万丈
2026-01-22 03:41:50
6143文字
Public 小説
 

聖域の守り人

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
ルドラ族の生き残りのその後と、封印中のミトラ様の話。赤髪の青年はたぶんカーリーちゃんのご先祖です。
‪🔄2026/01/25「長老の悔恨」追加
関連の話→二千年の傷跡、再生の兆し
前の話→友と交わす最後の杯


眠れる智将と、遠い日の足音

私の意識は、常に、穏やかな光の中にある。
聖域の、巨大な樹木と、完全に同調したこの身体。
肉体は永い眠りについているが、その魂は、世界の微かな息遣いを、感じ取ることができる。
風の音、鳥のさえずり、そして、私を守ってくれるルドラの民たちの、静かな、しかし力強い、生命の気配。

その日、私の穏やかな意識の水面に、ぽつり、と、一つの波紋が広がった。

(この、気配は……

懐かしい。
どうしようもなく、懐かしい、気配。
忘れるはずもない。
私が、この永い眠りにつく、その瞬間まで、その隣にあった、唯一無二の光。
雷鳴のように、苛烈で、そして、陽だまりのように、温かい、あの光。

……インドラ?)

まさか。
そんなはずはない。
彼は、今、遠い天空殿で、その重責を果たしているはずだ。
こんな、辺境の聖域に、彼が来るはずがない。
だが、その気配は、確かにこの聖域のすぐ傍まで近づいてきていた。
そして、その光の中には、深い哀しみと、そして、どうしようもないほどの、後悔の色が、混じり合っているのが、私にはわかった。
ああ、やはり、お前なのだな、インドラ。

私は、声なき声で、その名を、呼んだ。
会いたい。
その姿を、この目で見たい。
その声を、この耳で、聞きたい。
だが、この眠りの檻から出ることはできない。
私にできるのは、ただ、彼の気配が、遠ざかっていくのを、感じることだけ。

やがて、その気配が、完全に消え失せた頃。
私の意識の中に、もう一つの気配が語りかけてきた。
私を守護する、ルドラの長老の思念だった。

『ミトラ様。お聞きいただけますかな』

(ああ)

『今しがた、この聖域に、一人の旅人が迷い込んできたようで』

長老は、赤い髪の若者とのやり取りを、その全てを、私に伝えてくれた。
外套を目深に被った、謎の旅人。
若者が語る、聖なるお方への誇りに、静かに耳を傾け、そして最後に、深く頭を下げ、「ありがとう」と、そう、告げて、去っていった、と。

……そうか)

私は、全てを悟った。
あの、愚かで、どうしようもなく、不器用な私の親友。
彼は、ただ、一目、私が眠るこの場所を、見たかったのだろう。
そして、私を守ってくれている、名も知らぬ民に、その感謝を、伝えたかったのだろう。

『ミトラ様。その男は、やはり……

(ああ。インドラだ)

……

長老の、思念から、複雑な、感情の渦が、伝わってくる。
憎しみ、憐れみ、そして、どうしようもない同胞への想い。

……長老)

私は、語りかけた。

(どうか、彼を許してやっては、もらえないだろうか)

……

……彼もまた、あの日の、犠牲者なのだ。誰よりも、深く傷つき、そして、今もなお、独りで、その罪を背負い続けている)

私の、魂からの、願い。
それに、長老は、長い沈黙の後、こう答えた。

『我らが、お守りしているのは、ミトラ様、貴方様です。貴方様の、その御心が、安らかであることこそが、我らの、務め……

それは、肯定でも、否定でもなかった。
だが、その言葉の中に、ほんの少しだけ、救いの光が、見えたような気がした。
私は、礼を言うと、再び意識を深い眠りへと沈めていった。
胸の内には、温かい、確かな光が灯っていた。

……インドラ)

たとえ、この身が離れていようとも。
私たちの魂は、決して独りではない。
そう確信しながら。
私は、久しぶりに穏やかで、幸せな夢を見た。
遠い昔。
まだ、何も失っていなかった、あの頃。
西の回廊で、二人並んで、夕日を眺めていた、あの日の夢を。