ふみ
2026-02-23 16:15:27
6256文字
Public プロット
 

✈️👨‍✈️✕🎸👨‍🎤 別の話(思いついたのでメモ)

・前世の記憶なし(夢には出るかもしれないけど、あくまで現代AU)
・ノン20代後半くらい設定(25~27,8)
・殿下30代半ば前後くらい設定(33~36)

今はどちらも具体的な描写はないんですが、もし何かしら発生することになった時点で仔細記載します。

あと文まとめてないので粗いです

どちらも「与える側」の顔をして生きているのに、自分の欲望は後回しにしてきた二人。
空港の特別ラウンジ・バー。滑走路の灯りが遠くで瞬いて、ガラス越しに機体の影が動く。
静かで、金のかかっている匂いがする場所。

その夜、仕事終わりのファイノンは珍しく一人で飲んでいた。
仕事ではなかなか深酒ができず、自分自身もそれほど得意ではなくて、人を連れてくるときにだけ利用していた。
それでも来たのは本当に偶然ーー誰かと、できれば女の子と、ちょっとおしゃべりしてから休みたい気分だったからだ。
とりあえずジントニックを1杯頼んで、マスターと雑談をしながら様子を見る。
たまには静かに過ごすのもいい。
グラスに口づける。夜の滑走路が輝く、背後の大きな窓を眺めるふりをして、客を観察する。
ソファに深く腰掛けるカップルと、近づき難そうな男性。
黒のレザージャケット。金に赤のグラデーションがかかった髪。いかにも「それっぽい」威圧感を隠しもしないのに、洗練された空気が滲んでいる。
店内にレトロなブルースが掛かった瞬間、男の口許が緩んだ。ように見えた。
空気が和らぐ。暗めの照明でもわかるほどに。
それは誰かに向けたものではなく、自分の奥に沈んでいた記憶を撫でたような笑みだった。
だから興味を引いた。

「隣、いいかい?」
構わないが」
低く落ち着いた、無駄な装飾のない声。
ファイノンは自然に距離をとり、斜め向かいの席に座った。
「いい曲だね」
「古い曲だ」
「古い曲を知ってる人は、たいてい面倒くさい」
「ほう?」
男の視線が横に動いて、一瞬だけ光を集める。蜂蜜みたいな色の瞳だ。
「お前は何をしている」
「空の上でコーヒー淹れてるよ。君は?」
「音を売っている」
「へえ。合法?」
「いまのところはな」
ファイノンは無防備な笑顔を見せながら、観察は続けている。
そしてわざと少しだけ踏み込む。
「さっき笑ったよね。あの曲で」
見ていたのか」
「仕事柄ね。人の顔色は読むほうだ」
「読んでどうする」
「退屈を減らす」
男はグラスに口をつける。
ウイスキーのロック。喉仏が静かに上下する。
「退屈しているのか」
「してるよ。今も」
これは半分本音で半分は挑発だった。反応を試している。
男が少しだけ考える、その間が長い。
彼は言葉を放つ前にきちんと精選する人なのだとファイノンは思った。
「なら、帰ればいい」
「帰るのが退屈なんだ」
ファイノンは男の横顔をじっと見る。
精選はするくせに、出てきた言葉は飾り気がなさすぎて鋭い。
切り出したばかりの、やすりがけもされていない、ささくれだらけの木板のようだ。
それが何だか面白くて、気持ちがいい。たぶん彼は正直すぎるんだ。

ブルースがサビに入って、ギターが泣く。
男の指が、テーブルをほんのわずかに叩く。
ファイノンはそれを見て、初めて思う。
この男、本当は穏やかじゃない。
理性で抑えているだけだ。
たぶん、自分の欲望を。
そしてそれは――ファイノン自身とよく似ている。

彼はグラスを置く。
「ねえ。退屈しのぎにさ」
男が横目で見る。
「君の曲、今度聴きに行ってもいい?」
これはナンパじゃない。約束の種だ。

男はほんの一瞬だけ迷って、
「好きにしろ」
と言った。
拒むことも、歓迎もしない。
ファイノンは笑う。
「つれないね」
「誰にでも優しくするな」
「してないよ」

この言葉だけは本音だった。
ファイノンは人当たりのいい笑顔を浮かべる。そのくせ、目の奥はちょっと乾いている。
店内の照明がさらに落ちて、滑走路のライトが一機、離陸する機体を照らした。