万丈
2026-01-16 22:39:13
2743文字
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誕生日にまつわる話

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
正月を捏造した勢いで、誕生日にまつわるお話。インドラ様は誕生日不明なので勝手に書いてます。

前の話→新生祭の夜
次の話→気まぐれな神と、雷帝の献立

忌むべき日

その日、カーンダヴァの高い塔には、いつもより、さらに冷たく、重い空気が、澱んでいた。
なぜなら、今日が、我が主君、破壊神シヴァ様の誕生日だったからだ。

彼が、この世に生を受け、そして、その瞬間に、自らの母を含む、多くの命を、その力で奪ってしまった、始まりの日。
彼にとって、それは祝福されるべき日ではなく、ただ、自らの禍々しい宿命を、再認識させられる、忌むべき日に過ぎなかった。

案の定、その日のシヴァ様は、一日中、一言も、口を利かれなかった。
ただ、玉座に座り、窓の外の、灰色の空を、虚ろな瞳で、見つめ続けている。
その、孤独で、痛々しい後ろ姿に、私は、胸が締め付けられるような思いだった。

……何か、私に、できることは……

祝いの言葉など口にすれば、きっと、彼の逆鱗に触れるだろう。
豪華な食事も、美しい衣服も、今の彼の心には、届かない。
私は、半日悩み続けた。
そして、夜。
一つの、ささやかな贈り物を手に、主君の御前へと進み出た。

「シヴァ様」

彼は、答えなかった。
ただ、その赤い瞳だけが、こちらを、億劫そうに捉える。
私は、その前に静かに跪いた。
そして、その手に持っていたものを、そっと、彼の膝の上へと差し出す。

それは、私が昼間のうちに、塔の周りを探し回り、摘み集めてきた、小さな、白い花々で作った、粗末な花冠だった。
夜の闇の中で、月の光を吸い込み青白く幻想的に輝く、『月光華』(げっこうか)。

……なんだ、これは」

ようやく、彼の唇から紡がれた、低い声。

「戯れか、インドラ」

「滅相もございません」

私は、深く、頭を垂れたまま、答えた。

「ただ貴方様に、見ていただきたかったのです」

「何をだ」

「この花が、どれほど、美しいものであるのかを」

私は続けた。
その声は、震えていたかもしれない。

「月光華は、カーンダヴァの大地にしか、咲きません。大地の光流が強く、荒れた場所でしか、生きられないのです。……ですが、民はこの花を、『破壊の中から生まれる、希望の光』と呼び、愛しております」

…………

「貴方様が、どのような力を持って、生まれ落ちたとしても。貴方様が、ご自身のことを、どう思われようとも。……少なくとも、この私にとっては、貴方様は、この花と同じように、ただ、気高く、そして、美しい、お方です」

それは、臣下として、相応しくない言葉だったのかもしれない。
だが、本心だった。

長い沈黙。
やがて、シヴァ様は、ゆっくりと、その花冠を手に取った。
そして、その、白い花弁を、まるで壊れ物を扱うかのように、そっと、その指先で、撫でた。

……そなたは、本当に、愚かな男だな、インドラ」

ぽつりと、呟かれたその言葉に、いつものような、冷たさはなかった。

彼は、その花冠を、大切そうに胸に抱きしめ、もう一度呟いた。

「ありがとう」

たった一言。
それだけで、私の、全ての苦労は、報われた。

その夜、月明かりの下、一つの小さな花冠を間に挟み、二つの孤独な魂は、静かに寄り添い合っていた。
忌むべき日であったはずの、その夜が、ほんの少しだけ、温かい光に包まれたような気がした。