ちよど
2026-02-17 08:37:13
11241文字
Public 以蔵さんとカルデアの日々
 

ビーストのキアラさんと人斬りの以蔵さんは友人である【帝都騎殺】

タイトル通り。以蔵さんとカルデアの日々シリーズ2。2部ごろ。ふんわりな土佐弁。独自解釈と独自設定多め。pixivから再録。




 バビロニアの夏の光がうっそうと茂った森の木々を美しい緑に透かしていた。大人でも抱えられない程の太い樹木が立ち並ぶ古の森にカルデアサーヴァント一行は魔獣狩りに来ていた。

 世界樹の種が10個揃うまで帰れません!

 レイシフトした当初、そう血走った目で叫んでいたマスターはあまりのドロップ率の悪さに心を壊したのか、先程から木肌に頬を寄せて何事かをぶつぶつと呟いている。
 音頭を取っていたマスターの脱落に、連れてこられた6人のサーヴァントは思い思いに休んでいた。以蔵もそのひとりだ。
 一番目立つ大きな幹に背中を預けてマスターとその近くに腰を下ろした男の様子を眺めていると、以蔵の着物の裾を小さな手が引っ張る。
 目を向けるとバニヤンが唇を尖らせていた。

「いぞー。暇。遊んで」

「遊べと言われても、こんな場所じゃおもちゃのひとつもないでしょう?」
 疲れたように答えたのは近くの倒木にしどけなく腰掛けていたキアラだ。いつものように最終再臨の姿でうっとうしそうにベールの端を弄んでいる。
「キアラに遊んで欲しいなんて言ってない」
「なんですって?」
 その正体が以蔵に知られてから猫を被るのをやめたキアラが目を吊り上げた。放っておくと大人げなく子供と喧嘩しそうになりそうだと以蔵はバニヤンの頭を撫でる。

「大丈夫や。おもちゃなんかのうても遊ぶ方法はごじゃんとある」

 以蔵がそう宥めるとバニヤンはキアラに言葉を投げた。
「意地悪!」
「しょ、しょうがないでしょう! わたくしはずっと屋敷の中で寝込んでましたもの!」
 だから知らないのは仕方が無いと今度はキアラが唇を尖らせる。その子供じみた様子に以蔵はバニヤンの頭をくしゃくしゃとかき回すとキアラに歩み寄った。
 明るい日差しが赤茶けた土にいくつもの影を落としている。そこを以蔵は踏んで歩き、最後に特徴的な形の影に足を載せた。

「踏んだぜよ。これでキアラが鬼じゃ」

「えっ? 何? なんですの?」
 戸惑うキアラに以蔵は影踏みのルールを説明してやる。鬼に影を踏まれたらその者が次の鬼になること。他の影の中に自分の影を隠している間は踏まれないこと。

「バニヤン。逃げるぞ!」
「分かった!」
「待ちなさい!」
 走り出したふたりをキアラは慌てて追いかける。本来なら敏捷が上回っているキアラがたやすく追いつけるはずが、遊びで走ったことのない女に森を走ることに慣れたふたりが捕まるはずがなかった。

「なにそれ! 面白そう!」

 ステータスで上回るはずのキアラの悪戦苦闘に、悪趣味なライダーのイシュタルが影踏みに参戦する。しかしキアラと同じようにこんな遊びなどしたことない彼女はすぐに次の鬼になった。

「マシュ・キリエライト。参戦します!」

 きゃあきゃあ騒いでいる様子にそわそわしていたデミサーヴァントの少女が、耐えきれずにかさばる盾を置いて遊びの中に飛び込み即座に次の鬼にされる。歩幅の小さなバニヤンも加わって鬼の順番は不慣れな少女達の間でぐるぐる回っていたが、その中で最も鬼になった女が声を上げた。

「こんなのわたくしに不利すぎますわ!」

 キアラの最終再臨の姿の影は大きい。そのため入り込む影がなかなか見つからず。すぐに鬼に踏まれてしまうのだ。
 そんな嘆きを聞きつけて、自分が始めたくせに気配遮断で隠れてサボっていた以蔵が倒木の向こうから顔を出した。

「そのえづい角を外して、ベールをとりゃええやろ」

「女にベールを取れだなんて。本来は花婿以外には許されない台詞ですのよ」
 文句を言いながらキアラは再臨の姿を尼僧のそれに戻す。金色の瞳がにたりと光った。

「ふっ、ふふふ。いただきますわ。―――参ります。喝破!」

「なんじゃあああああ!!」

 一瞬で距離を詰めたキアラの掌底がBABEXと決め最後に以蔵の顎を跳ね上げる。油断していた以蔵はたやすく地に崩れ落ちた。動かなくなったその影をキアラはしっかりと踏みしめる。

「これであなたが鬼ですわね」

 勝ち誇るキアラに以蔵がよろよろと立ち上がる。
「おんし。わしのクラスを分かっとるか?」
 アサシンはアルターエゴに対する不利クラスのひとつだ。アルターエゴの攻撃はアサシンには約1.5倍になって伝わる。
 容赦がなかった。

「あれはひどい」

 そのやり取りを見ていた坂本龍馬が呟くと、マシュが参加したあたりから彼らの遊ぶ姿を拝んでいたマスターが顔を上げた。
「坂本さんは参加しないんですか?」
「僕は影踏みするような年じゃないよ」
「お竜さんはリョーマがしないならしない」
 彼らの言葉にマスターは首を傾げる。坂本龍馬と岡田以蔵の享年はそれほど離れてはいなかったはずだ。

「でも、以蔵さんは?」

 マスターの疑問に龍馬は懐かしそうに顔を綻ばせた。
「以蔵さんは面倒見がいいから。―――昔はよく近所の子供達と遊んであげていたんだよ」
 遊んであげるというには物騒なメンバーだなぁとマスターは思ったが口には出さなかった。彼らの会話に気づいた以蔵がこちらに手招きしたからだ。
 多分、影踏みには参加しないといった龍馬への嫌がらせなのだろう。
 その横でマシュも同じように手招きするのを見てマスターは立ち上がった。

「坂本さん。俺、今なら星5が引ける気がします」
「奇遇だね。僕もだよ」

 サーヴァントである龍馬にとっての星5とは何なのだろう?
 そんな野暮は聞くまでもない。星に引かれるように3人は影踏み遊びに加わった。


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