なえつき
2023-09-16 22:37:12
9780文字
Public 『うちの上司は情緒がヤバい』
 

『一色ひかる誕生祭2023』

『うちの上司は情緒がヤバい』の2次創作小説です。会話テキスト中心です。


……だって、怖かったから。

いつも後輩には優しくされてばっかりなのに、
私からは先輩らしいこと何一つできていなくて。

だから、後輩の誕生日を知ったときは良いチャンスだと思った。他人に不幸をばら撒いてばっかりの私にも、後輩に幸福をお返しできる数少ない機会が巡ってきたのだと。

でも、いざその日が近づいていくにつれて、浮ついていた心は冷め始め、代わりにある不安が増していくようになった。

私は後輩の幸せではなく、私が幸せだと思っていることを、後輩に押し付けているだけなんじゃないか、という不安。

後輩は優しいから、どんな善意の押し売りにも、笑顔で相手してくれるだろう。

でもその笑顔はきっと愛想笑いだ。そんな気遣いの顔を私に向ける後輩なんて、私は絶対に見たくない。

だってそれは両親が飛行機事故で亡くなってから、親しかった友人や大人たちがするようになった、同情的な眼差しに似ていて。

あるいは同僚と心中未遂して以降、職場の人間たちから向けられるようになった、疑惑と偏見の視線と近しいから。

そして迎えた後輩の誕生日。
――ついに私は、後輩から逃げ出してしまった。

だって後輩にそんな顔をさせる先輩では、安定緒は一生、一色ひかると一緒にいる権利なんてないんだから――