【かわ東】短冊に願いを

今まで止まっていた日々を溶かすように東雲さんと七夕をする河童の話。かわ(→)東←カミ(ちょこっとだけ)。

 身を脅かす存在がいない二人だけの世界。短くも充実した毎日は楽しく夢のような日々じゃった。
 宗治郎から人の言葉を学び、箸の使い方を学び、服の着方を学び、泳ぎに相撲の練習にも気が済むまで付き合ってもらった。
 誰かに教えを乞うことも儘ならない、一縷の望みすら抱けない毎日が一変したあの日からアヤツから教えてもらったこと全てワシの宝物じゃ。



 ――ああ、宗治郎 ひとりぼっちだったワシのかけがえのない仲間



 ずっと続くと思っていた穏やかな日常が突如宗治郎ごと消え去り、大勢の人間がなだれ込み宗治郎が帰ってくる居場所を荒らしては、何も危害を加えないワシを祓おうとする。

 宗治郎を連れ去った邪神。ワシに怯え祓おうとする人間たち。みんな嫌い嫌いじゃ。
 唯一赦せる人間は、存在は、宗治郎アヤツ一人だけじゃ。

 そう思うとったのに宗治郎の言葉とアヤツと同じくらいヘンな人間に出会い鬱蒼していた気持ちが晴れていった。
 土俵の上で仰向けになり作り物の空に掛かる虹越しに覗き込むワシを投げ飛ばした人間の顔は一生忘れやしないだろうよ。