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ちよど
2026-02-17 08:37:13
11241文字
Public
以蔵さんとカルデアの日々
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ビーストのキアラさんと人斬りの以蔵さんは友人である【帝都騎殺】
タイトル通り。以蔵さんとカルデアの日々シリーズ2。2部ごろ。ふんわりな土佐弁。独自解釈と独自設定多め。pixivから再録。
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■
カルデア食堂のランチタイム。それは食にそれほど興味がない以蔵ですら楽しみにしてしまう時間だ。それは以蔵だけではないのか昼時の出撃はよほどの事情が無ければ行なわれず、食堂はいつも人でごった返していた。
カウンター席になんとか空きをみつけた以蔵は食事が乗ったトレイを置く。今日は鯖の味噌煮と大盛りの白米、具だくさんの味噌汁だ。以蔵にはご馳走である。
いただきます、と手を合わせ。さて食べようかという以蔵に声が掛けられた。
「あら? 奇遇ですわね」
「キアラさんか。昨日はすまんのう」
以蔵の隣に座っていたカルデア職員の男がキアラの姿を認めて慌てて席を離れる。にっこりと笑いかけるキアラを恐れての行動だったが以蔵には分からない。
当たり前のように空いた席に座ったキアラは以蔵にはただの尼僧だ。
「美人さんは得じゃのう」
「そんなことないですわ」
照れたように微笑むキアラはどこからともなく見覚えのあるハンカチを取り出した。
「お返ししますわ。ありがとうございます。」
「別に返さいでもええのに」
どうせ龍馬のやき、と以蔵は呟くがとりあえず受け取る。自分が持っていたはずのハンカチは何故かいい香りがした。
「キアラさんはそれだけで足りるんか?」
彼女のトレイにはカラフルな果物が盛られたパンケーキがちょこんと乗っている。
「昨日バニヤンさんにお会いしたら食べたくなってしまって」
恥ずかしがるように頬に手を当てたキアラさんに以蔵の頬も赤くなりそうになる。
「あっ、以蔵さん。僕のハンカチ使ってくれてるんだ」
そこに割り込んだ第三者。白い軍服に人好きのする笑顔を浮かべて空中に漂う美女を連れたその男は以蔵の手元にあるハンカチをめざとく見つけたようだ。
彼も手にトレイを持っているところを見ると今から昼食なのだろう。
「
…
龍馬か。帰れ」
つれない以蔵にキアラは首を傾けてみせる。
「どなたですか?」
「ライダーの坂本龍馬と、お竜じゃ」
「以蔵さんとは幼なじみなんだよ。よろしく。殺生院キアラさん」
「お竜さんだ。よろしく」
「これはご丁寧に。こちらこそよろしくお願いしますね」
暗にキアラの事を知っているといろいろな圧をかけた龍馬に、売られた喧嘩は買うキアラはにこやかに笑いかける。見えない火花が散った。
龍馬は笑顔のままキアラの反対側の以蔵の隣を確保する。トラブルの発生確率が高まったことを察した女性職員が快く席を譲ってくれたのだ。
カルデア職員は危機察知能力が高くなければ勤まらない。英霊同士ではそよ風程度の出来事でも巻き込まれた生身の人間には巨大ハリケーン並の威力があるからだ。
その女性職員の連れだった女性も席を空ける。いつものように龍馬の後ろを漂っていると行き交う人の邪魔になると気づいたお竜さんは、龍馬の白い帽子を取り上げると自分の頭に被せてちょこんと空いた椅子に座った。
当然ながらその手に食事のトレイは無い。
「お竜。おんしは食べんのか?」
「カエル料理があればニンゲンの真似事をしてもいいが、特別オーダーになるそうだ。
―――
オマエ、私に構っている場合か?」
お竜さんの赤い瞳に軽く睨まれても以蔵はその意味が分からない。
「? マスターがおんしを労ってやれと言っちょったき。まあ、おんしがええならええ」
自分が危険領域にいることに気づいていない以蔵に龍馬は話しかける。
「以蔵さん。今度アサシンクラスの代表になるんだって?」
「おんし、相変わらず耳ざといな。代表といってもメディア姉さんの手伝いみたいなものぜよ」
呆れたような以蔵の言葉に龍馬は笑みを深めた。
「じゃあ、僕もライダーの代表になろうかな。交渉事は得意だし。
―――
殺生院さんもエクストラクラスの代表だよね?」
龍馬の行動を制止しようとしていた以蔵の目が丸くなる。ぐるん、と勢いよくキアラに振り向いた以蔵は人懐っこい表情を浮かべた。
「キアラさんも代表なんか? えくすとらというのはどういうクラスなんや?」
食事を共にする仲でありながらキアラのクラスすら知らない以蔵の様子に、悪巧みの気配を察知した龍馬の眉がぴくりと動く。
それを目の端に捕らえながらキアラは笑みを深めた。
「エクストラというのは特殊クラスの事ですわ。ムーンキャンサー、ルーラー、アヴェンジャー、アルターエゴといろいろですの。今度から一緒にお仕事ですね。よろしくお願いしますわ」
そっと以蔵の手にキアラの手が重なる。艶のある金色の瞳で微笑みかけると以蔵は初心な少年のように襟巻きに顔を埋めた。しかし、その顔はすぐに顰められる。
「その手はなんじゃ、龍馬」
以蔵のもう片方の手を龍馬が握っていた。
「
―――
なんとなく?」
衝動的に握ってしまったのだと告白して龍馬は困ったように顔を赤らめる。その後ろでお竜さんが呆れたように天井を仰いだ。
「お竜、帽子が落ちるぞ」
「危ない危ない」
以蔵の指摘にお竜は慌てて帽子を押さえる。
「イゾー。早く食べないと食事が冷めるんじゃないのか?お竜さんは分からないが食事は温かい方が美味しいのだと清姫が言っていたぞ」
「お竜さん、それ、どこで聞いたの?」
「カルデアラジオ『サーヴァント恋愛相談室』だ。けっこうためになるぞ。リョーマも聞いてみるといい」
「いや、やめておくよ」
お竜さんのせっかくの勧めに龍馬はやんわりと首を振る。
そんな様子にだいたいの関係性を掴んだキアラがうふふと笑みをこぼした。
「あのラジオは私もたまに聞きますが、確かに坂本さんには必要かもしれませんね。わたくしには少々刺激が足りませんけど」
「刺激?」
「具体的には、エロ
…
」
「君たち、いい加減に食べないと冷めるぞ。それに順番を待っている人もいる」
キアラの言葉を遮ったのは食堂の主と呼ばれる赤い弓兵だった。カウンターキッチンで調理しながら食堂全体の様子を見守っている彼の警告に三人は慌てて食事を始める。弓兵のエミヤは滅多に怒らないが怒らせると美味しいご飯が出てこなくなるのだ。
真っ昼間の食堂でキアラのエロトークなどされてはたまらない。そんな判断をくだしたエミヤだが、後に彼は新入りのアサシンのためにはあのまま続けさせておけばよかったかもしれないと後悔することになる。
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