こあらん
2026-03-14 08:48:47
20098文字
Public ロベシエ
 

Please, look at me /ロベシエ(R18)

シエテの無自覚片想い+バレンタインデーがテーマです。一応。
バレンタインデーの前日に始まり、ホワイトデーに二人がくっつくお話。シエテが恋愛に非常に臆病です。メンタルツヨツヨお兄さんではありません。解釈違いの気配を感じたら回れ右。
えっちシーンはありますが、全体の15%くらいです。
基本的にロベリア視点。2ページ目だけシエテ視点




『ロベリア』

 タワーに名前を呼ばれ、ぼうっとしていた意識がはっと引き戻された。今日はタワーと共に仮想空間で楽しむつもりが、ぼんやりしてしまった。今までの自分ならあり得ない事だ。頭を軽く振りながら、自分の足元をみる。細い葉をした雑草が、ロベリアの靴によって踏まれ、その周辺の草がくにゃりと曲がっている。タワーと共に、何かを破壊した記憶はあるが、何をどうやって壊したのか正直、覚えていない。今までだったら、あり得ない事だ。

「ああ、すまない。相棒、ぼーっとしていた」
最近、やたらに多いな。やはり、あの時の、天星剣王が原因か?』
 最近のロベリアに思うことがあるようで、口調が心なしか苛ついている。事情をある程度把握している相棒に嬉しさを感じつつ、今の自分自身の調子にロベリアは苦笑せざるを得なかった。
くははっ、流石に相棒には隠し事ができないか」
 ロベリアは再び、自分の足元を見ながら考える。既に何度も踏まれた雑草に、再び強く足で踏みつけても何も感じない。全く面白みがない。ただただ虚しいだけだ。

──あれから、シエテと会えていない。そのせいで、あの時のシエテの切なそうな笑みが頭から離れない。星と月の光に照らされた透明な海の様な、蒼い瞳が本当に美しかった。あの瞳は、何かを切実にロベリアに訴えようとしていた。ロベリアはそれが何なのか知りたくてたまらない。次、シエテに会えればきっとそれが分かるはずそう思っていたのに、シエテはロベリアのもとへ訪れない。それから、あっという間に2週間も経ってしまった。あの夜からずっとロベリアの頭はシエテの事ばかりだ。何をしようとしても、去り際のシエテの表情が脳内にちらつき、胸を締め付けている。お陰様でロベリアは、なかなか本調子にはなれない今日このごろだ。ついに、相棒のタワーまで苦言を呈されてしまった。このままではいけない。

……そうだな、ちょっとどう行動したらいいか考えている。タワー、キミはどう思う?」
私にわかるわけがないだろう。ロベリア、お前が早くなんとかしろ。お前がずっとこのままだと、楽しめるものも楽しめん』
 ロベリアからの問いかけに、ため息をつきながらタワーは答えた。確かに、タワーにヒトの友好関係は、まだわからないかと内心思いつつ、笑いながら答えた。
……分かっているさ、相棒。近いうちに決着をつけるさ」



 仮想空間から自室に戻り、ぼんやりとテーブルの上に乗っている菓子箱に視線を移す。今の時刻は、丁度お昼ごろ──、温かい、包み込むような優しい日差しが、テーブルに置いてある菓子箱を照らしている。まるで、贈り主を探して光を灯しているようだ。
 本来、これはバレンタインにシエテに贈るはずだったもの。結局渡せなかったまま、今に至る。ロベリアはそれをそっと手に取り、ぼそっと呟く。
あの時と、贈る意味合いが変わってしまったな……
 あの時は『気の合う友達』として送るつもりだった。だが、今ロベリアが抱えているシエテへの感情はそんな単純なものではない。
あの、月夜に照らされ、切なくも神々しくあったシエテの姿に心を奪われてから、激しい恋慕がロベリアの胸の奥から止めどなく溢れてくる。ああ、そうだ──これは恋、恋だ。ロベリアは確かにシエテに恋している。もしかしたら、前から興味はあったのかもしれない。だが、あの瞳に射抜かれてから、己の感情を自覚してしまった──シエテが好きだ、と。
 
 自覚してから、ありとあらゆる劣情がロベリアの心を駆け巡る。
 シエテに会いたい、あの白い肌に触れてみたい、キスをしたい。オレの名前を呼びながら、喘いでいる声を聞いてみたい。きっとパルフェでヴォリュプテを誘う音に違いない。このまま、会わずにいるなんて耐えられない。早く会って、己の想いを吐き出して、シエテをオレのものにしたい。
 そんな欲望を抱えながら、日々を過ごす毎日だ。早く今の状況を打破しなくては

