両手で強くシーツを握りしめている。口を必死になって閉じて、声を出さないようにしていても、耐えられなくて、愛らしい吐息が室内に響き渡る。そんな中──

「あぁっ……ち、ちょ、なに!?」
「ああ、ここか
 身体が跳ね上がり、シエテの声も高くなった。中も急に締まった。ようやく見つけた、シエテの一番気持ちがいい場所。ロベリアは興奮が抑えきれず、執拗にその部分を指で撫でる。
「んぁぁっ、はっ……あぁっ、ろ、ロベリアま、まって、あぁあっ!」
「あぁあぁ、その声いいな
 もう我慢できない。早くシエテと繋がりたい。そうロベリアは思い、指を抜き、自身の先端を秘部に当てる。


「シエテ……
 ロベリアはシエテの瞳を見つめ、ゆっくりと繋がっていく──。ぐぐっと奥に進むたび、シエテの身体がこわばる。中は初めてのモノを受け入れ、とても狭い。
「シエテ大丈夫かい?」
 少し苦しそうなシエテを見つめ、ずっと真っ赤な顔の額にキスをしたら、ほんのり汗の塩味がした。
「うん、へーき……あれ?」


────ポロッ


  シエテの瞳からポロポロと涙が流れ落ちてくる。止めどなく流れてくる涙が頬を伝う。シエテ自身も自覚していなかったのか、驚いた様子で濡れた頬を拭う。
「シエテ……?」
「はは、正直、お前とこんな事になるなんて思わなかったからさぁ
 眉を下げ、困惑したような顔でシエテはふっと笑みを溢した。ロベリアはそのシエテの表情を見て言葉に詰まった。

この涙は、痛みからではない。繋がった時の歓びの涙だ

 先ほどから、シエテの心臓ははち切れんばかりに鳴り響き、青い瞳は潤み、静かにロベリアを鏡のように映し込んでいた。言葉にできない「好き」をずっと伝えてきている。シエテの中も、きゅうきゅうとロベリアを締め付け、震えながら歓迎している。さっきからずっとシエテの身体全てが、ロベリアを好きだと訴えて続けている。鈍感なこの男は、自分の感情に気付かないままずっと我慢していたのだろう。

「シエテ……

ロベリアは覆いかぶさるように密着し、シエテの唇に吸い付くようにキスをした。シエテの腕が、遠慮がちにロベリアの背中に回された。
「全く、キミは考えすぎだな。だが、そこがまた
「──っ、うっ……んぁあっ!」
 顔の周りにキスしながら、ゆっくりと腰を動かし始める。強い衝動に、シエテは声を必死に抑えても漏れてしまう。中も狭くて、熱くて、気持ちがいい。ロベリアが動かす度に締め付けてくる。初めての例えようのない快感に、無意識にも腰の動きが早くなってきてしまう。そして──

「───っ!?うあぁっ!」

 ある場所を突いたら、シエテの声がより甲高く、甘い声になった。さっき見つけたシエテの“いいところ”。指で刺激した時よりも、反応がいい。声もより色香が出てきて、シエテがこんな声を出せるとは思わなかった。もっとこの声を聞きたくて、ロベリアはひたすらその場所を突き続ける。

んっ、……あっ、そ、そこっダメぇっ!や、やめっアァっ!」
……ダメ?ノン、気持ちがいい、だろ?シエテ
……はぁっ、あ……んっ!こ、声、でちゃっあぁっ!」
 シエテの耳元で囁きながらも、ずっと同じところを刺激し続ける。シエテは声を抑えるのに必死で、手はロベリアの肩を強く掴んでいる。これはこれで悪くはないが、ロベリアはシエテの理性の壁を壊して、もっとシエテの声を聞きたかった。

「シエテっ!声をおさえないでくれ!聞かせてくれっ、オレのオレの名前を呼んでくれっ!」
「うっあぁぁっ!はあ、はぁぁ……っん!」
 ずっと新しい快感の海に浸っているシエテに、ロベリアの声が届いているのかわからない。だが、徐々にシエテの声が抑えきれず、大きくなってきている。艶めかしいシエテの喘ぎ声が部屋中に響いてきて、それが一層ロベリアの興奮を煽り、胸を高鳴らせる。ロベリアは限界に近かった。強く、奥へ、奥へと中を突き続けば、中はよりロベリアの形にあわせ、包み込み、締め付ける。もう、自分の快感を追い求める事でいっぱいいっぱいだった。ロベリアが強く腰を動かすほど、シエテの身体はびくびくと震え、高い声を鳴らす。
「あぁシエテっ!シエテっ!」
 腰を動かしながら、ロベリアははち切れんばかりのシエテの中心に手を伸ばす。触れると、中がロベリアを更に強く締め付け、ロベリアの興奮が頂点に達した。
「あ、あぁっ!や、ロベリアっ!も、ダメっ、ロベリアぁぁっ!!」
「──っ!!」
 シエテが初めてロベリアの名前を呼びながら達し、それが嬉しくてロベリアも同時に果てた。今まで体験してこなかった幸福感がロベリアの心の奥を満たしていく。

──あぁ、こんな表情、初めて見るな

 果てた後、シエテの顔をロベリアは感慨深げに見つめる。シエテの身体は小さく震え、吐息が甘く漏れ続けている。瞳はぼんやりとして、だが幸福に浸ってて蕩けているような表情で、なんとも言い難い、可愛いらしくもあり、妖艶だ。今日は今まで知らなかったシエテを沢山見た。これらの表情を知っているのはロベリアだけ、そう、これからもずっと。そんな独占欲がふつふつと湧き上がってくる。

 嬉しさと高揚感に包まれて、ロベリアは思わずシエテの顔の周りにちゅっちゅとキスをする。
「ちょっとちょっと〜、くすぐったいよ〜」
デゾレ、キミが可愛いらしくてつい」
 新しい刺激にシエテはクスクスと笑いながらロベリアを見つめる。嬉しそうなシエテの表情に、何気ない会話それだけなのに、ロベリアの心は満たされていた。

「シエテ
 ロベリアはシエテの頬を撫でながら、真剣な表情でシエテを見つめた。
「もう、ここまできて……逃げてくれるなよ?」
 そのエメラルドの瞳は熱意を込めてシエテに訴える。シエテはそれを見て、眉を下げながら目を細めた後、瞳を閉じながらゆっくり囁いた。
「うん、それは……わかってるよ
 目を開き、しっかりとロベリアを見上げる。果てた後だからか、その瞳はまだ潤んでいてまるで空が輝いているみたいに美しい。シエテはそのまま、ぼそっと呟くように言葉を続ける。
「来年
うん?」
「来年はちゃんと、あげるよお前に

 その時のシエテの表情を、ロベリアはきっと忘れないだろう──何かを諦めたような、それでいて腹を括ったような非常に複雑で、でも瞳は強くロベリアを捕らえている。

 ロベリアは嬉しくなってたまらず、恋人の名前を叫びながら、強く抱きしめた。