──やらなきゃいけない事は決まっている。
シエテを捕まえて、問い詰め、シエテの心情を解き明かすこと
 オレの推測が正しければ、シエテもきっとオレの事が……



 さて、どうするか──、ロベリアは甲板に立ち、手を口に当てながら考える。空を見上げると、ロベリアの心情とは裏腹に、雲ひとつない爽やかな空でロベリアは思わず息を漏らす。シエテを捕まえようとしても、なかなか難しいのが現状だ。周りの団員から聞くに、どうやらこのニ週間の間の何日かは艇には滞在していたらしい。それなのに、ロベリアはシエテに会うことは出来なかった。ロベリアに気付かれないよう、完全に気配を消していていたようだ。それが、悔しくてたまらない。明らかにロベリアを避けている。シエテを見つけるため、艇のありとあらゆる所にクラポティを置いて調べてみて分かったのは、ロベリアの気配をいち早く察して、その場から素早く立ち去っている──という事だ。正直、タワーに協力を仰いでも何かしらの原因で気付かれて逃げられてしまうような気がする。
 自室があれば待ち伏せができるのにと残念に思う。シエテは長期間は寝泊まりしないからと言って、その時の空いている部屋を使っている。どうも、この前の滞在はロベリアと全く正反対の位置の部屋を使用したようだ。部屋の場所も周りに気づかれないよう、うまくやっていたらしい。これでは、生活の範囲内でかち合う事はなかなか難しい。だってグランサイファーはとても大きい艇なのだから。
 正直、お手上げだ。天星剣王サマが本気になれば、いくら天才魔術師が相手でも気付かれずに生活をすることができるらしい。流石だ。どうしてそこまでしてオレを避けるんだシエテに対して、何とも言い難い苛立ちが募る。早くシエテを捕まえて、オレの気持ちをぶつけないと気がすまない。それで、もう二度と逃げられないように縛り付けないといけない。
 だが、相手はなかなか手強い。どうしたものか。手は色々あるが、今後の関係を考えて、できるだけ穏便に済ませたい。昼過ぎとはいえまだ真冬の空気は冷たく、ピリッとした寒さが頬と頭を刺激し、考えすぎて湯だった頭には気持ちがいい。


「ロベリア

 そう、あれやこれや考えていたら、背後から声がした。この声や足音は間違いない、グランだ!大好きなグランが声をかけてくれた嬉しさで、ロベリアはグランの方へ振り向きながら喜びを表した。恩人であるグランに会えるのはいつでも嬉しい。それに、ロベリアが知らないシエテの情報も知っているかもしれない、という希望が頭をよぎる。挺にいる中で一番シエテの予定を把握しているのは、恐らく団長である彼だろう。そもそも二人は定期的に剣術の稽古をしたり、戦略のアドバイスをシエテが教えたりと、グランとシエテは交流が深い。いつこっちに戻ってくるのか知っている可能性が高い。まさに、渡りに船だ!
「ああ!団長!キミか!くははっ、丁度キミに会いたいと思っていたんだ!トレッビアン!」  
「えー、僕はあんまり会いたくないんだけど。ちょっと、今度の依頼の編成について報告したい事があって来ただけだから!」
 予想外にテンションが高いロベリアに嫌な予感がしたグランは顔を引きつらせ、少し後ずさりをしてロベリアと距離をとった。ロベリアはそんなグランの様子も気にも留めず言葉を続ける。
「ウィ、明日の依頼についてだね。まぁ、オレはキミのためならなんでもやるぜ。あぁ、そうだ、団長。そういえばシエテについて、知らないかい?今は艇にはいないようだがそうだな。例えば、次はいつ戻ってくるかとかね」
「えぇっ、シエテ!?うーん、暫くは忙しいって言っていたかなぁ。……あ、でもホワイトデーの日には戻ってくるって言ってたよ」
ホワイトデーの日、ね……
 突然のシエテの名前に、グランは驚きつつも素直に答える。そうか、ホワイトデーの日か。確かに毎年この日は艇にいた。グラン達のお返しの名目上、艇に戻らないといけない、と本人も思ってはいるのだろう。タイミング的にも最高だ。自室にある、渡しそびれたプレゼントを渡すいい口実にもなる──ロベリアは心の中でほくそ笑んだ。

「そういえば、最近一緒にいないね。結構、仲良さそうだったのに。喧嘩でもした?また、ロベリアが変な事やってシエテを怒らせたんでしょ?」
「まさか!?今回、仕掛けてきたのはシエテの方だぜ?むしろ、オレは被害者さ。早く仲直りをしたいのに、なかなかきっかけが無くてね。困っていたところさ
 ジトッとした冷ややかな目でロベリアを見るグランに、しおらしく、切なそうにロベリアは答える。伏せた瞳で途方に暮れた様子で、迷子の子犬ような落ち込んだ声のロベリアを見て、少し眉を下げ、グランは困ったような表情をする。
……本当に?二人が仲良くなってから、僕の負担が減って助かって、違う!そうじゃなくて!」
 グランは頭を振り、強く叫んだ後、はぁと大きくため息をついて、一呼吸置いた。
……まぁ、最近、よく一緒の編成になることが多いし、早く仲直りしてよね。これ、団長命令ね。シエテにも伝えとくから」
「ウィ、もちろんさ。オレは早くシエテと“仲直り”したいからな!ああ、それなら、団長

──これは、朗報だ。団長命令なら、流石のシエテも逃げられない。もうこれは、ほぼ捕まえたも同然だろう。胸の中で熱いものが込み上げてくる。でも、できれば二人っきりになるきっかけが欲しいロベリアはにやりと笑い、グランを見てこう言った。



「オレと協力してくれないか?」